第四十五話
朝起きると二日後に私達は王都付近の領地で、女性騎士達が鍛える訓練場を目指すと告げられた。私達は王都から来る馬車で向かうと言う。男子は王都の方で訓練を積むらしい。食料等の準備は既にしてくれている。野営も任して良いと説明を受けた。
それまでの間に暇潰しでこの建物の中を巡る。執事の人は自室待機させている。どうやらここは神殿らしく白さが目立つ。こんだけ白いと掃除しないと汚れが目立つだろうから、維持するの大変だろうな。
内装を見回っていると観音開きのドアがあり、片方のドアが少し開いており、中を見ると……あまりの美しさに言葉を失った。上はステンドガラスに彩られ、太陽の光に反射し、奥側の真ん中には翼を持ち、キトンを着ている神々しい女神像が設置されており、光が女神像に集まり、その傍で法衣を着た女性が両膝を床に着けて御祈りしている。多分ここが礼拝堂なのだろう。私は感嘆のため息を溢す。
「綺麗…」
「!?誰ですか!?」
女性が思いっ切り振り返り、目が合う。思った事がボソッと声が出てた。
「すいません。御祈りの最中に」
「あっ。勇者様…。失礼致しました」
女性は立ち上がってから頭を下げる。
「い、いえ。お邪魔したのは此方ですから」
「そうですか。折角ですから御祈り致しますか?」
「そう仰るのなら…。有り難く御祈りさせて頂きます」
私も見よう見真似で御祈りする。え〜と、何を祈ろう。…明人と会えるように…。うん、それだ。それと明人が無事でありますように。
「よし。これで良いかな?」
「不躾ですみませんが、どのような事を祈られたので?」
「あっと…。その〜…と、友達の事を…」
しどろもどろな答えをした私を見て、女性はフフッと上品に笑う。
「誤魔化さなくても良いですよ。好きな人の事を御祈りなさったのでしょ」
そう言われて顔が赤くなる。私は「あの…その…」と更に頭の中が錯乱しそうになる。
「大丈夫です。私も同じですから」
「…えっ!貴方もですか!?」
「はい」
「お話、聞かせて頂きたいんですけど!」
私の前のめりな反応に女性は少し困ったように笑った。も、もしかして引かれた?い、いや、でもこの世界の恋バナとか気になる。だってこういう世界の恋物語ってロマンあるし!身分違いとか!騎士とお姫様とかね!
「では、椅子に座りましょう」
女性にそう言われて長椅子へと隣り合って座る。
「それで好きな人ってどんな人なんですか!?」
「う〜ん。どんな、人…か。…先ずは話すなら私の出自から話すべきですね」
彼女は「ふ~」と一息ついてから話し始めてくれた。
「私は六歳の頃に孤児院へと入ったんです。理由は忘れました。何しろ小さい頃の記憶ですから。親に捨てられたのか、突発的に死んでしまったのか。…それから孤児院で暮らす事になったんですけど、同い年の男の子が居たんです。その男の子は魔物に村を滅ぼされ、自分より小さな子二人と一緒に街へと逃げ込んだ、自分達だけ助かった。…当時の事とか正直…覚えていませんけど。好きになった日は覚えてます。九歳の時に路地裏の男達に絡まれた時に立ち向かい、追い払ってくれて…。その後に大丈夫だったと言って、笑ってくれた姿にカッコいいと思ってしまったんです」
孤児院…。捨てられた?魔物に村を滅ぼされた…。想像してなかった。そうか、確かに魔王軍が侵略してる世界ならそういう事も起こるんだ。
「それで…その人はどんな人何ですか?」
「え〜と、小さい時から大人っぽくて心強くて、皆のお兄さんで、私の憧れでした。…私は言ったのですから、勇者様も」
「う〜ん、私は逆かな。子供っぽくて、ちょっと頼りないけど、親しみやすくて、隣に居てくれる安心感がある人かなぁ」
「へ〜!勇者様が慕う人ならきっと素敵な人なんだろうなぁ」
「あの〜。勇者様って呼ぶの止めて下さいません。なんか恥ずかしくて。私の事は飛鳥と呼んで下さい」
「そうですか。では、飛鳥様。私はミリィと言います。気軽にミリィと言って下されば嬉しいです」
「分かりました、ミリィさん」
「はい」
この世界でまた一人友達…で良いのか分からないけど、親しくなった人が出来たのは嬉しい。やっぱり女性と話すのは身構えなくて良いから楽〜。
ミリィさんと時間を許すまで話をした。ミリィさんは私と同い年で驚いた。外国の人は大人っぽいと聞くが本当だった。まぁ、外国と言うより外世界の人だけど。
「それではまた」
「はい。また明日」
私は良い気分になってスキップする。丁度お昼を告げる鐘が鳴り、上機嫌なまま食堂へと入ると玲子に手招きされる。私は玲子の前へと座ると、「少し待ってて」と言ってから玲子は席を立ち、トレイを持って来て、私に渡してくれる。
「ありがとう、玲子」
「いいえ、気にしないで」
玲子は笑顔でフフンと鼻を鳴らしながら席を着く。それで…と。私は隣に座る前髪と眼鏡で顔が見えない女子生徒へと目を向ける。
「相澤さん。こうやって話すのは初めてだね」
「え、あ、は、はい…。そうですね」
「宜しく。恵那で良い?」
「は、はい。良ければですけど…」
私は立って右斜めに居る恵那へと手を差出して安心させるように笑う。恵那はおずおずとしながら握手をしてくれた。そして、玲子も私達の手を包む。
「二人共、これから宜しく。飛鳥、恵那」
「うん」
「は、はい…」




