第三十五話
この日からヒューリとサリアさんは正式にお付き合いする事となった。エリストとラストさんは大分嫌がっていたが、エリアさんが大喜びしたせいで二人も納得するしかなかった。エリストもその場に居た時はめちゃめちゃ嫌なそうな顔をしてため息を吐いていたが、最終的には認めて不幸には絶対するなとヒューリに約束した。
ヒューリとサリアさんは休息日になると逢瀬を重ねており、俺とエリストは二人の様子を遠目で監視、もとい応援していた。年月は重なって二年目となるがまだ彼等の聖心力の特訓は上手くいってない。確かに今やらせてる特訓は最も基本であり、この特訓を乗り越えればほぼ終了みたいな物だ。コツを教えて欲しいとも言われるが、聖心力の感覚は自分で掴む物で中々言葉として伝えられない。
一年目の特訓は徐々に厳しくなり、その地続きである二年目はそこそこキツイだけで、一番最初の一年目の時がキツかった。皆も二年目になると慣れてきており、ウォームアップでヘトヘトになると云う事はなくなった。そして部屋割りだが、俺が同じ場所でヒューリとエリストがまたも同室で隣の部屋。エグロとマイクは更にその隣となった。進級時の試験では相当良い成績だったみたいだ。訓練の成果が出てるようで嬉しい。
二年目となると一年目にあった貴族の差別意識はほぼ無くなっていた。シリアス達だけは未だに自分達は特別だと思っているが。あんな教官に絞られてるのに強気で居られるのが分からん。相当プライドが高いと見るべきか?
今年やって来る奴等にも面倒臭いのが居ないと良いが。と願ったがシリアスの取り巻きが六人と増えた。どちらも一年目らしい。ヒューリの話ではシリアスが目に掛けていた人達らしい。
その一人が模擬戦となった時、俺へと突っ掛かって来た。
「おい!あんた!シリアス様を差し置いて一位だってな!どうせ卑怯な真似とかして取った順位だろ!私がお前の化けの皮を剥がしてやる」
「「「「「そうだ!そうだ!」」」」」
他のシリアスの取り巻き一年目達も同調する。…死ぬほど面倒臭い。なので無視した。
「マイク!今日の相手してくれ!」
「お、おう…」
マイクは困惑しながら返答し、チラチラと取り巻きの一年目達に視線を向けている。
「む、無視をするな!!平民のくせに!!」
そう言って俺の肩を掴むが、一歩進んだだけで手が離れる。
「なっ!」
俺はそいつが触れた事さえ気にせずマイクと肩を組む。
「マイクの聖心術はマイナーだから面白いからさ」
「あ、ああ。なにせ俺の村が代々受け継いできた物だからな。知らなくて当然だろ。ハハハハハッ!」
マイクも俺が徹底無視を決め込んでいるのを理解して、棒読みながらも演技してくれた。
「お、おい…」
一年目達の勢いも完全になくなり、そのままマイクと模擬戦をしようとするが、目の前にシリアスが立ち塞がる。
「そんな事を言ってやるなよ。可愛い一年目の頼みじゃないか」
「お前誰?」
「なっ!」
あっ。無意識に言ってしまった。いや、本当は覚えていたけど、何かムカついて言ってしまった。
「ふ、ふん。やはり平民は知能が低いと…」
「いや、ごめんな。他の皆と違って印象なかったわ」
食い気味そう言ってシリアスの次の言葉を封殺し、シリアスは完全に硬直した。今まで様子を見ていた人達は笑いを噛み殺すようにクスクスと笑うが、この場では良く聞こえる。
「わ、笑うな!」
そう突っ掛かてきた一年目が言うけれど、静まる気配が無く、シリアス含めて彼等は逃げるように端の方へと移動した。
「…アキト。お前って俺が思ってるより性格悪いか」
「嫌いな奴には性格悪いさ」
「なるほどな!」
にしてもビシビシと彼等から敵意の視線が刺さるな。けど、ヒューリとシリアスが何かしらの因縁があるのかどうか良く分かっていないんだが、何故奴はヒューリに突っ掛かるんだろうか。ヒューリに一度聞いた事あるが、ヒューリも疑問に思ってるらしい。
「何か事件が起きなけれな良いが」
「ん?何か言ったか?」
「いや、何も」
…ん?今、フラグを立てた気がする。
と思ったが何も起こる事は無く、三年目に突入した。この年が終われば無事騎士団へと入れる。今の所は俺達五人はトップ独占しており、最近になってやっと全員が聖心力を流してない方に流す事が出来るようになる。三年目からは動作をしないで聖心力を身体に流す事を訓練させて、三ヶ月が過ぎた頃の休息日、第四騎士団に所属しているヒューリの兄貴が他国から帰って来て、会いに来るのでサリアさんを紹介すると言う。勿論家族であるエリストは同行する。そんな家族の付き合いに俺も交じるのは違うと思い、エグロとマイクと共に料理店巡りをする事となった。
その日、帰って来て、エリストとヒューリに家族との対面で上手くいったかを聞こうと思ってが彼等の部屋を訪れた。扉から出てきたヒューリの雰囲気はどうも剣呑さを纏っており、何があったのかを彼等の部屋で聞く事にした。ベッドに腰を掛けてヒューリが口を開いてこう言った。
「サリアを掛けてシリアス達と決闘する事となった」




