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適性無しの転生者  作者: 福王聖二
第一章
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第三十二話

ヒューリの案内でヒューリとエリストの部屋に五人全員で向かっていると途中で他の五人組とかち合う。すると相手側の一番前の人とヒューリの空気感が見合った瞬間にピリついた。


「これはこれはヒューリ君。随分と早い行水だね。余裕を持つという事を知らないのかな?」

「これはどうもシリアス君。かなり遅いようだが、ご飯を食べる事でさえ、覚束なくなる程に疲れたのですか?」


互いがそんな言葉を交わす。かなりバチバチだ。彼とヒューリは知り合いだが、どうやら良い関係ではないらしい。エグロもかなり険しい顔付きで取り巻きと言うべきか、後ろに控える人達を観察している。シリアス含めて全員が此方を嘲るような視線を向けてくる。


「ふっ。私はただ急いで料理を掻っ込んで食べるのは家畜の所業。汗水垂らすかの如く急ぎ湯に入るのは人ではなく獣のする事だ」

「遅過ぎる亀よりはマシだろう。遅ければ亀がひっくり返ったように手も足を出しても何も出来ないだろうからな。そんな亀!に成るなんてゴメンだとは思わないか?」


二人は明確な敵意を笑い声で誤魔化す。


「それじゃあ私はこれで…」


シリアスは俺達とすれ違う直前に低い声で「調子に乗るなよ」と一言を置き土産に浴場の方へと消えた。


「ごめんな、悪い空気にさせて。じゃあ、行こうか」


それから宿舎へと三階を登り、真ん中寄りの宿舎側の部屋。ヒューリの言う通りならヒューリとエリストは中々の成績だったのだろう。


部屋へと入ると二つのベッドにエリストとヒューリが座る。一人一つのベッドに座った為、二人のベッドがどれだか分かる。


「三人も自由に座ってくれ」


そうヒューリに言われてエグロとマイクがヒューリの、俺がエリストのベッドに座る。ヒューリは妙に真剣な顔をして俺と向き合う。一体どうしたんだ?とちょっとだけ身構える。


「では、アキト。聞きたい事がある。別に秘密なら答えなくて良いが、あの黄金の剣はどうやってるんだ?」


なんだ。そんな事か。妙な真剣な顔をしていたからどんな事を聞くのかとハラハラしたよ。


「あれは聖心力を直接流してるだけだよ」

「へー!そうなのか!でも、俺がやってもああならないぞ!」

「皆がやってんのは木剣を纏わせているだけ。俺のは木剣の中に聖心力を浸透させてるんだよ」

「それどうやんの!」

「今教えても出来ないよ。武器に聖心力を浸透させるのは一番難しくて、一番最後に編み出した技だから」

「む〜。そうなのか〜…」


マイクと質疑応答していて気付いた。他三人が何の反応もしていない。マイクはむむむと唸りながら悩んでいる中、ヒューリが反応し始める。


「ちょっ!ちょっと待って!そんな事を簡単に教えて良いのか!?」

「ん?良いけど?」

「い、いや、だって何か奥義とか…。隠してる技ではないのか?それに教官を倒せる程の実力が得られるのなら、教えたら自分と同じような実力者が現れて、自分の地位が脅かされるんだぞ!!」

「別に強くなるなら良いだろ。今は魔王軍に人間達は生存圏狭められてるんだ。そんな事を言ってる場合じゃないし、それに俺ほど聖心力を使える人間は居ないと自負してるよ。例え、教えて何年経っても俺には敵わないよ」


それは絶対だと言える。聖心力は増える。俺は五歳の頃から聖心力を扱う訓練をしているから分かる。この世界では身体が大きくなると増えると言われてる。それも間違ってはいないが、聖心力を使えば使うほどに増える。毎日、聖心力の操作に手こずってた時、全然気絶しないようになった事で聖心力が増えた事に気付いた。ここ最近は循環だけではなく、出力を上げたり下げたりの訓練をしている。そんな俺にたかだか聖心術で聖心力を消費してる程度では俺との差は埋まらない。

まぁ、あと数年で来る勇者達の場合は分からないが。


「そ、そうか…」


俺のあまりの自信にヒューリは少し引き気味だ。


「…それでヒューリ。お前は俺に鍛えて欲しいのか?」

「……分かるか。ああ、そうだ!俺は強くなりたい!」

「で、マイクの言葉を遮ったのは自分達だけで技術を独占しようした…と?」

「そうだ。俺はどんな事をしても強くなる。独占してでも!ここに居る全員皆で第一騎士団に入りたいんだ!」

「それはどんな目的で?」

「家の為だ!…俺はカリスアイク子爵家の貴族だ。兄達も家を盛り上げようと頑張っているが今一つ足りない。だから俺が武勲を立てれば家は確実に盛り上がる!それに…天国の母上に俺は誉れ高い騎士になれたと報告したいんだ」


ヒューリの瞳を見れば虚実じゃないのは分かる……ほど人を見る目がある訳では無いが、ここまで真摯で真剣な表情を見ると信じたいと思う。


「分かった。ここに居る者達にだけ教えよう。というか、教える人間は元々絞ろうと思ってたし」

「そうなのか?」

「ああ、悪用するような奴には教えたくないからな。その点ヒューリ達は信頼出来ると思ったから」

「そうか……嬉しいよ。ありがとう、アキト。この御恩は俺に出来る事で必ず返すから」

「気にしなくて良いよヒューリ。友達を死なせたくないから一緒に強くなる。それだけだ。じゃあ、先ずは…ヒューリから教えよう。他の三人は話を聞いてくれ」

「「「「分かった」」」」


全員がそう言い頷いた。


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