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適性無しの転生者  作者: 福王聖二
第一章
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第三十一話

エリストは宜しくの意を込めてるのか俺の手をブンブンと振る。


「宜しく。改めて、俺の名前はアキトだ」

「ああ。ヒューリ共々仲良くしてくれ」

「それは勿論。ここで初めて出来た友人だ」


言葉の直後ピキッとエリストは固まり、一体どうしたんだろうとヒューリの方に聞こうとしたが、ヒューリも固まっていた。


「ほ、ほら!あれだ!アキトは出入り口辺りの階段近くだからだろうからな!うん!」


ヒューリは何か誤魔化すみたいに言ったが何を意味する事が分からない。


「ヒューリ、それは一体どういう意味だ?」

「え?知らないのか?」

「いや、だから何が?」

「……本当に知らないのか。分かった。説明するから二人共座ってくれ」


エリストと俺は互いに手を離して席に着く。


「じゃあ、話すか。アキト、この場に居る全員に試験の順位がどれくらいなのか知っている。それはどんな方法でか分かるか知ってるか?」

「確か順位発表は無かったよな。…そうか。ヒューリが部屋の位置の事を言ってたのは…」

「そうだ。位置そのものが成績を示している。成績が良ければ出入り口側に、成績が悪ければ奥側へと追いやられる。その中でアキトは最も出入り口側に近い部屋だ。つまり、アキトが俺達の世代中一番の成績で入団した事になる。騎士になる奴、特に王都の騎士養成施設へと入る奴は負けん気がめちゃくちゃ強い。だから、ライバル意識があって仲良くなれ無かったんだろう」

「そうだったのか。あっ、だから刺激しないように俺は一人部屋だったのか」

「ま、そういう事だ」


皆から謎の距離感を覚えたのはそれか。道理で避けられていた訳だ。そう納得しているとヒューリとエリストの隣に人影が映る。その人影の正体を見ると先程倉庫から道具を取り出した二人……確かマイクとエグロだったな。


「アキトだったよな!さっきはありがとうな!俺はマイク!仲良くしようぜ!」

「エグロだ。マイク共々頼む」


マイクは赤毛の緩いパーマでツーブロックで中肉中背。天真爛漫で太陽みたいな明るさがあり、なんかハッピー野郎っぽい。エグロはストレートな茶髪でミディアム、目は切れ長の印象。声の温度は低いが優しい顔をしていて悪い奴ではない事が分かる。


「おっ。エグロにマイク!さっきは大変だったな!」

「全くだ。初日だというのに既にヘトヘトだ」

「昼はどんな感じだろうな!楽しみなような…。嫌なような…」

「マイク。今から弱気でどうするよ」

「って言うけどエリスト!実際大変だぞ!」

「だと思うよ。僕も見ていて辛そうと思ったよ」

「辛そうじゃない!辛いんだ!」

「そうか。なら食って回復しないとな」

「確かに!じゃあ食うか!」


マイクの言葉が合図となったのか、他の三人も頷いてフォークに手を伸ばし、料理を口にし始め、俺も食べ始めた。

軽い談笑も交わしながら飯を進めて、完食したタイミングでマイクが「あっ」と何かを思い出した声を上げる。


「そういえばアキトのあれ!木剣を黄んごっ!」


何かを言おうとした目の前のヒューリがマイクの口を塞いだ。


「それは後で聞こうな!今は時間ないから!うん!食器を戻そうぜ!」


ヒューリは大声で明らかに何かを誤魔化そうとしているのがバレバレで、周囲を見ると余計な事を…みたいな空気感を感じる。まぁ、途中まで喋ってたから何か正体は分かったけれど。


昼食から時間が経ち、その日の訓練を終えて夕食を迎える。


「また走り込み…。しかも石が詰まった木箱を背負ってとか鬼だろ…。その上、十本ダッシュとかボールキャッチとかおかしいって…」


昼食時、あんなに元気だったマイクのテンションがだだ下がっている。エグロはヒューヒューと息を吐くだけで何の返事もしない。


「でも、それより可怪しいのはアキトだ!皆ヘロヘロなのになんでピンピンしてるんだよ!」

「そりゃあ鍛えてるからだよ」

「限度があるって…」


マイクはヘナヘナ〜と萎れたネギみたいに猫背となって食堂へと入る。三年目は既に食堂へと入る前に入浴している。俺達は二年目の後だ。


ご飯を受け取って座るとマイクは直ぐに掻っ込む。相当お腹が空いていたのだろう。ヒューリも身体を動かすのがしんどいようでゆっくりと食べる。で、エリストとエグロだが、一切食が進んでいない。


「二人共、食わないと明日保たないぞ」

「とは言ってもねアキト…。全然胃が受け付けないんだよ」

「寧ろ、私からしたらバクバク食ってる三人が可怪しいよ。周り見てよ。私とエリストと同じく皆食えてないよ」

「それでも食う必要がある。食わないと強い身体は出来ない。頑張って食わないと今日がずっと続くんだぞ」

「…分かったよ。頑張ろう、エリスト」

「ああ…」


浴場に入る時間はエリストとエグロの食う時間に取られたお蔭というべきか、ほぼ丁度という時間で二人が食い終わったタイミングと二年目の人達が風呂から上がったタイミングが同じだった。


風呂へと入ったのは俺達が一番最初でガラガラだった。ゆっくりと風呂に浸かっていたが、チラホラと人が増え始めて、俺達は十分に浸かった為、浴場から出るとヒューリから「アキトに話がある。俺達の部屋に来い」と言われてヒューリ達の部屋にお呼ばれされる事となった。


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