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適性無しの転生者  作者: 福王聖二
第一章
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第三十話

「では、行きます!!」


俺は全身に聖心力を循環させ、木剣は聖心力を纏うのではなく、中から伝達されて全体に染み渡る事で、木剣が聖心力に纏うのではなく、内側から全てに聖心力が巡り、黄金の木剣へとなり、木剣も身体の一部のように木剣から身体へと循環する。あの日の決闘のように鱗粉みたいなものは落ちず、聖心力が体外から排出されない。一度の実戦で完全に感覚を掴んだ。やはり練習ではなく戦う事は大きいな。


教官は異様さに気付いたのか足腰に力を入れて、地面を踏み締め始める。さぁ、現時点での俺の力を試させて貰おう!!


俺は一歩踏み出す、それだけで教官との距離を木剣の間合いまで詰めて、勢いを乗せた左一文字斬りで攻撃する。教官は木剣で受け止めながら、後ろへとバックステップをする事で威力を打ち消す。


「全く…お前は最高だな」

「ありがとうございます!」


感謝の意を伝えながら袈裟斬りする。ここで初めて教官が避ける。左へと避けた教官を追うように一文字斬り。教官は木剣で受け、そのまま俺の背後へ回り込むと真っ直ぐに木剣を振り下ろされる。俺は斬撃の勢いを利用して回転し、教官の振るう一撃を受け止める。


「やるな」

「教官も流石です」


鍔迫り合いの末、互いに後ろへと跳んで距離を取る。


「お前ならこれを耐えられるかもな…」


教官は左に上半身を回し、右手の木剣を鞘に仕舞うような動作をして構えると、左手でそのまま柄を持つ。これで右手は順手、左手は逆手と云う何とも腕を振り難い形で構え、腕を引いて黄金が木剣に纏う。


「あれはガイングラウン流!!」


誰かがそう言った。あの構えがガイングラウン流なのか。どんな聖心術なのか楽しみだ。


「喰らえ!ガイングラウン流!」


教官は地面が砕ける程に力強く蹴り、間合いへと入り、腰を捻り、そのまま切り上げてくるが、一歩下がるだけで躱す。こんなものかと少しガッカリしたが教官の顔は次の一撃で決めようと云う強い意志が表れており、何かあると咄嗟に木剣を構える。


「《龍閃火》!!」


教官はまた一歩距離を詰め、上へと切り上げられた木剣は切り返し、逆手を順手に直して真っ直ぐ振り下ろされる。教官の渾身の一撃、その強烈な一撃が俺の木剣と衝突する。


「ぐっ!!」


なんて重い一撃だ…!このまま受けてたら押し切られる。俺は歯を食いしばって全身の力を木剣へと伝える。互いの木剣は拮抗し合いキリキリと音を立てる。踏ん張って一歩前に出て、木剣の悲鳴がより激しくなり、バキンッと木剣が折れた。


「なっ!」


教官の木剣が…。

教官が怯んでいる隙に首筋へと触れる。


「勝ちで良いですか?」

「ああ。武器を折られて負けてない等と主張するような情けない奴は騎士じゃねぇ。見事アキト!お前の勝ちだ!!」

「ありがとうございました」


俺は教官に頭を下げてヒューリの隣へと戻る。その間も視線を浴びたが先程のような熱量はなくなった。ヒューリは帰って来た俺にボソッと「スゲェなアキト」と口にした。


「では、全員木剣を台車に置いてまた十キロだ!!早くしろ!!」

「「「「「はい!!!」」」」」


木剣を置く為に台車へと移動してる最中に気付いた。俺の持っている木剣は深く凹んでいる事に。確かガイングラウン流は本来重い武器を扱うんだよな。もし、教官が本来扱っている武器の模造武器であれば折れていたのは俺の方だったろう。本当に恐ろしい人だ。


鎧装備の状態での十キロマラソンは中々にハードで一年目の者達は半分程が途中で脱落した。俺も全身から吹き出すように汗が流れる。


「では、昼休憩とする!!さっさと汗を拭いて飯を食って来い!!鎧はそのまま木箱の中へと入れとけ!!」

「「「「「はい!!!」」」」」


鎧を木箱へと入れ、タオルを建物に備え付けられている物干し用の棒に掛けていたおり、そこから取る。これは孤児院の皆が作ってくれたタオルで名前も刻まれており、汗も良く吸えるようにフワフワな物だ。俺はそのタオルで全身を拭いていると所々で喧嘩が起きる。二年目や三年目は懐かしい物を見る感じの瞳を向ける。なるほど風物詩なのか。

全身の汗を脱ぐって絞り、先輩達と同じように首筋にタオル巻いて、シャツの中へと入れる。


食堂へと入ると先輩方含めて視線が突き刺さる。いやに視線を浴びる。俺は食堂のおじさんから昼食を貰うとさっさと隅へと逃げる。それでも全員の目が俺へと注目する。飯が不味くなるからあんま見ないで欲しい。一睨みするか?いや、余計な敵意を持たれるだけだ。ここは仕方なく我慢するか。


「よっ!さっきは凄かったなアキト!」


隣から呼ばれてそちらを見るとヒューリが料理が載るお盆を持って話し掛けてきた。


「あ、ああ。ありがとう。ヒューリの聖心術も良かったよ」

「世辞は良い。お前に比べれば児戯に等しいよ」

「いや、世辞じゃないよ。あのステップからの連撃は見事だよ。けど、教官の言う通りスタミナが足りないし、多対一だと使う場面はないと思う」

「確かになぁ…」

「まぁ、あの感じだとスプリットステップに《舞葉斬》を混ぜて多対一も対応出来るだろうけど」

「……なぁ…」

「ん?何だ?」

「スプリットステップって……何だ?」

「ヒューリがやってたステップの事だけど…。違う呼び方するのか?」

「確かに違う呼び方するが……スプリットステップの方が何倍もカッケェ!!今度からそう言うわ!」


ヒューリがやけにテンションを上げながら笑うと目の前からガシャッと音を立ててお盆を置いた教官の一番最初の被害者のイケメンが居り、ヒューリを睨んでいる。


「おい、ヒューリ!盛り上がってないで僕にも彼を紹介してくれよ!」

「ああ!そうだった!わりぃわりぃ。アキト、紹介するよ。俺と同室の…」


ヒューリの言葉に合わせて目の前からイケメンの彼が手を差し出し、俺は立ち上がりその手を取る。そうすると彼はフッとキザに笑う。


「エリストだ。宜しく」


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