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適性無しの転生者  作者: 福王聖二
第一章
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第二十六話

新年が明け、俺とミリィは修行の年と呼ばれる年を迎える事となった。修行の年は12歳になる年に三年間、親や親戚、仲の良い人による推薦で其々一つの職業の見習いをして、手に職をつける期間の事。その三年間の見習いの後に就職する。大体は見習いをしていたお店に就職する事が多いが、時々違う職業に就職する事もある。因みに見習いでお世話になったお店とは違うお店に就職する事も、見習い期間中に他の同種の職業のお店に移籍する事は多々ある。


見習いとして本格的に働くのは二月から、一月は遠くから来る人が家族と新年を一緒に過ごしてもらう事とお別れする期間を設けた為だ。勿論自分達が住む村や街で見習いをする事が多い。けれど、俺とミリィはこの街から出て行く。俺は騎士の見習いになる為、ミリィは神官になる為に。


ミリィはマリアさんの姿に憧れてシスターになる事を目指しており、いつかは自分で孤児院や教会の管理を任せて貰えるほど立派になりたいと考えていたらしい。


王都は遠いから俺は直ぐに街を一人で出る予定だった。だが、ミリィも一緒の日に出る事となった。教会の本部が近い為、ミリィはゆっくりするのかと思いきや俺と一緒に街を出る事に決めたらしい。


俺とミリィが街を出るのは新年が明けて三日後、その前日にシスターとマリア、アサラ夫婦と孤児院の皆がお別れ会をしてくれた。


マリオ、シェフィ、ケイトは泣いてくれて、キットとエルトは泣くのを我慢していた。マリア、アサラ夫婦も涙ぐんでいたがシスターだけは笑顔で応援してくれた。


そして、俺達はこの孤児院から旅立つ事になる。


俺とミリィは大きいリュックを背負って、乗り合い所から馬車へと乗り込む。この街から出る人が少ないのか、それとも出発する日が遅いからか分からないが馬車に乗り込むのは俺とミリィだけだった。


荷馬車のように長い箱馬車で長椅子タイプの座席が並んでおり、ルールで奥から入る。一番後ろだと窓があり、孤児院の皆が並んで旅立ちを並んで見送ってくれる。


馬車は俺達が座った事を御者側にある窓から確認した後、御者さんが馬を走らせる。俺とミリィは後ろを向き、皆が小さくなるまで手を振り続けた。


御者さんにはシスターがお金を渡しており、御者さんがそのお金で立ち寄る村と街で料理を奢って貰った。訓練も朝は筋トレに型の確認。夜には聖心力操作を休みなく続けた。

そして旅立ちから十日、俺とミリィは別れる事となる。俺はこのまま同じ馬車を乗り続けるが、ミリィは教会本部行きの馬車へと乗り換える。


「それじゃあ私達もお別れだね」

「また会えるよ。今生の別れじゃないから」

「ううん。私はもうアキトと会わない」


首を振って否定されて俺は凄いショックを受ける。俺はミリィに何か嫌われるような事をしたのか、と…。


「え…!?何で…」

「それは…」


ミリィはそう言葉を切り、俺へと近付き、頬に唇が触れた。


「貴方の事が大好きだから」


彼女は笑顔を見せながらも涙を溢していた。


「貴方の顔を見ると好きが心の中で一杯になっちゃうの!私はそれを断ち切る為に神官になるの!だって貴方には好きな人が居るんでしょ!だから、諦める為に、これ以上好きにならない為に、私はシスターになりたいんだ!」


ボロボロと大粒の涙を溢しながら太陽みたいな笑顔に…無理矢理しているんだ。…まさか俺に好きな人が居る事に気付いてるなんて、ずっと一緒に居るだけあるな。


「…確かに、俺には心に決めた人が居る。隣にずっと歩いて欲しい、ずっと守ってやりたい奴が。でも、ミリィも孤児院の皆も守りたいのも本心で、世界や大切な者を守る為に騎士となる。だから…もし、世界が平和になったら、俺と…皆と会って沢山話そう。な?」


俺が意識して穏やかに笑いかけるとミリィは俺の顔を見た後に、笑いながら涙を拭く。


「…うん。いつになるか分からないけど…楽しみにしてる。それとアキトの無事も、祈ってるから」


ニッと彼女に似合う元気で素敵な笑顔でそう言った。


俺は更に二週間強、馬車での旅を続ける。魔物に襲われるという事もなく平和な馬車旅を終えて、王都の地を踏んだ。


あの街の人波に慣れたとはいえ元日本人。人混みは大した事は無いが、街並みは所謂(いわゆる)中世ヨーロッパの街並み。何となくこの街の方がタイムスリップにあったような景色に見惚れそうになるが、本来の目的を思い出す。


「試験会場は何処だろうか」


そう視点を動かすと騎士入団試験会場は此方ですと立て看板がされており、その通りに歩くとまた別の立て看板を見付ける。そして、立て看板の言う通りに進むとまるで学校のように大きい建物に、訓練用だろうか……草一つ無い整理された綺麗な地面が広がっている庭があり、何より入団試験会場は此方ですという大きな立て看板が立てられている。


「確か受付の人に見せるんだったな」


入口の手前横を見れば受付と書かれた立て札があり、フランクな格好の男性が居り、俺はそちらへと歩みを進めた。


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