第二十四話
本当の、真なる勝利。疑いようのない、他者がもう介入出来ない勝訴。その熱気は徐々に高まっていき、大歓声へと繋がっていく。どんな顔をしてるのかとグラウスを見ると、真っ青に顔を染め、俯いて震えていた。
俺はグラウスの様子を見て大満足でフィールドから下りるとシスター…ではないんだよな、マリアさんが俺へと近付いて抱き締めた。
「貴方は…!貴方って本当に…もうっ!」
やっと安心したからだろう、緊張が緩んで涙がボロボロと俺の服へと落として濡らす。最近は悲しそうなマリアさんしか見てなかったから嬉しい。
「ク…クハッ…クハハハハハ!!」
勝ち目がなくなって頭が可怪しくなったのか、グラウスは意味不明に笑い出した。
「お前等!!全員観覧の奴等を人質に取れ!!」
と、言った瞬間にグラウスを応援していた一団が動き出し、ナナメと呼ばれている猫背の男は振り向きざまに袖から短剣を取り出して、背後を取っていた騎士の首を突き刺し、突き刺された騎士はそのまま崩れ落ちる。
「ハハハハハハッ!このまま全員閉じ込めてしまえば!!今回の裁判は勝訴と片付ければ!!王都の騎士団の野郎達も何も出来ない!!」
「舐められたものだな」
小さい声、だが騒乱な最中でさえ確かに聞こえた。その言葉の直後、裁判官の隣に居た一人が身を乗り出して縁を蹴って観覧の人達を捕らえようとする者達の前へと一瞬で躍り出て、瞬時に半数の人間を斬り裂いた。
「な、なぁ…!何者だぁ!!貴様ぁ!!」
グラウスは驚きながらその騎士を指差す。指差された騎士は被っていた兜を脱いで、頭を振って髪を靡かせる。
「お前が気にしている騎士団の団長だよ」
「サ、サ…サエタル・エグフェスト!!何故王の盾たるお前がこんな所に居るんだぁぁぁーーーーー!!!」
グラウスは腰を抜かしながら騎士の人をご紹介してくれた。王の盾で騎士団の団長…。確かにそんな凄い人がこんな所に?
「お前が王都やら他の街とかで好き放題されてそろそろ王も僕達騎士団も我慢の限界でね。お前がこの街に来ると事前に聞いててな。お前がまた小細工だらけの裁判をやると信じて、王都にもこの街にも近い街で待機していたのさ。一言で言うなら……お前はやり過ぎたんだよ、グラウス・マウンテン」
グラウスは騎士団の団長…サエタルさんの言葉に、顔中真っ赤にして血管も浮かび上げ、遠くに居る俺にでさえ聞こえる大きな舌打ちをした後にガンツを見下ろしてサエタルさんを指差す。
「ガンツ!!何をしている!!さっさと立ってコイツを殺すでも!!人質を取るでもしろ!!」
しかし、ガンツは脂汗を流しながらも全く動く気配がない。
「どうした!!」
「無駄だよ。彼は動けない」
恫喝するかの如く声を張り上げて命令するグラウスにサエタルさんがそう答える。
「なにぃ!!」
「彼が与えた攻撃は相手の次の行動を封じるものだった。最初の一撃は手首を折って戦闘不能状態に、次の二撃は膝の骨を折るようにし、行動不能にする。相手の次を無くした攻撃。ガンツ…だったか。彼は四つん這いになってるのも辛い筈だよ」
「くぅぅぅ〜~!!なら、ナナメ!!お前が何とかしろ!!」
そう言ってナナメが居た場所を見るが其処には居らず、グラウスはナナメの姿を名前を呼びながら探すと、裁判官の近くに移動して持っていた武器を投げ捨てて両手を前に突き出して、騎士達の前に立っていた。
「俺はあの人に命令されただけなんすよ。大人しく御縄につくんで情状酌量して下さい」
「な、何をして居るのだナナメ!!」
「うるせぇ!!もうアンタの下につくメリットなんて、もーねぇんだよ!!」
ガンツやナナメがもう何も出来ない、何もしない事が分かると他の半数の一団も武器を落として諦め、グラウスはただただ顔を真っ赤にするだけ。もう手も足も出ないな。終わりだ、グラウス。
「さぁ、大人しく観念するんだ」
「…クソォォォーーーーー!!!」




