第二十一話
三人称視点
少し前
孤児院の前で三人の兵士が武装状態で配置された。そこで孤児院の中に入ろうとした若い兵士…キノンの首根っこをベテランの兵士が掴む。キノンは自分を掴んだ手を払って振り返る。
「何するんすかっ!ザットさん!」
「こちらの台詞だ!何故孤児院の中に入ろうとしている!」
「だって俺は子ども達と仲良くなる為に休日返上で孤児院に来たんですよ!」
「知るか!今日の仕事は孤児院を守る事だ!子ども達と仲良くする為じゃない!」
「良いじゃないですか!三人居るんですから!」
「そういう問題じゃない!グラウスの所から刺客が来たらどう対処するんだ!アイツなら金を使って大量の裏の奴等を使う筈だ!ここを全員で守るしかないだろ!」
ベテラン兵士のザットは駄々を捏ねるキノンにそう一喝するが、納得していない。
「う〜っ!あっ!でも俺達が知らない抜け道で来るかもじゃないですか!」
「それはない!」
若い兵士はどうすれば孤児院に入れるかと思考して唸り、これなら納得出来るのではと思い発言したが、即否定される。キノンは少しムッとし、その苛つきを発散させるようにザットに問うた。
「なんでっすか!」
「孤児院は基本的にそういう抜け道は無い。あったとしても秘匿されていて、この街の領主や設計した大工、教会の管理者のみにしか知られていない。つまり、この街に住んでる奴でも知らないんだよ」
「む〜…」
キノンは唯一の反抗策を失い、唇を尖らせて不満を訴えるが無視するようにザットは道の先に視線を向ける。
「分かったなら警戒しろ」
「は〜い」
キノンは不満げに返事をして持ち場に着く。
「はぁ…全く…」
ザットが嘆くように言葉を吐くと、それの光景を見ていた無精髭の男性が笑っていた。
「まぁまぁ、元気があって良いでしょう」
「と、言ってもなぁ…。元気が余り過ぎているよ。ドルトスも何とか言ってやれよ…」
キノンの方を今一度見ると孤児院側を見てため息を吐いているのを見て、「此方が吐きてぇよ」と心の中で愚痴った。
「本当にドルトスが居てくれて良かったよ」
と、ドルトスの方へと向いた瞬間に、ドルトスの顎を殴って脳を揺らし、意識を一瞬で刈り取る。
ガシャンッと大きな音が聞こえ、キノンは振り返ると倒れたドルトスとそれを見下ろすザットを見た。何処からか刺客が来たのかと周りを見渡すが誰も居ない。であれば答えは一つだった。
「あ、あんた!何やってるんだ!ザットさん!」
「何って?そりゃ」
言葉を途切り、石畳を蹴ってキノンへと近付く、キノンは持っている槍で応対しようとするが懐に入られ、槍の間合いでは攻撃する事さえ叶わず、足払いされて倒され、マウントポジションを取られる。
「金稼ぎだよ」
その言葉を最後に意識を奪われた。
兵士二人を倒したザットは立ち上がり、周囲を見渡す。
「人が闘技場の方に流れたお蔭で人が少ない。こりゃ仕事が楽だわ」
ザットはドルトスの腰の剣を取って聖心術《真天斬》を発動する。鍵へと真っ直ぐに振り下ろされ、簡単に壊す事が出来たが刃が潰れてしまった。
「やっぱり自分のでやらなくて良かったな」
ポイッと剣をその辺に投げ捨て、キノンの槍を拾ってから門を開ける。
「…そう言えばキノンの奴、どうやって入るつもりだったんだ?」
キノンの言動に疑問を覚えながらドアノブを槍でブッ壊して、足で扉を開く。
「お〜い。子ども達?何処に居るんだい?君達を守る兵士だよ〜」
大声で問い掛けながら孤児院内を巡るが返事が無い所か、人の気配を感じない。それに孤児院内がカーテンが掛かっており、予想外に暗い。
「可怪しい。アサラの話では子ども達は闘技場には行かず、お留守番だと聞いていたが……まさか!」
瞬間、微かに光を反射する鈍い鉄の輝きを寸前の所で気付いて咄嗟に後ろへと下がる。
「そういえばグラウス様が言ってたな。気に食わないガキが居ると……それがお前か!」
そう指を相手に突き付けると影の中で揺れる姿を油断なく捉え、剣を抜く。その影は小さいが近付いて来る度に大きくなる。
(ガキにしてはデカい。いや、影が大きくなっただけか)
だったらと思い、近くのカーテンを剣で斬り裂くと太陽の光が差し込み、影に隠れた姿を露わにする。
「な、何でお前が……。何でお前が居るんだよ!!
アサラ!!」




