第十九話
シスターは俺の顔を呆然としながら見詰め、何を言えば良いのか分からない表情をして、涙声が混じって諦めたようなため息をし、決意を固める表情へと変わる。
「分かりました。先ずは貴方が戦わなければならない理由を教えて下さい」
「では、座り直しましょう」
俺とシスターは椅子に座り直してから話を再開する。
「先ずは俺が戦う理由は二つ。相手が俺の実力を分からない事と子どもだからと侮るからです。侮らずに全力で来る可能性もありますが、あの感じだと大丈夫でしょう。寧ろ、ジワジワと追い詰める、弱い者イジメが好きなタイプだと思います」
シスターはその言葉を聞いてハラハラとした様子で心配そうにする。
「俺が決闘に出るのは駄目なのか?」
「多分実力は測られてます。それでも決闘裁判にしたなら、確実に勝てると判断されてる筈ですし、アサラさんは兵士ですから油断はないでしょうから、アサラさんでは奇跡が起きづらい」
「…認めづらいけれど、確かに」
「けれど、これには前提条件が必要です。それは俺が油断している大人を倒せる実力があるかどうか……それが大事です。だから、これから確かめたいと思ってます。アサラさん、お相手お願い出来ますか?」
そう問われたアサラさんは左の眉尻を吊り上げて反応する。
「俺がアサラさんを倒したら、俺が決闘します。負けたらアサラさんのままで」
「分かった。俺は自分のやって仕出かした事を他人に、それも子どもに押し付けるにはいかないしな」
アサラさんは気が早って立ち上がり、ドアを開ける。
「それでは裏庭で準備をしながら待って下さい。大人用の木剣を持って行きますので」
「分かった」
アサラさんが出て行ったのを確認して二人を見る。
「二人にはまた別な事を頼みたい事がある」
「何でも言ってよアキト!」
「私のせいで起こった事、何でもするわ」
二人共熱量が高い。本当に何でもしてくれそうだな。
「先ずはミリィ」
「うん!」
「ミリィには決闘当日、チビ達を統率してくれ、シェフィにも話を通してくれ」
「分かった」
「それじゃあシスター…貴方にしてもらう事、それは…」
「それは?」
「アサラさんと結婚して貰いたい」
「「……………‥ええーーーーーーー!!!」」
シスターは目を点にして、理解した瞬間に顔を真っ赤にして、絶句していたミリィと一緒に大きく叫んだ。
〜〜~
三人称視点
あれから数日、孤児院には裁判の日取りが決まったという手紙が届く。それは勿論、グラウスの所にも届いた。
「ふぅん。なるほどニ週間後。ここまで王都から三週間と掛かる。往復等考えると騎士団の介入はなさそうだな」
グラウスが安心した様を見てガンツは疑問符が浮かぶ。
「何故騎士団を気にされるんでぇ?確か、教会どもの根城はこっから一週間以上と近いっすけど?そちらは良いんで?」
「今更奴等は何も出来ん。それにあいつ等は騎士団と違ってねちっこくない。出来ないなら諦めて、責任を当人に全て押し付けるんだよ」
「……ほう?」
グラウスの説明で要領を得なかったガンツをナナメが思いっきしぶっ叩いて、説教をする。
「このバカ!グラウス様がわざわざ説明して下さったんだ!理解しろ!」
「んん…。すまん…」
「ったく…。良いか?騎士団の奴等は俺達がヘマするのをジメジメと待って、証拠を掴んだら一気に商会へ押し寄せる。今回の事は騎士団からしたらチャンスだ。まぁ、お前の事だから無いと思うが、負けたら罪を偽装したとか何とかイチャモンを付けて他の犯罪の証拠を探そうと血眼になって商会に乗り込むだろう。それに不味いのが罪を偽装したのが事実。金をつかませた奴等が騎士団を恐れてゲロッたら、そのゲロを辿って確信に辿り着いちまう。ここまでは分かったか?」
「おう」
ガンツの即答に本当かよと疑惑の目を向けるが、真剣な顔をしてるのを見て、嘘はついてないと思うが、覚えているかがナナメには不安だった。
「…じゃあ次に教会だが、あいつ等は信者がした事は一切関与しない。しかし、神官…つまりは高位の信者、分かり易いのはシスターだな。奴等は神の代弁者である神官は出来るだけ守ろうとする。だが、奴等は自分達には何も出来ないと分かると容赦なく関係を切ったり、無視をする。自分でどうにかしろってな。今回は決闘裁判で介入出来る事は代理人を立てるくらいだ。ほぼ何も出来ないんだよ」
「なるほどな。良く分かったぜ。つまり、騎士団はとにかくウゼェから、騎士団に注意しろって事だな!」
解釈はあってるが、それだと教会の説明の意味が無いだろうとナナメは肩を落とすが、グラウスはクックッと堪えるように笑う。
「概ね合ってんだから残念がるなよナナメ。それに一様介入出来る方法はあるにはあるが、決闘裁判に乗るような阿呆共だ。気付かないであろうな…。それにそんな事をする前に終わる。万が一の負けもない」
グラウスは勝利を確信した笑みを浮かべた。




