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適性無しの転生者  作者: 福王聖二
第一章
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第十八話

俺達三人は待合室に着いて、ドアをノックしてから扉を開け、中で待って座っていたアサラさんを見る。


「待たせてすいません。それじゃあ今後の対策について話し合いましょう」


シスターにはアサラさんと隣合って座って貰い、ミリィは俺の横に座って貰う。


「それでは先ず、アサラさんを怒った理由から話した方が良いでしょうから、そちらから」

「頼む。ずっと気になっていたから」

「俺が怒ったのは裁判を受けた事と、その裁判方法がよりによって決闘裁判だからです」


俺がそう言うとアサラさんは首を捻り、シスターは気付いたようでハッとした表情をする。


「シスターは気付いたようですね。そうです。そのまま裁判を受けずに帰ってくれば、あちらは訴えたりしなかったでしょう」

「それは…どういういう事だ…?」

「教法四条、正当なる理由がない限り、神の教えを広めし者は神が守り、貴い血族による縛りを受けず、神の眼が真実を貫く」


俺の代わりにシスターが答えてくれた。けれど、この言い回しだと分かりにくい。


「シスターが仰られたのは教会の教え。今の言葉を噛み砕いて言うと神官を証拠もなし訴えたり捕縛をする事は王族や貴族であろうと禁止し、教会が真偽を確かめるという事。それはつまり、王族だろうと貴族だろうと商人だろうと庶民であろうと……証拠がないのに訴えたら教会が相手になるっていう事なんです」

「…いや!でも、周囲にも人が居たし!」

「その人達が買収されてるとしたら?」

「!?」

「そういう事も含めて教会は精査する。状況を考えたら絶対に買収されてる。それがバレたら不味いのはあちらだ。わざわざ自分達が不利になるような事は商人はしない。そして、状況を更に悪くしたのが決闘裁判だ」


今度は反論をしようとしない。考えなしの行動をした自分に憤ってるようで、拳に力が入っており、圧迫された部分が白んでいる。このまま静かに聞いてくれるようで、黙って此方を見る。


「もしこれが見聞裁判であれば教会が横槍入れる事も出来たり、捜査協力をしてくれたでしょう。けれど、決闘裁判はどこまでいっても個人で解決させるもの。そうなると教会が間に入れるのが代理人だけですが……。…教会に所属する人が強いとは思えない。それにアサラさんを抑えつけられるほどの強さを持つ者が居るなら、決闘裁判の方が有利。つまり、二人は彼等の思い通りに誘導されていたんですよ」


アサラさんは俺の出した結論を聞くと、ハハハと呆れるように笑って俯く。


「なんだよ……それ…。俺が全部状況を悪くしてるだけじゃねえか…。何で俺がシスターと一緒だったんだ。俺じゃなくてアキトだったなら…」

「それは今言ってももうどうしようもない。だから、対抗策を考えようという事です」


すると、服の裾をクイクイと引っ張られて、隣のミリィへと向く。


「アキト。そこまでやられてるなら対抗策なんて無いんじゃ…」

「……無い…訳じゃない」

「本当か!アキト!?」


アサラさんは思わずといった様子で立ち上がる。俺は落ち着けとジェスチャーし、「すまん」と謝りながら彼は席に戻る。


「それで!対抗策ってなんだ!」

「対抗策ってほどに確実なものでもないし、どれくらいのものかと測ってからじゃないと分からないから……正直なんとも言えないけど…」

「それでも良い!言ってくれ!俺に出来る事なら何でもやる!」


自分が仕出かした事、自分でケツを拭きたいのがヒシヒシと伝わる。こちら側の勝利を得る為なら確かにアサラさんの力が必要だ。


「…では対抗策、先ず一つ目だが……決闘は俺が出る」

「「「!!!??」」」


思いもよらぬ言葉に俺以外の全員が黙って硬直する。アサラさんは暫く口をパクパクと開閉し、シスターは俯いたと思ったらバッと顔を上げて、何か言うのかな?と思ったら、シスターは右手で自身の右頰に思いっ切りビンタした。予想外の行動に思考が白く染まり、反射でシスターの顔を見ると、シスターの顔は悔しさと情けなさと申し訳なさがゴチャ混ぜになった表情でまた泣いており、彼女は泣きながら俺へと近付き、俺を抱き締めた。


「貴方は何でもっと自分を大切にしないの!!?私達が貴方が苦しんで助かって喜ぶと思いますか!!?貴方が怪我するくらいなら私が決闘に出た方が何千倍もマシです!!?いい加減にしなさい!!!貴方が怪我をすると苦しい人が何人居ると思ってるの!!!」


ここまで激情的に感情を発露しているシスターは初めて見たな。シスターは膝をガンッと勢い良く床へとぶつける。痛さなんて気にせず、彼女の表情が涙を拭おうとした両手で見えなくなる。


「貴方は大事な子ども…。何度言えば分かるのよ…。貴方が何かを背負う度…、自分より下の子達の為に我慢する姿を見る度…。貴方が誰かの為に自ら危険な事を進んでしてしまう度に心が苦しく苦しくて…。何で貴方は我儘を言わないの?何で貴方は嫌って言わないの?何で貴方は子どもらしく自由に気負わずに過ごしてくれないんですか…。なんでなの…」


正直、シスターがこんな事を思っていたとは…。自分のしたことは普通の振る舞いなんだけど…。ここまで深刻に捉えられていたなんて。確かに子どもらしくないのは理解していたが…。う〜ん…と俺は頰を掻きながら椅子から降り、シスターの両手をこじ開けて彼女の涙を服の袖で拭う。


「これは…ミリィにも言ったんですがね。俺この今が幸せなんです。それに十二歳になる年にここを旅立つ。そうなれば再び会う事は難しい。だから俺は今を噛み締めているんです。いつかの別れに未練が無いように。それを守る為なら俺はやる事をやりますよ」


俺はシスターを安心させる為にそう言って笑った。


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