第十七話
バスケットを食料庫へと置き、シスターの部屋へと戻る。今後の対応を含めて聞く必要がある。
俺がシスターの前に立ち、ノックをしようとすると部屋の中からミリィとシスターの話し声が聞こえる。俺はノックをして、「失礼します」と言いながら中へと入る。中に入るとムッとした表情でシスターが見てきた。シスターはちょいちょいと手招きをし、俺は嫌な予感がすると思いながらも近付いた。
「少し腰を下げて下さい」
シスターにそう言われたので、言われた通りの姿勢になると彼女からチョップを喰らう。痛くは無いが自然と「痛っ!」と言ってしまう。
「さっきは誤魔化しましたね、アキト」
「す、すいません。シスターに人を殴ったなんて言えず…つい…」
シスターは更に頬を膨らませて、連続でチョップをするが俺は一切抵抗しない。だって痛くないし…。
「ついではありません。殴ったのなら素直に言いなさい。訳を聞きますから」
訳を聞きますからって、それは……。
「怒らないのですか…?」
「怒りませんよ。貴方が怒る事は滅多にないですから。それに優しい貴方が人を殴るなんてよっぽどでしょう」
それ程まで俺を信頼してくれてるなんて嬉しいな。
「ありがとうございます。シスター」
「ふふ。どういたしまして…かしら?それで、何でアサラさんを殴ったの?」
「その前に食事にしましょうチビ達を待たせてるんで」
別に話を逸した訳じゃない。これ以上時間が経つと飯が冷えるし、チビ達の我慢の限界が突破するし、絶対話が長くなるから腹ごしらえしてからの方が良いからだ。シスターも俺の意見に賛成してくれたらしく頷いてくれる。
「それもそうね。それじゃあ二人共、食事が終えたらまたここに来て。アサラさんも呼ぶ…のは流石に駄目よね。えっと……そうだわ!アサラさんに待合室へと居るように伝えて!」
「それは私が伝えるよ。アキトもあんな事があった後じゃあアサラさんに会い辛いだろうし」
「ありがとう。助かるよ、ミリィ」
「どういたしまして♪」
ミリィに助けられるとは…。成長したなぁミリィも。俺はまだ駄目だな。怒りのまま行動して、ミリィやシスターを心配させるなんてな…。
「それじゃあシスター、俺達はこれで」
「はい。また後で」
ミリィは裏庭の方へと早歩きで進み、俺は食堂へと歩く。チビ達は俺が入ってくると一気に質問攻めしてきた。
「おにいちゃん、シスターは?」
「アキト!ミリィ姉ちゃんは!?」
「おにいちゃん、ごはんはたべないの?」
「そうだぞ!皆が揃わないと食べられないぞ!それとももう食べ始めても良いのか!?」
一斉に質問が飛んできて、俺は両手で質問を制する。
「ま、待て!落ち着けお前等!先ずシスターは買い物で疲れて、自室で食べる。ミリィは直ぐに来るからミリィが来てから食べるから……な?まだステイだステイ。待っとけよ」
「「「「は〜い」」」」
シェフィの隣に座りながら気を抜くと視界の端で俺の顔を覗き込むシェフィが見える。
「どうしたシェフィ?」
「元気ないように見えたから…。何かあった…?……!もしかして昨日話した…!」
俺はシェフィの口をシーッと口を閉じるようなジェスチャーで封じる。
「ミリィと俺はシスターと話がある。下の子達を見ててくれ」
俺がそう言うとシェフィはうんと頷いた。シェフィの口から手を離すと同時にミリィが入ってくる。
「皆!待たせてごめん!ご飯を食べよう!」
ミリィが席に着くと、ミリィが手を合わせ、皆も彼女に合わせて手を合わせる。それを見ていた彼女が御祈りを捧げる。
「豊かな土地を生み、豊かな草木を恵み、豊かな動物達を育み、我等を創りだした神と全てに感謝を。そして、素晴らしい料理を作ってくれた皆に感謝を…」
ミリィの神へと祈る姿は堂に入ってる。それもそうか。ずっと隣で見ていたし、ここ最近は早起きしてシスターと一緒に神へと御祈りもしていたからな。ミリィの事が好きなエルトは見惚れてるな。
「それじゃあ頂こう!」
その神聖さがあった雰囲気から砕けた明るい雰囲気へと変わり、なんともまぁ魅力的なギャップだな。
食事を終え、食器を洗ってからシスターの部屋を訪ねる。シスターの食器は既に俺が回収している。
「「失礼します」」
俺が扉を開けると目の前に準備万端で立って待っていたシスターが居た。
「それでは行きましょう」
シスターと一緒にアサラさんが待つ待合室へと向かった。




