第十四話
三人称視点
シスターとアサラの二人は食料品を扱うエリアへと足を運び、露天商で野菜を売ってる女性が箱から野菜を台の上へと飾っていると久々に見掛けるシスターに驚き、作業を中止してシスターに話し掛けた。
「シスター!久々だねぇ!」
「はい。ミサさん、お久しぶりです」
「あら!覚えてくれてるなんて有り難いねぇ!」
と、女性が豪快に笑っていると視界の端にアサラが居る事に気付く。
「…おや?アサラも居たのかい!」
「どうもです」
「シスターと一緒なんて一体どうしたんだい?」
「朝、孤児院前でお会いしまして…。女性が朝早くのお買い物は危ない、ご一緒しますと言って下さいまして」
アサラはえっ!と内心で驚く。彼の中ではシスターは敬虔な信者のイメージがある為、嘘を吐くとは思わなかったからだ。
「なるほどね。あんた!シスターとのデートなんだよ!しっかりエスコートするんだよ!」
「は、はい!」
アサラはミサの言葉を良く聞いておらず空返事をしていると、シスターが顔を赤らんでるのが見えた。
(お、俺は何に返事したんだ…!)
アサラの頭の中がその事で一杯になるが、そんなアサラをミサは放置してシスターへと向き直す。
「それで、何を買うんだい?昨日、アキト達は足が早いの買ってたけど」
「今回は保存が聞きやすいお野菜を多めでお願いします。お値段は5000リゼで」
「おや?結構買うね。何かあるのかい?」
「いえ、特にそういうのではありません。ただ…こう言う時に買い溜めしておかないといつの間にか無くなった……なんて良くありますから」
「そうかい。じゃあバスケット貸しな。詰めて上げるよ」
「ありがとうございます」
アサラは笑顔でバスケットを渡すシスターを見る。
(恐らく今回買い溜めるするのはマウンテンの野郎が何かした時に備えての物だろう)
ミサは木箱から其々の野菜を取り出してキッチリ値段通りの数を揃える。それだけの数の野菜を入れたからか、ミサは力を思いっ切り入れて持ち上げる。
「あいよ。結構重いから気を付けな」
「「はい」」
バスケットをミサが手渡そうとした時にアサラとシスターが同時に手を伸ばした結果、シスターがアサラの手を握る事となり、シスターとアサラは咄嗟に手を離し、バスケットが落ちる。
「おっ…と!」
ミサは台にバスケットが衝突する前に何とか受け止める。
「危ないわね…」
ふぅ〜と一人息吐いて、二人を見ると互いに照れて、相手の顔を見ないようにか、相手が居る逆の方向に互いが顔をそっぽ向けていた。
(おやおや。シスターにも春かね。シスターは神に純潔を捧げているから家族を持てないけれど…。やっぱり人並みに幸せになって欲しいねぇ)
結局の所、男が荷物を持つべきだとミサがアサラへと押し付けた。それから他の露天商へと足を進めてる途中、シスターが足を急に止めた。
「どうしましたシスター?」
「先程の事…ですが…」
「は、はい…?」
アサラは返事をしながらも何の事か分からず疑問形になる。シスターは少し躊躇うような様子を見せ、ゆっくりと口を開く。
「ミサさんが仰られた…デ、デートとか…その…確かに女性と男性二人きりの買い物はデートと捉えられるのでしょうけど…。それに…手が……いえ!何でもありません!すいません!こんな事をいきなり言われても困りますよね!」
困り顔で笑うシスターを可愛いと思いつつ、アサラはあの人はそんな事を言っていたのか!と思うと同時にどう反応すればと考えるが何も浮かばずに、「いや、そんな事は無いですよ」と言いながら笑うしかなかった。
「そろそろ子ども達が起きるでしょうし、帰りましょうか」
それから肉や果物を買って、シスターがそろそろ帰りましょうとアサラに告げる。アサラはもうこの時間が終わりかと残念に思いながら歩いて行くと道を塞ぐ者達が現れる。
「…何だ。あんた等は…」
アサラはシスターを守るように前へと出て、バスケットを下に落し、左手でジャケットの裾に触れ、中にある短剣を何時でも出せるように警戒する。
(何で老若男女と人選がバラバラなんだ。いや、お蔭で俺一人でも問題なさそうだ)
警戒からの油断。結果、警戒を緩めてしまい、そのせいで後ろへの気配に気付かず、守るべきシスターが疎かとなってしまった。
「痛っ!」
「っ!?シスター!」
アサラがシスターの悲鳴を聞いて、反射で振り返ると手配書で見た男がシスターの腕を掴んでいた。
「何をしているんだ貴様は!」
アサラがシスターを掴んでいる方の手首を握り潰さんと云う勢いでグラウスへと近付くが、グンッと下へと打ち付けられる。それをしたのがグラウスの近くに居る巨漢の男だ。
「アサラさん!」
「クソッ!離せ!!」
「まだ駄目だ」
「なにぃ!!」
アサラは必死に抵抗してるがビクリともしない。シスターの注意がアサラへと移動してるのが許せないのか、シスターの腕を握る手を強める。
「痛い!離して下さい!」
トンッと強くグラウスを押すと、グラウスはシスターから手を離し、尻餅を着くとニタリと笑い……こう言った。
「聖職者のくせに人を突き飛ばすなんて酷い女だ!訴えてやる!」
…と。




