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適性無しの転生者  作者: 福王聖二
第一章
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第十三話

俺は孤児院に帰るとミリィを見付けて、キッチンの中で料理をするていでミリィと二人きりになり、さっきアサラさんに話した事をミリィへと話した。


「そんな事が…。やっぱり怪しい人だったんだね」

「ああ。だから今度から買い出しは俺だけにしようと思う」

「えっ!アキトだけじゃ危ないよ!せめて私も!」


ミリィは俺の顔を見て、そう言いながら距離を近付ける。俺はミリィの提案に首を振る。


「駄目だ。ミリィにはチビ達を見てて貰いたい。不用意に人に近付かないよう見張ってて欲しいんだ。一様シェフィにもこの事は伝える。ミリィにはエルトとキットを見てくれ、シェフィにはケイトとマリオを頼もうと思う」

「でも…アキトだけなんて…」

「大丈夫。いざとなったら逃げるよ。多分一番足が速いのは俺だと思うし。それに…」


俺はミリィの肩に手を置く。


「ミリィが孤児院に居て、チビ達を見てくれれば安心出来るんだ。頼む」

「…分かった」

「ん、助かる」


夜ごはんを終えるとシスターとシェフィを食堂に残して、さっきの話をする。話を全て聞いたシスターは立ち上がり、わざわざテーブルを迂回して俺へと近付き、抱き締めた。


「何故貴方ばかりこんな辛い目に遭わなければいけないの?何故貴方は自ら辛い目に自ら飛び込むの?神は貴方に一体何を望んでおられるの?どうして…」


シスターは辛そうな涙声を上げながら、瞳を閉じて目尻から涙を溢す。俺はシスターを安心させるように抱き締め返す。


「これは孤児院での問題でもあるし、年長は下の子達を守るのが役目だから」


シスターは俺の腕を掴んでからバッと身体を離し、厳しい顔付きで俺の顔を見る。


「それは貴方だけが背負うものではありません。いつかの時、御立派な御両親に代わり、絶対守り抜くと誓いました。貴方にこんな危険な役目押し付けられません。私が買い物に行きます」

「けれどシスターはお勤めが…」

「朝早くに出ます。そうすれば問題はないでしょう」

「しかし…」

「しかしではありません。子どもは余計な心配をせず、大人に守られて下さい」


シスターはいつもの穏やかな顔に戻し、ニコリと笑ってポンポンと俺の頭を撫でる。


「ね」


シスターにそう宥めるように言われるとどうも強くでれない。


「それじゃあ明日に備えてもう寝ましょう」

「はい」


俺達は寝床へと入り、今日を終えた。


〜~~

三人称視点


シスターマリアは朝日が昇ると同時に起床し、裏庭にある井戸の前で服を脱ぎ、水に濡れないように脱衣籠の中に寝間着を入れると、大きめの(タライ)の中へと入り、井戸の中から掬った水で桶を肩から浴びる。水の冷たさに少し身体を震わせる。水浴びをして身を浄めると、籠の中に入れていたタオルを取り出して、丁寧に全身の水を拭きとり、タオルを井戸の縁に置いて盥から一旦身体を出して、盥の中の水をタオルで吸い取って、軽く絞ってから残った水を花々に撒いて、また盥の中に戻って、足に付いた砂や土をタオルで拭き取る。タオルを再び井戸の縁に置くと寝間着とは違う服、修道服を取り出して着替えると、その後に神へと祈りを捧げた。


「よし。それでは行きましょうか」


シスターは子ども達が起きる前にバスケットを持って孤児院から出ると見慣れない私服を着ている見慣れた兵士が門の前に居た。


「アサラさん…?」


シスターが首を傾けながらその人物の名前を呼ぶとその男性は驚いた顔をした直後、頬を赤く染める。


「シ、シスター!どうも!おはようございます!」

「はい。おはようございます。それで何用…いえ、恐らく昨日の件…ですよね?」

「は、はい!奴が孤児院を襲わないかと見守っていた次第です!」

「ありがとうございます。とても心強いです♪」


ニコッと優しく笑ったシスターを見て、アサラは更に頬を赤くする。


(な、なんて美しいんだ!正しく聖女!いや、女神そのものだ…)


そんな事を思ってると孤児院の扉が開かれ、二人はそちらに注目すると、中から寝間着ではなく、外着用の服を着用したアキトが出てくる。


「アキト。起きてたのですね。しかも準備万端で…」

「はい。本当はシスターと一緒に行こうとしてたんですが…」


アキトはチラリと頬を染めて、明らかにシスターに恋慕の想いを持っている兵士へと視線を送る。


「アサラさんが一緒なら心配ありませんね」

「「え…?」」


シスターとアサラの二人は遠回しに「一緒に買い物に行け」と云う意味を宿した言葉に絶句するように驚く。


「アサラさんはシスターを見てて下さい。一番狙われてるのはシスターだと思うんで。それじゃあ俺はチビ達の朝支度するから」


アキトは手をヒラヒラと振りながら孤児院の中へと戻った。アキトからそう言われた二人は互いに見合い、シスターはフフッ♪と笑い、態々(わざわざ)自分の為に起きてくれたアキトの心遣いにありがとうと内心で感謝をしてからアサラへと頭を下げる。


「アサラさん。それでは宜しくお願いします」

「い、いえ!俺で良ければ!」


アサラは張り切って答えた。


(ありがとうアキト!今回のデート!じゃなかった。シスターの護衛、キッチリ(こな)してやるぞ!)


アサラは目に炎の闘志を宿らせて、強くシスターを守り切ると決意した。


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