第十二話
俺は次の日、早速マウンテン商会の店の前にいた。本日は全員留守番させている。ミリィは「アキトだけに行かせられない」と言っていたが、何とか言いくるめた。因みに食料品の買い物もする予定でバスケットも持って来ている。
「にしても繁盛してる」
開店セールと銘打って安く服を売っている。セールをやっている日数を見ると開店してから三日間だけ開催中との事で、どうやら開店したのは昨日だったらしい。…やっぱり妙なんだよな。開店準備が出来てるなら確実に噂となる。少なくとも開店一週間前までには。そもそも開店する店なら絶対に宣伝をしている筈だが……奇妙だな。
「直接的な手に出るまで様子を見るか?いや、アサラさんに一様伝えておくか」
俺は兵士達の駐留所へと足を進めると此方の歩幅に合わせるような足音が聞こえる。気の所為かとも思い、不意に止まったり歩いたりすると俺が歩きだした同じタイミングで足音か鳴る。しかも複数。多分三人以上…。
「逃げるか」
俺は脇の路地裏へと入り、脚に予備動作無しで聖心力を籠めて壁キックを連続して、ジグザクに登り、三階建ての屋根へと到達する。俺はこの五年で聖心力を予備動作無しで発動可能となり、皿に聖心力の持続時間が大幅に延びた。だから、建物を足だけで駆け登るなんて赤子の手を捻るより簡単だ。
「ま、そんな事より……下はどうかな?」
聖心力を切り、屋根から下を見下ろすと俺を見失った四人の男性がキョロキョロと周りを見渡しており、昨日見たデカいマッチョな男が怒号を飛ばして俺を探すように命じる。
「絶対見付けろ!路地裏ならボコボコにしても目に触れねぇ!隠蔽も簡単なんだ!早く見付けるぞ!それにこれはグラウス様の命令でもあるんだ!アイツを見せしめにしてシスターやあの孤児院のガキ共をこき使うんだ!もし見付からなければ俺がお前達を顔面が壊れるほどぶん殴らり、コキ使ってやるからな!分かってるなぁ!!」
「「「は、はい!」」」
…やっぱり裏があったみたいだ。思った通りだ。それにしても……うちのチビ達は直感でこいつ等の本性を見抜いてるのはある意味恐ろしい。チビ達の前で隠し事は出来なそうだ。
俺は彼等がこの場から去るのを確認したら、聖心力を再度発動させ、さっきとは逆方向でジグザグに壁キックで降りる。
「じゃあな」
俺はそのまま駐留所を目指して歩いた。
駐留所に着くと俺は他の兵士の人達にアサラさんに用があると伝え、俺は個室に案内され、兵士の方にアサラさんを呼んでいただいた。アサラさんは個室に入るとテーブルを挟んで目の前に座る。
「どうしたんだアキト。俺を呼び出して」
「実は…」
俺は昨日孤児院で起こった事やさっきの事を話すとアサラさんは長めのため息を吐き、身体を前に突き出した。これは耳を貸せと言うのだろう。俺も身体を前に出して耳を傾ける。
「(これから先の事、誰にも言うなよ)」
「(はい。言いません)」
「(よし。…マウンテン商会は王都では黒い噂が絶たない事で有名なんだ)」
「(黒い噂が絶たないのであれば簡単に証拠を掴めるのでは?)」
「(隠し方や揉み消し方が上手いのか今まで決定的な証拠が抑えられていないんだよ。だから王都の騎士団でも手を出せないんだ)」
「(…それを知ってるならアサラさん達も何か対策してるんですか?)」
「(一様足を引っ張れるように周辺の巡回が増えたけれど…。そう簡単に隙を見せないだろう)」
アサラさんは身体を元の位置へと戻し、背凭れに体重を乗せるのを見て俺も姿勢を正す。
「より注意しとこう。路地裏も要注意しておく」
「お願いします」
俺は立ち上がり、アサラさんに一度頭を下げてから個室から出ようとすると誰かが近くを走る音が聞こえ、直ぐに扉を開けるが誰もいない。聞き間違いか?いや、そう思うのは危険だ。もし、今誰かが意図して盗み聞きしていたなら奴等と繋がってるかもしれない。けれど、偶々此処を小走りで通っただけかもしれない。これをアサラさんに伝えるのは止めておこう。
「ん?どうかしたのか?」
「何でもないです。それでは」
俺はもう一回頭を下げ、個室を出てるとそのまま駐留所を後にした。
〜~~
三人称視点
「クソッ!何処にも居ねぇじゃねぇかぁぁぁ!!」
巨漢の男は何時まで経ってもアキトを見付けだす事が出来ずに苛立って壁を勢いよく殴る。それにビクッと男三人が怯え、一人が前に出る。
「た、多分アイツはここに住み慣れてるから隠し通路とか分かってると思うっす」
「なるほどなぁ…。ならテメェら、ここら一帯の地図を作れ。今から」
「い、今からっすか!」
男の反論とも取れる反応にキレた様子で睨む。睨まれた男は小さく「ヒッ」と悲鳴を上げる。
「俺の言う事が聞けねぇのかぁ…?」
「い、いや!そういう訳じゃないっすけど!た、ただ今からだと暗くなって詳細な地図は描けないっす。せめて早朝からとかなら…」
「…それもそうか。なら今日は撤収だ。あ、そうだぁ」
帰ろうとした巨漢の男は何かを思い出したかのように振り返り、男へと近付き、思いっ切り鼻をへし折りながら殴った。
「んがぁはっ!!」
男はそのまま吹き飛ばされ、レンガの壁に打ち付けられる。
「俺はバカだから意見されなければ分からん。だが、俺を批判や反論するのは許さねぇからなぁ」
「は、はいぃ」
男は鼻を折られ、鼻血を出しながら情けない返事をする。巨漢な男はチッと舌打ちしながらグラウスから貰った家へと戻った。




