第九話
キッチンへと入り、料理を作ってると洗濯物を干し終えたミリィが中へと匂いに釣られたかのように入ってくる。
「アキト。何を作ってるの?」
「クズ野菜と鶏ガラを煮込んだスープがあるから、それを出汁にしてピラフにしようかなって」
「ピラフ!うわーー!私の大好物!あ、でも大丈夫なの?結構バター使うでしょ?」
「ああ。結構安くバターを仕入れてな。ピラフにしても余裕がある」
「そうなんだ!そのお蔭でピラフを食べれるなんてラッキーだね!」
ミリィはウキウキといった様子で出汁の様子を見る。出汁は白く濁っており、上手く鳥の旨味が出ているな。さて、ピラフを作ろうかと隣に火を付けようと思った時、既にミリィが火起こしをしており、フライパンもセットされている。
「準備良いな」
「なにせピラフですから!あ、お米人数分取っておくね」
「ああ、ありがとう」
俺はザルで鳥の骨と野菜を取り出して、ゴミ箱の中へと入れる。そして、ピラフ作りを行う。野菜は出来るだけ採れたての物を使う上、出汁は今作ってた物を使い、ベーコンは寄付で貰った物を使う。そしてお米。このお米も寄付された物で、このお米は日本の物と近い。
「前まではパンだけだったから米が食えて幸せだな」
この国…アーグストリア王国は基本的にパン食文化で小麦が主に栽培されている。しかし、最近になり魔物侵攻で滅びそうになった国を王国が救った事で国王に白米を献上し、その味をとても気に入った国王は魔物によって土地から追い出された民を受け入れ、米が作れる土地を与えた。けれどお米の流通は広まっておらず、王都からその領地の道中までしか広まっていない。運良くここはその道程の一つだった。
「ご飯が食べられるお蔭でピラフも作れるしね~♪」
ミリィは上機嫌に鼻歌を歌いながら皿を手渡し、俺は皿を受け取る度にフライパンから調理されたピラフを皿へと載せる。それを見たミリィは唾をゴクンと飲み込む。
「まだ食べるなよ」
「た、食べないよ!」
「心配だからネギを切ってくれ。スープに後入れするから」
「わ、分かった。切ったらスープもよそうから」
「頼む」
生唾を飲む回数が増えてるのは指摘しないでおこう。調理を終えて、まだスープが残っているお鍋に蓋をして、一人前ずつスープンとコップも一緒にお盆へと載せ、持ち上げる。
「それじゃあ食堂に運んでおくから皆呼んできてくれ」
「分かった!」
ミリィは早く食べたいのか流石に走ったりしないが、競歩が如くスタスタと歩いて行く。俺は「全く…しょうがない」と思いながら食堂にお昼ごはんを運んでいく。
人数分置く頃には全員が席につき、残りは俺一人を待つ状態に。皆は今か今かと俺をギラギラとした瞳で見ており、俺は苦笑しながら窓側の奥の席、ミリィの目の前に座る。この孤児院ではシスターの順に年長から奥側から座る。シスターは全員を見渡せるように一番奥でテーブルの端。小さい子がいる場合は年長やシスターが面倒を見るが今では全員が自分で食べられる為、そのルールに従っている。
「それでは皆様…神に祈りを」
シスターがそう言うと全員が目を瞑り、手を前に組む。
「豊かな土地を生み、豊かな草木を恵み、豊かな動物達を育み、我等を創りだした神と全てに感謝を。そして、素晴らしい料理を作ってくれたアキトとミリィにも感謝を…。それでは頂きましょう」
シスターの言葉が合図となり、全員がピラフを掻っ込み始める。全くそれじゃあ直ぐに喉に…。
「う…!み、みず!!」
早速マリオが喉に詰まらせた。マリオはコップを掴んで水で詰まった物を流し込んで、生き返ったとばかりにプハーッと声を上げる。その様子を見たシェフィは呆れたとばかりにため息を吐く。
「そんな急いで食べるからよ!もっとゆっくり食べなさい!」
「だっておいしんだもん!」
マリオが水差しからコップに水を入れながら嬉しい事を言ってくれる。食うピラフがより美味くなる。
「全く…。お兄ちゃんとお姉ちゃんを見習って…」
シェフィの言葉を遮るようにミリィは苦しみだし、水を一気飲みする。シェフィは無言でミリィを見て、マリオへと向き直す。
「お兄ちゃんを見習いなさい」
「は〜い」
マリオが気の無い返事をして直ぐにミリィは立ち上がり、シェフィを見る。
「ちょっと!シェフィ!まるで私が見本にならないみたいじゃない!」
「ならなかったですし。食事中に怒鳴らないで下さい」
シェフィに大人な対応をされ、ミリィは悔しそうに唸るが一息吐いてから席に戻りピラフを再び食べ始め、ムスッとした顔が簡単に笑顔と変わる。俺はあまりにも幸せそうな顔をしているミリィを見て吹き出すように笑い、シスターもフフッと上品に笑う。
「な、何!お兄ちゃんもシスターも!」
焦ってるのかまたミリィのお兄ちゃんが聞けた。やっぱり今、この時間は幸せだな。今日は良い日だ。きっと明日も、明後日も。




