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適性無しの転生者  作者: 福王聖二
第二章
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エピローグ

何時も通りの騒音が窓の外から落ち、暗い景色が雷により明るく見える。窓際に居る女は自身の持つ羊皮紙を見て悲しみが含まれるため息を吐いた。


「作戦は成功。だが、全滅…ね。…やはり、ただ殺られるほど甘くはないわよね。けれど、其々の村に居座ってる騎士の半数を落とし、一つはほぼ壊滅させた。追加はあるでしょうけど。様子見の戦いでの勢いはもうない。そして、私達有利の領域での戦い。……勝てる。いえ、勝つわ。自身の死まで使って作戦を成功させたカマエル様に誓って…」


女は自身の首に掛けてある御守りを握り締め、祈るように手を重ねて瞑目した。暫くの時間、祈りを捧げているとフッと顔を上げ、瞼を開く。


「…そろそろ魔王様との会議の時間だわ。カマエル様から受け継いだ役目。しっかりと熟して見せます」


女は羊皮紙を机に置いてから部屋を出て、長い廊下を歩いているとライオン似の魔物の毛皮をパーカーみたいに羽織っている筋骨隆々な上半身を見付け、下半身は安価な布で作られたズボンを履き、紐で落ちないようにしてるだけ。そんな野生味溢れる姿の男に女は顔を顰めた。


(相も変わらず野蛮ね)


男も女に気付き、嘲笑の表情を浮かべて鼻で笑う。


「そこに居るのは四天王最弱の配下、マルディではないか」

「なっ!?」


それは許されざる侮辱、女は顔を赤くして男の頬を勢い良く叩いた。


「撤回なさい!!カマエル様こそ四天王最高最強です」


男は身体全体に血管を浮かび上がらせて激昂する。


「ああ…!!?バラキエル様こそ最強だろっ!!撤回するのはお前だ!!!」


大型獣が吠えたのか思う程の大声に空間や窓硝子がビリビリと震えるが、女は一切怖気づく事もなく男に反論する。


「だったら何!?バラキエル様はカマエル様みたいに騎士半数を倒す策が浮かぶというの!?」

「はっ!策とか何だとか言ってるから負けるんだよ!バラキエル様なら勇者と一緒に全員全滅させる!」

「そんなの貴方の願望!机上の空論!実際やってないし、何も成してないじゃない!カマエル様は自身の命さえ御使いになられて騎士の半数を殺したのよ!何もしなかった他の四天王とは違うわ!!」

「何だと!?」

「事実でしょ!!」


互いに唸りながら、女は男を射殺さんと目に力が入り、男は女を血走った目で睨む。


「止めなさい」


いつの間にか彼等の間に燕尾服に身を包んだ細見の男がパンッと柏手を打つ。意識が一気にその男へと集まり、二人は驚きのあまり後ろへと下がる。


「互いの主を誇るのも、想うのも構いませんが、喧嘩は良くありません。この手の話は互いの主が最高だと言い合いが止まりません。だから、ここで終わりましょう。良いですね?マルディ。ロジー」

「チッ。分かったよ。陰気女と喋ってもつまんねえだけだしな」

「ええ。私もこんな野蛮な男と喋ってる暇なんて無かったわ」


互いにフンッと顔を背けて其々の向かう場所へと移動した。


「魔王様、マルディです」

『入れ』


女は緊張した面持ちで入室する。


(やはり何度会っても慣れない。この圧倒的な重圧感は)


冷や汗を流しながら領域内を表した地図が広げられているテーブルを挟んで、魔王の前に立つ。その横には三体の四天王が並んでいる。自身が慕う者が居ない現実に悲しくなるが、想いを継いだのだと胸を張って彼等に向き合う。


「では、話せ」

「はい。現在、騎士団と勇者は此方の想定通り…拠点を一つに絞り、城前にある村で戦力を整えています。恐らく、一点突破で城を侵入されると想定出来ます。この作戦はどれほど力を尽くそうが成功する可能性が高い。ですから、最高戦力である魔人は侵入した勇者達を奇襲して、勇者を倒すのは難しいでしょうが、騎士であれば排除可能だと思います。そして、勇者は其々分散させて四天王と配下で各個撃破して頂きます」

「分散させるとは具体的には?」


(来たっ…!)


と、想定した通りの疑問が魔王の口から放たれ、内心引き締める。


「はい。彼等は短期決戦で仕掛ける可能性が高いです。それはカマエル様が自身の命を張った作戦により、騎士の数が減っていますし、カマエル様による襲撃と魔人達を使った急襲で四天王や魔人が何時、何処で襲撃に遭うか分からない。であれば自分達から攻勢を仕掛ける。戦力が削られている状態で長期戦は望まない筈。ですから勇者は魔王様を真っ先に狙うと考えられます。ですので、皆さんには敢えて上に逃がして欲しいのです」

「なるほど…。分かった。では、その様に進めよう。異議はないな」

「「「はい」」」

「うむ。マルディ。ご苦労だった。下がれ」

「はい…!」


マルディは退室すると横の壁に背中から凭れ掛かる。一気に重圧から解放された事で力が抜けた。


(上手くいった。作戦が納得して貰えた。けど…この作戦は出撃される前にカマエル様が私に託したもの。決して自分の功績ではない)

「頑張りますよ。カマエル様…。必ず、貴方の仇を討ちますから」


彼女は再び胸元の御守りを強く握った。


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