第四十八話
明人視点
近付く俺に気付いた第六の団長が目線を俺へと合わせる。
「第一のアキトか」
「はい。ゼキア第六騎士団長」
「で、全てが終わった後に救援……て訳でも無さそうだな。少な過ぎる」
「はい。救援ではなく調査の為に参りました」
俺の言葉を聞いたゼキア第六騎士団長は髪を乱暴に掻き、大きく舌打ちをした。
「クソッ!最悪の予想が当たった形か…!」
「と、言いますと」
「…全団に人型の魔物の強襲されたんだろ」
「……少なくとも我々もそう考えており、他の騎士団にも調査の為に人が向かっています」
「流石だな。第一は無傷か」
と、言ってゼキア第六騎士団長は下を向く。
「やっぱ……油断してたな。あ〜…クソッ。不甲斐ねぇ。敵は二匹。油断せずにキチンと対応していれば半数も死ななかっただろうな」
「それは違います!!」
俺達はその声の人物へと振り向く。声の人物である若手の騎士は左腕を失っており、その上に包帯がぐるぐると巻かれている。右腕の騎士はズカズカとゼキア第六騎士団長の前へと歩み出る。
「ゼキア団長は俺達を庇い、戦線を作り出し、二体の魔物を倒しました…!代わりに片眼を失ってしまいましたが…。俺達が生きて居られるのは間違いなく団長のお蔭です!」
「ジェル…」
ゼキア第六騎士団長は涙を滲ませるが直ぐに裾で拭って、快活に笑う。
「そうだな…!先ずは自分達が生きてる事を喜ぼう!死者を尊ぶのは後だ!元気になって最後の時まで戦ってくれた英雄達を讃えるぞ!」
ゼキア第六騎士団長が腕を天に衝き上げると、他の団員も拳を空へと突き上げる。
『『『『『はい!!』』』』
団員達は勢い良く返事をして一気に場を明るくし、一致団結の空気を作った。やはり、ゼキア第六騎士団長は団員達に凄い慕われている。その要因も良く分かるな。
「ゼキア第六騎士団長」
「ん。何だ?」
「魔物達が居ないのを確認したので、次の村へと向かいます」
「そうか。行ってこい」
「はい。失礼します」
俺達はゼキア第六騎士団長に頭を下げてから第六の村から足早に去った。第六の村を出て一分、村に入ってから一言も喋っていなかった飛鳥は急に立ち止まり、俺も飛鳥の少し前で止まる。
「どうした飛鳥?」
「…ねぇ、明人」
「何だ?」
「……別に人が死ぬ世界だって分かっていた。私だって魔物を殺していたし。でも、死体の姿を見て改めて思った。こんな簡単に人が死ぬんだって。砦での戦いの時だって死人が出たのは知ってるし、遠目だけど人が殺されたのだって見てる。それにカマエルの時だって死人が出てるし、今更かと思うと思うけど…。痛感した」
そう言う飛鳥の手は微かに震えている。
「私達は殺し合いを……戦争をしているんだ。…別に痛感したからとか、思い知ったとしても私は戦う事を……辞めない。大切な者を守りたいから。覚悟は決めてたつもりだけど…。ちゃんと誓いたい」
強く風が吹く。森がざわめく。陽と影が揺れる。飛鳥の長い黒髪が靡く。
「私は明人、葵ちゃん、玲子、恵那、樋口君、ヒューリさん、エリストさん、ミカエルさん。この人達を一人も欠けずに守り、戦う。絶対に皆で生きて帰る」
「飛鳥…」
「だから、力を貸して…明人」
「ああ、勿論だ」
飛鳥が拳を突き出すので、俺はその拳に拳を合わせた。すると、飛鳥はニコッと笑う。
「じゃあ明人♪全力循環を教えて♪」
「それは駄目」
「何で!樋口君には教えてるんでしょ!」
「大和は能力上問題ないけど…、全力循環はマジで痛いから駄目だって説明したろ!」
「何!?私が弱いまま死ねって言うの!?」
「前も言ったろって!大事にしてるから教えたくないんだって!」
「私だって明人が大事なの!!守る為にもっと強くなりたいの!!何度言えば分かるの!!?」
フンッと鼻を鳴らして怒る。俺の為に強くなりたくて怒ってるのは正直嬉しいがこれは教えたくない。
「ほら、さっさと行くぞ。最初の村に」
「…戻ったら絶対に教えて貰うから」
俺達は最初の村へと黙々と目指し、到着したが損傷や怪我人は居らず、船への連絡役の騎士数名と村長の所にも訪ねたが特に敵襲や変わった様子はなかったと言う。…けど、どうにもこの村長は信用が出来ないんだよな。後で清水さんに村長の元へと訪ねるよう言っておこう。
「何にも変化は無さそうだし、戻ろう」
「そうだね。…変な人達も居るし」
飛鳥の変な人とは俺に言い寄る人達だろう。
「じゃあ、戻ろう」
「うん」
俺達は最初の村から第一騎士団が居る村へと即時帰還した。




