第四十六話
明人視点
「何だ!?」
何かが高速で落下した衝撃で舞い上がった土煙で相対する相羅達の姿が見えなくなる。だが、何か居るのは分かる。…っ!影が動いた!ヤバい!
「エリスト!!防げ!!」
エリストは俺の指示の意味を問う事なく瞬時に木剣を盾にし、何かがエリストの木剣を殴って叩き折り、エリストを容易く突き飛ばした。だが、エリストは両足で地面に着地し、踏ん張り続けるが勢いに押されて土を削った。
「あれ…?かっしいな?仕留めたと思ったけど…。お前、勇者か?」
土煙の中から現れたのは紫色の肌をした黒髪の長身の男性はエリストに獣が獲物を見付けたような鋭い瞳を向ける。
「勇者は僕だ!」
「うん…?」
グルッと上半身を相羅の方へと向けるが、興味が無くなったのか身体の向きが此方へと戻る。
「冗談はよしとけ。反応がクソ鈍いぞ」
「なっ!」
「舐めるな!!」
いつの間にか大剣を手に持っていた田中が回転しながら遠心力と聖心力で上乗せした一撃が長身の男へと迫るが、長身の男の背後に幾何学模様が空中で円として完成し、大きな火の玉が生まれる。
「デカッ!けど!!」
聖心力は魔法を切断、抹消する。何の躊躇もなく大剣を振り抜く直前に長身の男が背後へと振り返る。まさか!
「田中!!横に躱せ!!」
「必要ねぇ!!火の玉ごとぶった斬る!!」
田中は大型の火球を宣言通りぶった斬って消失する。が、火球は単なる目眩まし。本命は奴自身の拳。その拳は田中の腹部を貫き通そうと貫き手へと変えて突き刺そうとした時、俺は既に地面を踏み抜いて男の頭を蹴りで地面に叩きつけた。
「ガッ!」
「あ!俺の手柄!」
「そんな事言ってる場合じゃねえ!!まだ居るぞ!!」
俺は男が気絶したかどうかは後回しにして相羅を押し倒して、腕輪にしていた神剣を盾にして音速の鉄が激突し、上へと跳ね飛ばす。
「そいつは早くトドメを刺せ!俺は森の中に居る奴を追う!」
俺は返事を聞かずにスナイパーの如く此方を狙い、逃げた者の後を追跡し、その背中を捉える。
「待てっ!」
スナイパーは掌から鉄の礫を高速で放たれるが盾で払い、背後へと追い付いて盾から剣へと変えて首を跳ねた。
「…此奴も肌が紫。…完全に身体は人間に酷似している」
これは女性型だな。…完全人型の魔物か。
「戻るか。どうも嫌な感じがしてきた」
なんとなく村が滅んだ時みたいな嫌な空気を感じ、踵を返そうとした時にシュワッと何かが蒸発したような音が聞こえて振り返ると浄化されたみたいに粒子となって天へと昇って消えた。
「は…?何で魔物も?…もしかして天神力で斬ったからか?」
俺は魔物が浄化した現象に疑問を覚えるが、その疑問は一旦置いておき直ぐ村へと戻る。村には既に人型の魔物の姿はなかった。さっき見たいに浄化で消え去ったんだろう。この人型は俺の力による物ではなくとも人型は倒されると粒子となって消える。
俺とエリストはあの人型の魔物と戦った二人の為、会議室に使われてるテントへと呼ばれた。
「それで…実際に戦ったエリストとアキト。実力はどうだった?」
「はい。個人的にはかなり強かったです。四天王よりは脅威度は低いですが、個人の戦闘能力はかなり高く……どれほどの強さかと思考した所、勇者様程の実力であると結論付けしました」
団長の質問にエリストは詰まる事もなく、自分で出した結論を伝えると全員がざわめき始める。
「そ、そんなものが魔物の中に居るのか!」
「勇者様と同等なら勇者様にお任せするしかないだろう!」
「皆様!落ち着いて下さい!冷静になって対処すれば問題ありませんよ!」
「女性部隊の団長は黙っとれ!所詮は第一のおまけなのだから!」
「はぁ!?男とか女とか関係ないですよね!!」
女性部隊の団長と第一のおっさんの騎士が取っ組み合いの喧嘩にまで発展しそうな時、バキンと団長がテーブルを手刀で真っ二つに割った。
「取り敢えず。落ち着こう」
「「は、はい…」」
二人はしゅんっと落ち込んで冷静になった。
「それでアキトは?」
「俺は魔法の発動速度と精密性がかなり脅威ですね。それに魔法を目眩ましに使える知能も、勇者並の身体能力は普通の騎士では太刀打ち出来ないでしょう。せめて大型の魔物を戦う事を想定する位でもしないと」
「それほどか。本格的に対策を考えないといけな…」
「会談中申し訳ありません!至急団長にお伝えしたい事が!」
団長の言葉を遮ってテントの中に一人の騎士が入ってくる。
「手短に」
「はい!第三騎士団が謎の人型の魔物に強襲されました!」
嫌な予感が的中した。




