第四十五話
明人視点
ビシッと若干遠くから俺を指差した。…あれ…この感じは既視感がある。あ〜…確か魔界に渡る前に突っかかって来たよな。あれから何の接触も無かったから忘れたけど。
清水さんが自身の昼飯が載ったお盆を座ってた場所に置いて、俺が忘れてた騎士に近付いて、呆れた表情を騎士に向ける。
「貴方ねぇ…。前も言ったでしょ?実力だけで選んだ訳じゃないと」
「俺は田中陽希だ!玲子さん!」
田中陽希…。あ〜同じクラスメイトの。田中も騎士の中に居たんだ。面影は……良く見たらあるな。清水さんの反応は……別に驚いていなかった。
「別に、気付いてわよ?」
「へ?」
「そうね…。あと他には三野正樹君、江草葉大君、山代徹人君、女性は水上京香さん、加護沙苗さん、屋柄灯里さんが居るわよ」
「「「「「「「え!?」」」」」」」
呼ばれたメンバーと田中が驚きの声を上げた。彼等が転生者であると気付くと勇者達は友人である者達の元へとはしゃぐように近寄る。
何で黙ってたのか。私くらいには言ってよとか。また会えて良かったとか。色んな話し声が聞こえるが、皆は涙を浮かべて再開を喜んだ。
「ま、待て!玲子さん!」
「玲子呼び止めて貰える?」
「え…?」
「親しい人以外に名前呼びは認めてないし。純粋に嫌よ」
「わ、分かった。けど、やっぱり実力が無い奴に護衛騎士をされるのは我慢ならない!そいつなんかより俺の方が強い筈だ!」
田中が断言した瞬間、清水さんから信じられない程に地の底から響くような声。
「はぁ?」
身体が察した。これは不味いと。憤怒が含まれた「はぁ?」には全てを圧倒するかの如く、閻魔の審判に直面したら同じであろう圧迫感と緊張感を感じ、周囲の視線は清水さんへと集中する。
「実力も、人柄も、容姿も、知能も、気遣いも、貴方程度にエリストが負ける訳…ないでしょ……!」
奥底から湧き出る怒りは抑えつけられる事なく標的に向けられる。
「…良いわ。エリスト…戦って、コテンパンのボコボコにして上げて」
「コテ…ン?…ボコ、ボコ?わ、分かりました」
「此方だ!付いてこい!アキト!お前もだ!」
「え〜…」
俺も仕方なく田中の後を追い、まだ畑になっていない、大きな円が描かれてる場所に到着する。
「ケット!」
「あいよ!ハルキ!」
ケットと呼ばれた騎士から投げられる木剣を田中は受け取り、エリストも自身に投げられた木剣を見ないで受け取る。その様を見た一部女性達から黄色い声が上がる。
「チッ!今に見てろ。全員にお前の無様な姿を晒してやる」
エリストは変な奴に絡まれたなぁ。…そういえば俺の周りで厄介事が、特に男女関係で揉めるな。そう考えていると俺は無意識に自身へと迫る何かを掴み取った。
「お前もだ!お前の化けの皮を剥がしてやる!」
そうだった。大抵俺も巻き込まれるんだ。気乗りしないなと思いながら前へと出る。
「二対ニ!俺と…」
「待った!ケット君の代わりに僕が戦うよ」
とか言って出て来たのは相羅だった。またお前か。事態を面倒な方向へと運ぶなよ…。
「光輝…」
「陽希、俺も戦うよ。主人公は唯一人で良いからね」
「…ああ。頼んだ親友」
「勿論だよ」
二人は拳を合わせて笑う。
「勇者様!」
ケットから木剣を受け取って頷いた。
「勝つよ」
「はい!信じてます!」
じゃねぇよ!何だよこの茶番は!よくある戦い最中の友情シーンかよ!
「まぁ、良いや。エリストはハルキ。俺は勇者様をやるよ」
「分かった。…コテンパン、ボコボコにするとの御命令だしな…。……コテンパンとボコボコって何?」
「相手を一方的に攻めて、戦意を失わせる事だよ」
「なるほどな。じゃあ、アキトもコテンパンのボコボコにしてこい」
「ああ」
俺達は互いの相手を捉えて構える。
「ルールを説明する!円から出たら負け!反則は無し!以上!」
ケットがかなり単純なルールを発表された。分かりやすくて嫌いじゃない。
「では、始め!!」
合図と同時に両者の間にもの凄い勢いで何かが落ちた。




