第四十四話
飛鳥視点
「では、これより次の村を目指し進行する!続け!」
『『『『『はい!!』』』』』
私達は次の村を目指して出立した。次の村からは解放してもその村の作物が育つ時間は待たない。一ヶ月毎に村々を転々とし、二ヶ月毎に新たな人員が招かれる。そうして、人の領域を増やしていく作戦が始まる。次の村や他の村は村長から場所を聞き出しており、道も一年の間に騎士達が調べ上げて把握してる。勇者と護衛騎士達は相変わらずの高待遇で、わざわざ馬車と馬を寄越し、私達はその馬車の中でぬくぬくと移動する。
「良いのかなぁ」
歩いて行軍している騎士達を見てると自然にそんな言葉が出てくる。
「何を言ってるの飛鳥。私達は彼等と違って行軍の訓練をして無いでしょ?私達が同じように行軍した所でスタミナ切れになって役立たずになるだけよ。だったら、万全の状態で疲れてる騎士達の代わりに戦えば良いの。事実、勇者達は魔物との戦争において、かなりの戦績があるわ。だから、堂々としてれば良いのよ」
「そっか…。そうだね。頑張れば良いんだよね」
と、意気込んだは良いものの、村からは既に魔物達が撤退しており、もしやと思った騎士団の人達はバラけて各々情報で得た他五つの村へと向かうと、既に魔王軍の支配から解放されていた。その時期は全てカマエルと戦う前に解放されていたと云う話だ。魔物達に動きを悟らせない為、道だけを確認し、村の様子を確認しなかったから起きた事だった。魔王軍と戦おうと意気込んだ皆は完全に肩透かしを食った形となった。
予定外の村の数により停滞を余儀なくされ、行軍の再開は二ヶ月後と延期された。しかし、予定より早く魔王城への進行が出来そうだと騎士の人達は喜んでいた。だが、玲子は素直に喜んでおらず、カマエルの時みたいに一気に襲われる可能性が大きくなる事を恐れているらしい。村は其々の騎士団が管理する事になり、一つの村に一つの騎士団が駐屯する事となった。
私達勇者は解放した村の中で唯一大きな屋敷がある最前線の村で第一騎士団と共に二ヶ月の間は土を耕し、釣った魚の食べなかった部分を肥料にして地面へとバラ撒いた。勿論、戦闘訓練も行うが、私達のパーティーは明人対全員という構図となる。神剣を手に入れてから、特にここ最近の明人は信じられなく強くなって、全員で本気で掛かっても汗を額に滲ませる程度で、息を荒らげさせる事が出来なくなった。玲子は更に第一騎士団の人達と共に連日、議論を重ねている。
それとは関係ないのだけど、最近思う事がある。それは明人が明後日で二十歳を迎えるという事だ。そして、それは私が今年二十歳になる事を意味している。つまり、私達は二十歳になっても学校の制服を着ているコスプレ女と云う事だ。
勇者達全員が制服コスプレなんてどんな羞恥プレイ。その点、明人は羨ましい。騎士の制服があるし、本当に騎士だし。…そういえば転生したクラスメイトは明人以外知らない。明人以外の皆は戦わない事を選んだのかな?悩みながら鍬を地面に突き刺して土を掘り返す。
「お〜い!皆!炊き出し出来たから作業を中断しろ〜!」
『『『『『は〜い』』』』』
騎士の人達はこの畑を耕す生活に慣れ、全体的に気がかなり緩んでいる。訓練となれば凛々しい姿へと変わるけど。
「それにしても………明人、凄い…」
一人で騎士百人分の仕事を熟しており、耕された土は明らかに柔らかくて地面も潤っている。私はいつも通り明人に近付こうとする前に沢山の女性が明人へと迫る。
明人に言い寄る女性がドンドン増えている。私達があんなにイチャイチャを見せ付けてるのに意にも介さず口説こうとする。なんだったら私の目の前で誘惑するし、二番目でも良いと言って来る。全ての村が男性が乏しい状態だからしょうがないとは思いつつ、誰にも上げるつもりは無い。私は強引に女性の群れを掻い潜り、明人と一緒に脱出した。
「明人!一緒に食べよ!」
私は彼女達が追いつけない速度でその場を離れ、炊き出しへと向かった。
炊き出しには多くの人が並んでおり、貰った皆は長椅子に座り、美味しそうにのんびりと食事をしている。こういう時間がゆっくりと過ぎる生活は案外悪くない。
「……っもう我慢ならん!!」
そんな空間に似つかわしくない声が聞こえ、声の正体を探ると若い騎士の人が立ち上がっておぼんを落とし、ご飯が地面に転がる。
「お、おいおい。急にどうしたんだよ、ハルキ。落ち着けって…」
隣に居た同年代であろう騎士が若い騎士を宥めようとするが、キッと睨まれる。
「落ち着いてられるか!!なんで騎士の俺達が農家みたいな事をしなければいけないんだ!!」
「んな事を言っても仕方ないだろ。食料の問題は解決しなければいけない事だろ?」
「俺達は魔物を倒すのが仕事だろ!作物を作る事じゃねぇ!!」
「そうだけどよ。人手が足りて無いんだから文句言うなよ。それに明日まで我慢すれば休みとなるし、五日後には出立するんだから騎士としての本分も勤められるだろ?」
「そういう問題じゃないんだよ!!」
「じゃあ、どういう問題なんだよ…」
宥めてる騎士も徐々に苛立ちが見え始め、ぶっきらぼうに彼へと問う。
「俺は戦果を上げて英雄となり、護衛騎士となる!だから俺は戦わなければ!強さを示さなければいけないんだ!」
護衛騎士か…。つまり勇者に認められたいんだ。確かに護衛騎士はかなりの高待遇だから目指すのも仕方ないか。私は明人以外興味ないから関係ないけど。
「でも、戦えないなら自分から挑むしかない!!エリスト!!」
「ん!?」
玲子と一緒に食べてたエリストさんは急な指名にご飯を喉に詰まらせて、玲子から貰った水と一緒に飲み込む。
「そして、アキト!!」
え!?
「え?俺」
「そうだ!調子に乗ってるお前等を倒して、俺が護衛騎士となる!!」




