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ノラ・キャット その世の賞金稼ぎ  作者: 白銀悠一


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3/6

仕事と報酬

 夜空の下でも、昼間と同じくらいよく見える。

 一台の馬車が、荒れ果てた土地を進んでいる。歪んだ枯れ木と道端に転がる骸骨が、不気味な雰囲気を演出していた。

 

 ホラー耐性がない人間なら、既に恐慌状態に陥っていてもおかしくはない。

 しかし、静花は平気だ。

 壊れているから、恐怖という感情が機能していない。

 御者のいない馬車が勝手に進んでいても、そういうものだと受け入れられる。


「おい、聞いてるのか?」

「聞いてるよ」

「反応が薄いんだよ」

「それは私に求めすぎだよ」


 ノラには壊れていることを説明した。慣れてもらう他ない。

 リアクションの代わりに、先程の説明を復唱する。


「ここは、この世でもあの世でもない中途半端な場所。でしょ?」

「そうだ。中間地点さ。構造が不安定で、生者も死者もごちゃ混ぜになる……らしいぜ」

「ノラもちゃんと理解してるわけじゃないんだね」


 ノラは不機嫌そうに鼻を鳴らした。


「なら聞くが。お前は世界のことを全部説明できんのか?」

「惑星とか国の名前なら言えるけど」

「なんでそっちは生者だらけなんだ?」

「わからない」

「だろ? こんなもんはざっとわかりゃあいいのさ」


 ノラの説明はざっくりだが、生活する上では大丈夫そうだ。

 以前ならしつこく聞いたかもしれないが、今は最低限度の説明でも満足できる。厳密には不満を抱けないので、問題はなかった。

 そうこうしているうちに、建造物らしきものがちらほらと見えてくる。


「……街?」

「そうだ。ついたぜ」


 荒野の真ん中に、突如として街が出現していた。

 都会のように建物がひしめき合ってはいない。どちらかというと、寂しげに身を寄せ合っているような感じだ。

 街という機能を保持するための、必要最低限の建物が密集しているという感じ。

 

 馬車を降りた静花は、ノラの後ろをついていく。

 人とすれ違う。

 その容姿は、人という常識を覆すものだった。


「……妖怪?」


 雀の顔をした男が、当たり前のように歩いている。

 ちらほらと目につく人のほとんどが動物の顔を持つ人だった。

 

 ノラのように、人が猫のふりをしている形ではない。

 動物が人のふりをしている……ような。

 他には、妖怪や怪物のような見た目の生物もいる。

 

 死者と生者が入り混じる中途半端な場所。

 にしては、死者や怪異の類が多いように感じる。


「確かに適性、あるかもな。泣き言一つ言いやしないし、驚くことすらしない」

「驚いてるつもりだよ、これでも。物語の中でしか見たことないような人たちばかりだもの」

 

 静花が見たもの、聞いたもの。そのどちらをこの世の誰かに説明しても、笑い飛ばされるだけだろう。

 いや、きっと真面目に心配される。とうとう幻覚を見るようになったのかと。


「まずは……弾か」


 ノラが迷いなく向かったのは、銃砲店だった。

 こじんまりとした店だ。押戸を開けて入ると、狐人が意地の悪そうな笑みを浮かべた。


「おや、賞金稼ぎ。いらっしゃい。珍しい連れだね」

「賞金稼ぎ……?」


 またの名をバウンティハンター。西部劇でよく主人公が行う生業だ。

 ノラの服装は西部劇っぽいと思っていたが、その職業も実にらしい。


「生身の人間はレアだよ。なんたって息をしている……」


 狐が値踏みするような視線を注いでくる。それを静花は平然と受け止める。


「そして肝も座っているね。普通は失禁だったり嘔吐だったりするところだが」

「ごちゃごちゃ言ってねえで弾を寄越せ」


 ノラに促されて、店主が棚から二つばかり緑色の箱を取った。

 箱の中身は筒状の弾(ショットシェル)だった。


「ソウルバレットの12ゲージ。凶悪だな。こんなものを食らったらひとたまりもない。これと君が持つ素敵な銃と組み合わされば、怪物だって殺せるだろう。彼女のような可憐なカラダに命中したら、おぞましいことになるだろうな」


 標的を美しく殺すライフルとは対照的にショットガンは残酷の極みだ。銃社会であるアメリカでは、警察官のポンプアクション音が聞こえたら、犯罪者が戦意を喪失する――なんて話もあるとかないとか。

 

 人体にはオーバーキルと言って差し支えない武器を、ノラは愛用している。

 その理由と思しき存在は、自分を食べようとしてきた。納得の装備だ。 


「方針を変えたのかな。なにせ、あのサムライ・ドッグですら諦めるような相手だ」

「いちいち詮索してくるな」


 ノラは箱を回収しようとする。と、手で制された。


「おっと。支払いが先だ」


 舌打ちと共に出されたのは、白い紙幣だった。

 しかし、普通の紙とは違うように感じる。何かが宿っている。

 そのせいで、紙色が白く見えるのだ。


「10000命は高すぎる」

「破格だよ。この辺りではね」

(みょう)……?」

「ここで一番価値があるのは命、ということだよ。魂とも言う」


 狐顔の男の表情がギラついて見えた。

 どうやら自分は、狩場に迷い込んだ哀れな兎であるらしい。

 その視線を遮断するように、ノラが静花の前に立つ。


「拳銃あるか? 状態がいい奴」



 

 次にノラが向かったのは、立て札がある場所だ。そこに至るまでの道中も、好機の視線に晒された。いや好奇心であればかなり良心的だ。

 大抵は狩人の眼差し。獲物に飢えたハンターの瞳は、その同行者を見て色を失っていた。


「有名人……なの?」

「知ったことじゃねえ」


 ノラは衆目に晒されても気にする様子はない。静花のように壊れて感じられないわけではなく、感じた上で無視している。

 かなり胆力のある女性だ。賞金稼ぎというものは、それくらいでないとやっていけないのかもしれない。


「どうするの?」

「金を使っちまったからな。稼がないと」


 ノラは掲示されている人相を見比べて、鼠女のポスターを剥がした。

 踵を返して進んでいく。当てがあるようだ。


「賞金を……稼ぐの?」

「賞金稼ぎについて知ってるか?」

「映画の知識、ぐらいだけど」

「それなら上出来だ。基本的には変わらない」


 ノラは標的の居場所がわかっているかのようにぐんぐん進む。


「知り合いなの?」

「いや。初めて会うヤツだ」

「じゃあなんで」

「匂うんだよ」


 ノラは剥がしたポスターを、静花の顔に突き出してきた。

 匂いを嗅いでみる。……紙とインクの匂いしかしない。


「わからないよ」

「人間の鼻ってのはバカで困る」


 猫の嗅覚は、犬ほどではないにしろ、人よりも優れていると聞いたことがあった。

 ポスターを受け取って、中身を読んでみる。

 

 セミルと名乗っている鼠人で、4000命の賞金首。

 罪状は金銭の窃盗。

 生死を問わず。


「窃盗でも、殺すんだ」

「贅沢な死に方だぜ。こいつにはもったいない」

「贅沢……」

「ちゃんと理由があるだけ、な」


 到着したのは今にも崩れそうなボロ屋だった。


「出て来い」


 確信するノラの呼びかけに、すぐに反応があった。

 しかし現れた人物は、小さな鼠の子どもだった。


「お母さんをいじめないで」


 泣きながら訴える子鼠人。

 ノラは中腰になって、子どもに目線を合わせた。大人が優しく子どもに語り掛けるように。

 

 そして、脈略もなくハンドガンを引き抜くと、その眉間に銃口を当てた。

 M1911――開発から100年経っても愛用する人が絶えない拳銃を。


「いくらだ?」

「え?」

「いくらで雇われた。今ここで頭を吹き飛ばされるのに見合う額か?」

「……どうして、わかったの?」

「匂うんだよ。嘘つきってのは」

「……見逃してくれる?」

「誰がテメエみてえな奴に弾なんか使うかよ。さっさといなくなれ。俺の気が変わる前にな」

「わかったよ」


 子どもが走り去っていく。

 その姿を見送ったノラは、いきなり横に飛んだ。

 銃弾が先程までいた場所に迸ってくる。ノラは静花の腕を掴むと走り出した。


「チッ、クソネズミが!」

「あんただろう、噂のノラ・キャット! 最近調子に乗ってる賞金稼ぎってのは!」


 ボロ屋を弾丸が貫通してくる。相手はこちらを殺す気満々だ。

 ノラは拳銃で反撃した。が、三発ほど撃ち込んだところで、異音を拳銃が放った。


「あの詐欺師め! 不良品を売りつけやがって!」


 どうやら内部パーツが破損して射撃不能になったらしい。遠くへ拳銃を投げ捨てると、左腰から散弾銃を引き抜いた。


「最初からこうすりゃよかったぜ」


 ノラは静花の身を屈めさせる。敵の銃撃精度は高くない。

 ボロボロの壁によって互いを捉えられていないのだ。

 いくら散弾であると言っても、標的の場所がわからなければ無駄撃ちは避けられない。

 ノラはにやりとほくそ笑んで、


「そのボロ屋がお前の棺桶さ」


 ボロ屋の一角を狙って撃った。

 不安定なボロ屋が、支柱の一つを失えばどうなるか。

 何かが折れるような音がして、家主を守ってくれるはずの家屋が牙をむく。

 ぎゃあ、という悲鳴。ボロ屋が倒壊した。


「く、くそ! くそが!!」


 下敷きになった鼠女は、崩れた壁から顔を覗かせた。

 柱か何かに身体が挟まって動けないようだ。


「ようやく会えたなクソネズミ」

「ネコ野郎が! あたしを殺そうなんて千年早いんだよ! あたしは五百年生きてんだぞ! それを新参者のお前が――」


 カシャン、と音がして排莢、装填された。

 ノラは鼠女の顔面に銃口を向ける。


「あの世でもまた、殺してやるよ」

「ち、チクショウ――!!」


 銃声が轟いて、血潮が宙を舞った。





「その小瓶に魂が入ってるの?」

「そうだ」


 情報屋の店で、ノラが静花に小瓶を渡す。中身は白い光だった。

 命という紙幣と同じ光。

 その世において、もっとも価値があるもの。


「用途は様々だ。通貨に弾丸。そして、食材」

「食材……」


 説明をしてくれた白い犬顔の主人は、静花に手を差し出した。

 静花が小瓶を手渡そうとすると、ノラが銃に触れる。


「落ち着け。取って食ったりはせん」

「大丈夫だと思うよ」


 主人の雰囲気は銃砲店の店主とはまるで違う。柔和で穏やか。

 もしこれが偽りだったとしたら、相当練度の高い詐欺師だ。

 騙されない方が難しい。


「肝が据わってるな。これなら発狂せずに、この世へ帰れるだろう」

「私も死ねば、そうなるんですか?」

「死なねえぜ。俺が傍にいる限りはな」


 強気なノラを一瞥して、情報屋は瓶の中身を確認する。


「眷属と交戦したようだな」

「耳が早いな、ジジイ。いつもは使えないくせに」

「奴が特別なだけだ。普通の標的ならもっと素早く、確実に見つかる。口惜しいことに、痕跡は辿れなかった。お前さんと同じように」

「だろうな。期待しちゃいねえよ」

「トツカミ……」


 姉について何かを知っている存在を、静花は何も知らない。


「トツカミについて聞きたいようだな」

「……わかりますか」

「顔に書いてある。だが、期待に応えることはできない。わかっているのは変幻自在で、何にでもなれるということ。そして眷属を従える。それと、美しい魂を求めてる。お嬢さんのような、ね」

「私って、美味しいのかな」

「ただでさえ人間は美味だと聞く。私は食べたことはないし、食べようと考えたこともない。かつての主がとてもよくしてくれたのでね。しかしここにいる者たちには、魅力的に映る。人間的に言い表すなら……そうさな、数億円が道端にポンと落ちているようなものだな。おまけに、拾っても法律的に問題はないときた」

「なんか、笑えますね」


 札束目掛けて群がる大勢の人たちを想像する。しかし実際に争奪戦に巻き込まれたら、笑えないだろう。

 いや、元々笑えないのだった。


「なんにせよ、あのサムライ・ドッグが追跡を断念した化け物だ。駆け出しであるノラが詳しい方が変なのだが。誰に入れ知恵された?」

「詮索はするな。で、いくらだよ」

「いつもなら、半額だがな」


 ちらり、と老人は静花を見て、


「取り分は少しでいい。ほれ、3500命だ」

「随分気前がいいんだな」

「調査協力してもらったからな。彼女に」

 

 老人は温和な笑みを浮かべている。

 満足気なノラに従って、静花は店を後にした。





「これで今日明日の生活費は大丈夫だ。さて」


 街はずれの人気のない場所で、ノラが振り返ってくる。

 じっと吟味するように静花を見てきた。


「今度はお前が俺に払う報酬の話だ」

「……どういうこと?」

「言葉通りの意味さ」


 言葉の意味は理解できている。

 その上で、意味がわからないから聞いているのだ。


「私は餌じゃなかったの」

「確かにお前は奴を誘き出すための餌だ。だがな、見合わないんだよ。それだけじゃな」 

「それは……確かに」


 そう言われると納得してしまう。ノラは静花の身を守る必要がある。

 静花はどうやらここでは人気者のようだ。トツカミがすんなりと出てくればお役御免だが、そううまく行くとは思えない。

 

 つまり本命が現れるまでの間、静花を狙う敵ともノラは戦わなければならないのだ。

 餌としての鮮度を保つために。

 その労力の対価に、餌役という役割だけでは割に合わないのだろう。


「タダ働きは良くないからな。いろいろと」


 静花としても、ノラに無償奉仕を求めてはいない。

 しかし報酬として払えるものなど持ち合わせてはいなかった。

 着の身着のままの状態であるし。


「でも、何も払えないよ?」

「あるだろ」


 ノラはすっと、静花へ指をさす。

 胸の当たり――その奥にある心臓を。

 ああそっか、と合点がいった。


「私の、魂だね」

「あ? 何言ってやがるんだ?」

「え?」


 心外そうな顔をするノラ。

 彼女は呆れて、肩を竦めた。


「釣り餌を食べる釣り人がどこにいるんだよ」

「それは、そうだね。でも、じゃあ……」

「私がお前に求めてるのは、その身体だ」

「……カラダ?」

「そうだ。ソレを触らせろ」


 一拍置いて、理解する。

 ノラが欲しがっているであろう膨らみへ手を当てた。


「胸の、こと……?」

「そうだ。さっきからその話しかしてないぜ」


 ちらりと、自らの胸元を確認する。

 友達曰く、静花の胸は程よい大きさらしい。

 小さすぎず、大きすぎない。ちょうど中間の美しいカタチである、と。

 セーラー服の上からでも、その質量を見て取ることができる。


「おっぱいを、触りたいの?」

「何度も言わせるなよ」


 ノラはさも当然とばかりの態度だ。

 現状では、静花に払える報酬と言えば、その身一つ。

 その世においてもっとも価値があると言っていた魂でないとすると、身体で払うのは実に合理的とは言える。

 

 そして、好都合なことに静花の感情は破損中。

 正常であれば拒絶したであろう事柄でも、機械のように実行できる。

 だから、戸惑うことなく二つ返事しようとして、言葉に詰まった。


「……」

「どうした? さっさと――」

「……やだ」

「あ? どうしてだよ。減るもんじゃないだろ」

「お姉ちゃんならきっと、反対するから」


 静音なら怒る。どんな緊急事態だったとしても。

 どれだけ正当な理由があろうとも、間違いなく止めるし。

 そんな条件を繰り出した相手を糾弾し、必要に応じて戦うだろう。

 

 そういう人だ。

 妹想いの、大好きなお姉ちゃんだ。


「……」


 今度はノラが逡巡していた。言葉を探すように押し黙り、


「それでも、ダメだ。割に合わない」


 ノラの主張は真っ当だとは思う。ゆえに代替案を提案する。


「例えば、私がお金を稼ぐとか」

「どうやって?」

「バイト、とか……?」

「お前を雇ってくれる店があるのか? その世に」


 自分を狙う狩人だらけの街で、安全に、快く仕事をさせてくれる場所。

 そんな都合のいい働き先は、見つかる気がしなかった。


「それにな、俺はお前を帰還させる方法も探さなきゃならない」

「そこまで求めては……」 

「姉を見つけた後で、仲良く食われるのが望みか?」

「それは……」


 当然、無事に帰れるのが望ましい。

 しかしそれは高望みのような気がしている。

 ノラにそこまで求めるのは悪い。

 

 最悪、自分は食われてもいいのだ。

 姉さえ助け出せるのなら……。


「さっきお前は言ったよな。姉は反対すると。妹を大切に想っているから、ってところか」

「そう、だけど」

「なんとなくだが、お前の考えてることはわかる。いざとなれば自分を犠牲にすればいいとでも思ってるんだろ。そんな愚行を姉が許すのか?」

「あ……」

「結局、選択肢は一つだけだ。もうわかっただろ?」

「そう、だね……」


 そういう類の知識も、静花にはインプットされている。

 幸いなのはノラが同性であるという点だ。

 同性愛者ならば良いというわけではないが、異性より抵抗感は少ない。

 

 そもそも、ここの基準からすると、同意を得ようとしているだけノラはかなり良心的だ。

 もしノラという用心棒がいなければ、胸をどうとか言うことすらできなかっただろう。

 きっともう死んでいる。

 

 生殺与奪の権はノラにあるというのに、誠実な対応をしてくれた。

 その結果であるのだから、姉だって許してくれるだろう。


「わかったよ。触っていいよ」


 静花はセーラー服をまくり上げようとした。

 が、意外なことに制される。


「そのままでいい」

「う、ん」


 ノラの両手がゆっくりと、静花の胸へと近づく。

 温かな感触が、布越しに伝わってきた。

 

 予想外だったのは、ノラは本当に触れるだけだったことだ。

 揉んだり脱がしたりもしない。服の中に手を入れることもない。

 

 ただ、その感触を確かめるように。

 胸を手で包むようにして、触っているだけ。

 目を瞑って……何かを、思い出すかのように。


「…………もういい」


 ノラの手が胸から離れる。

 他人から触られたというのに、衣服に乱れはない。

 友達にじゃれつかれた時の方が乱れたくらいだ。


「これで、いいの?」

「なんだ? 他に何かあるのか?」

「ない、けど……」


 思春期の女子高生にとって、胸を触られるという行為が何を意味するのか。

 静花は知っている。大人びたクラスメイトの、そういう話を聞いたこともある。

 例え相手が同性の友達だったとしても、少なからずそのような意味合いは含まれている。

 

 だというのに、ノラのコレは。

 全くの別物、だと言っていい。


「今日の報酬は頂いた。まずは飯の準備だな。行くぞ」

「うん……」


 ノラの背中を静花は追いかける。

 今の自分がどういう感情を抱いているのか、直感的には理解できない。

 

 けれども、なんとなくだが。

 不快には思っていない――そう、推測できた。

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