6、薬草ですわ〜!
よろしくおねがいします。
エフェリアの町、郊外。
広々とした草原の先に、深い森がある。
森の奥は魔物の領域になっており、それはもう危険だ。
ボタンには戦闘手段がほぼない。ガンマに買ってもらったダガーと、アルファに買ってもらったショートソードだけだ。……もちろん、十全に使える技量などないので、最低限の護身用にしかならない。
「大自然ですわね〜……草、美味しいですわ〜!」
ボタンのユニークスキル『暴食』により、口にいれられるものはある程度美味しく頂けるようになっているため、食料の持参はほぼない。その分、水はしっかりと多めに携帯している。
この辺りの草は、潮風に耐えうる強靭さをもっている。その分苦味が強いが、それがまた癖になる……というのは、ボタンか、牧畜にしかわからないことだが。
「薬草は、森の浅い所でしたわよね。魔物は余りでないけれど、野生動物が出やすい……それを狩る魔物も稀に出るので注意、でしたわね」
なんならこの草原でも、急に危険に襲われる事もあるのだ。異世界、恐ろしい。
かくして森の浅い所についた。
探すのは、いわゆる薬草類。目当てのものは、木の根元の、陽のあたりやすいところに生えやすいらしい。条件が限られているため、見つけるのに苦労はなかった。
暫く集めていると、近くの草むらから声が聞こえた。
警戒し、ショートソードを構える。
「そーっと、そーっと離れるんですわ……そーっ……と」
ガサッ!と一際大きな音がなり、草むらからなにかが飛び出してきた!
「わ、わっ!なんですの!撤退ですわ!」
「ま、まつでござ……まつでござる!」
「ひえっ!ひえー!」
「ま、まっ……ござ……」
「ひ……あら?」
ある程度離れて、音がしなくなったので振り向くと、人が倒れていた。飛び出してきたのは人だったのだ。
「み、水と……薬草がほしいでござ……る……」
「あらま!行き倒れですわ〜!!」
行き倒れ、いた。
「た、助かったでござる!拙者、スズナと申しまする。森で薬草採取のクエスト中、うっかり毒草を食べてしまい……この有様でござる……」
「うっかりさんですわ〜!わたくしはボタン、同じく薬草採取のクエスト中ですわよ!」
「おお、冒険者であったか!これも何かの縁、ひとまず、ご一緒いたしませぬか?……腕には自信があるゆえ、なにかあれば頼っていただければ」
まさに、渡りに船というやつだ。さすがにさっきのようなへっぴり腰では、先が思いやられるというものだ。
「わたくしでよければ、是非ですわ〜!」
臨時パーティ、結成である。
その後は無事に何事もなく、薬草採取を終えて町へ帰還。
ギルドへの納品も終えたところだ。
「では、改めて感謝致す。よければ、次回も臨時パーティを組めればとおもうのでござるが……」
「嬉しいですわ〜!次回も、ふたりで頑張りましょう!」
「おお、よかった!では、ボタン殿、明日またここで!」
「スズナ様、ごきげんよう〜!」
仲良くなれそうな人ができてよかった、とおもうボタンであった。
「そういえば……」
そういえば、あの人は何故、毒草なんて食べたのだろう……毒草、食べてみたいな、と。
ボタンの明日の楽しみが増えた。
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