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悪役令嬢パトリシアの場合。 全力で回避するのも面倒なので、国外追放を目指したいと思います。

作者: さかたあい

ご覧頂きありがとうございます。

悪役令嬢パトリシアとダリス殿下のお話。



「パトリシアと離れることは絶対にない!」




(あわわ、国外追放を目指していたのに、どうしてこうなったの!)


乙女ゲームでは、殿下からここで断罪されるはずが、何故かこのような告白を受けている私。




10年前


ふと目覚めたら、異世界だった。

私はどうやら死んでしまったらしい。

ここ、乙女ゲームの世界『虹色の花は王城に咲く』(略して『虹はな』)に転生していた。


しかも悪役公爵令嬢パトリシア。どんなエンドでもバットエンドが用意されているパトリシア。

「彼女にだけはなりたくなかったわ。」

赤い髪に緑の目。6歳。


パトリシアは王太子ダリスの婚約者である。ダリスは淡い金髪に碧眼。


パトリシアは『虹はな』のヒロインをいじめる悪役令嬢だ。


髪の色が薄ピンクで、瞳が薄いブルーの可愛いヒロインに意地悪する役だ。パトリシアの本来の性格は嫉妬深かった。


(あんな性格だったから、殿下に嫌われていたのよね)




ゲームの情報によると、平民育ちのヒロインは、本当は男爵家の隠し子だったらしい。

男爵家に引き取られ、王立学園に入学して、ダリスと恋に落ちる訳だ。



王立学園で、ヒロインを虐めたため、パトリシアは断罪される。ダリスは、私の外見を嫌っていたから、可愛らしいヒロインを好きになる。

中身もパトリシアはひねくれてて凄い性格だった。パトリシアは嫉妬して、ヒロインをかなり虐めていた。



「えっと、今の私は6歳だから、断罪までに10年くらいあるのよね。」


机に向かって、シナリオの覚え書きをしている。

パトリシアは頭の中を整理した。現在、ダリスとはもう婚約済だ。



6歳のパトリシアは、10年後断罪されて、国外追放を目指すことに。



(せっかくの『虹はな』の世界だもの。色々と堪能したいし、この国以外にも見てみたい!)



「そうなると、お金は大切だわ。国外追放させられてから、生きていくためにも。」



転生したパトリシアはたくましかった。



パトリシアはお金を貯めることにした。



「あと、色んな知識は必要だわ。生きていくためにも。」



パトリシアは両親に頼んで家庭教師をつけてもらって、脇目も振らずに勉強した。



「やはり強くないといけないわよね。」



数年後、両親に剣術の先生を付けて欲しいと頼み込んだ。



いずれ来る国外追放のためだ。



断罪回避は多分無理だろうと、パトリシアは踏んでいた。快適な国外生活を送るために日々努力していた。


真面目に勉強していたパトリシアはメキメキと実力をつけていった。お金を貯めることも忘れない。身体を鍛えることも怠らない。







10年後




「こんなはずじゃなかった」


パトリシアは王太子に溺愛されている。どこでどうしてこうなったのだろう。


パトリシアの疑問は尽きない。






溺愛されるまでの過程

過去の話


パトリシア8歳

ダリス王太子10歳

婚約してから2年後


ハンス目線(ダリスの幼なじみ兼護衛)


「パトリシアはお茶会の時、楽しそうではない。俺に会うのが嬉しくないのだろうか?」


「殿下はパトリシア様を嫌っているのではなかったのですか?」

ダリスの護衛、ハンスが言う。


「そうなのだが」


パトリシア様が婚約者となられて、2年経った。殿下はパトリシア様を嫌っていたはずだ。


少し強い目元とか、赤い髪とか。気が強い所も嫌がっていたはず。



「生意気な所は嫌いだ」



やれやれ、殿下にも困ったものだ。

しかし、殿下に全く執着されないパトリシア様に対して、何か殿下は感じるところがあるのだろうか?



一般的な令嬢なら、この見目麗しい殿下に対して、夢中になるはずなのだが。どうやらパトリシア様は違うらしい。


最初の婚約の時の顔合わせでは、パトリシア様はとても喜んでいたはずだった。しかし、何故か、それ以降の殿下との定期的お茶会については全く様子が変わった。やけに落ち着いているのである。


殿下も居心地が悪いようだ。




パトリシア10歳

ダリス王太子12歳

婚約してから4年後


ハンス目線


「パトリシアが剣を習っているそうだな」


「ええ、令嬢らしからぬことですよね。

それが何か?」


「この前のお茶会の時、パトリシアが、私は強くならないといけないんですと、豪語していた。俺はそんなに頼りないのだろうか?」


(パトリシア様は少し変わっているからなあ。殿下は頼りなくはないでしょうが、これを上手く使うのもいいかな)


「そうですね。殿下がさらにお強く頼りある存在になられれば、良いのでは?」



「・・・そういうものなのか?」



「殿下、騎士団の男はもてます。やはり女性は逞しい筋肉を持った男性を好みますよ!」



「・・・そういうものなのか?」



殿下はこれまで以上に剣術に取り組むようになった。



(パトリシア様は何故剣術を習うのか、正直俺にもよく分からないなあ。殿下が剣術に身を入れるように利用させてもらおう)






パトリシア14歳

ダリス王太子16歳

婚約してから8年後


ハンス目線



「パトリシアは学園テスト1位だった!」



貴族が通う王立学園に今年パトリシア様は入学された。



「殿下も1位ですよね?」



「ああ、しかし1位をとるのはかなりの努力が必要だ。パトリシアも1位とは意外だった」



パトリシア様は剣術に力を入れていたはず。まさか、勉学も努力していたとは、驚きだ。



殿下もパトリシア様の1位に動揺している。



「殿下もさらに多方面から優秀になれば、パトリシア様にも好かれますよ」



「・・・そういうものなのか?」



「もちろんです。騎士団の騎士達と同じで、王城の優秀な文官達もモテますよ。やはり女性は知性的な男性も好みますよ」



「・・・そういうものなのか?」



すみません。殿下。この状況を利用しまして、さらなる向上を目指したいと思います。




こうしてハンスの思惑通りに、王太子は逞しく知的で狡猾な存在に成長していった。







殿下の目線




そもそも出会いが最悪だった。


俺が8歳のころ、6歳のパトリシアと婚約した。

顔合わせの時、彼女の赤い髪が嫌いになった。



(なんだ、あの赤毛は!)



(緑の目と赤毛。あんまり好きな組み合わせじゃないな)




父上も母上も淡い金髪碧眼で、俺もそういう容姿だった。

あの時は幼かったから、見た目の容姿で決めつけていた。



(そう、あの頃の俺は随分高慢で迂闊だったと思う。

パトリシアを完全に見た目でしか判断しておらず、きっと性格も好きになれないだろうと思った)



婚約して2年が経ち、8歳のパトリシアは全く俺に興味が無い様だった。一番最初の顔合わせの時はあんなに喜んでいたのに。

俺も赤毛は嫌いだったが、今の状態は何とも居心地が悪い。


(まあ、俺も赤毛のパトリシアを好きではないからな)


自分の居心地の悪さを、パトリシアの容姿が好みではないからということで、うやむやにしようとしていた。




パトリシアが10歳になって、剣術を学んでいると知り、何とも言えない気持ちになった。



(なぜ、剣術を学ぶ必要があるのだ?

俺のことがそんなに頼りないのか?)




相変わらずパトリシアは俺を好きではない。

定例のお茶会も義務みたいにこなしてくる。



ハンスに尋ねると、筋肉の逞しい男は女性に好かれるらしい。

これまで以上に剣術の練習に励むようになった。




(絶対にパトリシアを振り向かせたい。筋肉を付けることで変わるなら!)




俺はパトリシアを振り向かせようと意固地になってきた。




パトリシアが14歳になり、王立学園に入学した。




(まさかパトリシアが学年1位を取るとは!)




この頃の俺は剣術も勉学も努力していた。

1位を取るのは、もちろんパトリシアに認めてもらい、好きになって欲しかったからだ。



(パトリシアも1位だと・・・!)




(さらに何かを頑張らないと、パトリシアは俺を認めてくれない!好きになってもらえない!)




焦った俺はハンスに相談して、パトリシア以上の研鑽を積む事にした。







いつの間にか、パトリシアを振り向かせることに全力を尽くすようになった俺。





俺のパトリシアへの恋情を、完璧に近い王太子としての成長の糧に、ハンスに上手く使われてしまった。



しかし、その結果として、愛しいパトリシアを手に入れることができた。満足している。




パトリシアをどこにも行かせないし、そばに置くためにはあらゆる手段を行使することをいとわない。



(パトリシア、愛してる。君のためならば、俺は・・・)






国外追放を目指していたパトリシアは、いつしかダリスに溺愛されるようになり、今は王太子妃として幸せに暮らしている。

















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