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開戦前4

 ステーションの男達は、かつてフロンティア7から避難してきた兵士達が装着していた防護服に身を包んでいた。同様に中央に報告せずに隠しておいた銃器を手にした。しかし、着の身着のままに逃亡してきたために、当然その銃器のエネルギーパックや、弾丸はとても少なく、軍がやって来る間に届いた民間の応援物資が軍事物資というより生命維持に関わるものばかりで、戦うには十分と言えるものではなかった。


 クーパーは、ノードステーションに残っている人々に銃器の使い方は教えたが、練習はほとんど行わなかった。羅刹相手には小火器では全く相手にならないからだ。

 それは戦車を相手にリボルバーで応戦するようなものだ。銃器が有効なのはあくまでも対人に対してのみだった。多分使うことになるとすれば、羅刹が暴れ回り、多くの人々を蹂躙し、この施設の中にはもう抗うものが居なくなったと判断したあとにやってくる人間の兵士達に使う事になる。しかし、それは生き残っていればの話だ。


 河瀬もまた、羅刹相手には意味を成さない重いだけのアーマーを身に付けていたが、手にしているのは銃ではなく小型のコンピュータだった。すでに、船内の武装化した改造ロボット達には、戦闘に関わるコマンドは与えている。そして秘密とされているインタフェース・・・サイクロプスの疑似制御も入力済だ。彼は、そのコンピュータを元にしてロボット達の配置を続けていた。どれもこれも、極めて船内の奥の方に配置しているのは、クーパーの指示だった。


 武装した男達は、むしろ前線に身を置いてバリケードの後ろで息をひそめていた。彼らは、時折クッキーを口にしてアルミパックの栄養補助ゼリーでそれを流し込みながら緊張感をほぐしていた。


「未だ来ないのかねぇ、ケツが痛くてしょうがないぜ」カルベは、溜息をついた。その手には愛用のサブマシンガンが握られていた。


「それで羅刹に勝てるのですか?」横で、レーザーガンを持っていた男が訊いた。


「おうよ、日頃からこいつに仕込んでいる徹甲弾なら奴らの装甲に穴は空けられるぜ、でもメイヤーの野郎が別な弾に入れ替えろって命令しやがってよ、今入っている弾じゃあ無理だろうな。はっきり言えば一発ぶっぱなしたら、さっさと逃げるこった。それでも追いつかれそうになったら、ショウにこっそり頼んでもしものための特別にあつらえた一発もあるからよ。万が一の時は俺を頼っていいぜ。」


「しかし、AI殺戮機を本当に奥に誘導できますかね?」


「わかんねぇ、まあ俺たちはやるだけのことをやるだけさ」カルベは鼻の穴を指でほじって、鼻くそを取り出すと壁にそっとひっつけた。「あとは、神か地獄の番人にでも訊くしかねぇ。くそ、しかしなかなか来ねぇな…」


 

「発進」リタは、画面に移されたタイマーが0になるのを確認して、Enterキーを押下した。吊るされた羅刹達はゆっくりと電磁カタパルトの前に一体づつ移動され順番に発射されてゆく、強力すぎるそのカタパルトはいざとなれば、そのままレールガンとしても使えるほどの威力がある。もしそのまま減速することなく羅刹がコロニーに激突すればそれだけでも相当の被害を相手に与えることさえできる。しかし、実際はそれをすることは条約に違反する。


 真空中を一気に駆け抜けた羅刹達は計算づくのチキンレースをする。ぎりぎりまでブレーキをかけず、激突する寸前で速度を0にまで急激に減速するのだ。生身の人間がやればひき肉になりそうな逆噴射を行う。場合によってはエアバンパーと呼ばれる風船を装備し、それをクッションにして激突したうえで停止したりもする。先陣を切った羅刹は、突破口を開く様に指示されている。そのため羅刹が目標とする着地点は、ハッチである。


 通常これらの構造物の外部ハッチは、外部からの侵入に対してセキュリティは考慮されていない。むしろ事故発生時を考慮してボタン一つで開くようになっているのが常だ。

 しかし、最初にたどりついた羅刹は、触手で開閉ボタンをいくら操作してもハッチが開かないことに苦慮していた。


 リタの見つめるモニターにもその姿が映し出されていた。ここでハッチの破壊は協定違反となる。機械たちが最も苦手とする分野だ。


「艦長、工兵部隊をハッチに派遣してください」リタは緊急割り込みで通信を行った


「こちらも見ている。先ほど送った。」艦長は静かに返事をした。


やがて、モニターに巨大なコンテナが映った。小さい推進装置でゆっくり移動をしており、周囲には宇宙服姿の工兵達が取り巻いていた。工兵は現場に付くとコンテナを開き、中からあれやこれやと部品を取りだすと。つづいてコンテナの開口部をハッチに密着させてから、手際よくハッチの周囲とコンテナを溶接していった。


「よし、くっつたぞ。やっこさん達をコンテナに入るよう指示してくれ」工兵隊からの依頼にリタは、羅刹に対して命令を出した。羅刹達は互いに密着してコンテナの中に納まっていった。工兵達は羅刹達が中に入るのを確認するとコンテナのドアを閉めた。


「あとは任せたぜ。」と工兵隊からの連絡があると、画面に小さく映る工兵隊達は、背中の噴射装置を起動させて、その場から去って行った。


「はい」とリタはハッチにもっとも近いところにいる羅刹にハッチを焼き切るように指示をした。羅刹の触手の先端から鋭い光がほとばしり、ハッチに小さい穴をあけた。そこからシューという音とともに、空気が漏れだす。小さい穴は線状の穴へと広がり、ゆっくくりとハッチの周囲を侵食してゆく。この方法により、ステーションを外部から破壊したというそしりは免れることになる。


 

「そろそろ来ますね」ハッチの直ぐ中にある減圧室に装備されたカメラが、破壊されつつあるドアを映し出していた。炎の傷跡は扉を間もなく一周しようとしていた。やがて、ドアは内側にむかって倒れ、そのドアを踏みつけて体躯をくっつけ合った状態のまま機械達が入ってきた。先頭の一体が手動開閉を行うハンドルを回し始めた。


「ロックしなくていですか?」監視カメラの映像を見ながら男が隣のひげづらに訊いた。

「どうせ戦闘が始まればあれこれ壊れるけど、まぁここぐらいは、壊させるなとさ、もし降伏する事にでもなれば、大事な減圧口だ。」


「じゃあ外のハッチもあけてやればよかったのに…」


「あれは、時間稼ぎのためさ、もし破壊してくくれれば多くの世論を味方につけるための罠でもあったのだけど、船長さんは紳士的らしい」


「さて、生中継再開だ…現在羅刹は、減圧室に突入して船内内部に入り込んできます。羅刹は、三本触手型のものが投入、装備はあまり強力なものではなさそうです。」


「我々はあくまでも暴徒程度としか見ていないってことか」クーパーは不満そうに言った。彼の片手にはごついレールガンが握られていた。


「鹵獲しても収穫は期待できそうもないですね。」アルドリーノは、スーツ姿のまま小さい銃を手にしていた。


「ここは、撃退したほうがいいでしょうか」


「向こうさんは装備が貧弱でも、やはり軍仕様だ。撃退されるのはこっちさ。こいつがもっとあれば、5分ともいえたが」クーパーは、レールガンを撫でながら言った。


「レールガンなら、クーパーさんが持ってきたのがかなりありましたよね…」アルドリーノが不服そうにいった。それらは、まだ仕舞ったものだったからだ。


「いや」クーパーは首を振った。「銃じゃあない、徹甲弾だ。庶民に徹甲弾なんかそうそう手に入れられるものかい、普通の弾なんかいくら高速であたったとしても羅刹のボテイの飾りになるだけだ。


「では、当初の予定通りにするしかないってことですね。」


「しかし、それでこちらの奥の手が、向こうさんに分かってしまうってことだ。」


「せっかくの情報があまり役に立たなかったか…」


「まぁ、時間稼ぎにはなるさ。ボウイが来るかどうかはわからないがね」



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