インターフェース
「やあ、君が河瀬さんかい?」色黒の男が、ディスプレイをじっと見つめている河瀬の背中に声をかけた。
「あんたは?」河瀬は、半分降り掛っている瞼のまま振り向いた
「クーパーと一緒にきた。マイヤーって者だ。」マイヤーは手を差し伸べた。
「ああ、副管制官から話を聞いていました。よろしくお願いします。」河瀬は、すくっと椅子から立ち上がるとその手を握った。
「なにか面白い情報をつかんだらしいな」マイヤーはにやりと笑った。
「ええ、羅刹のインタフェースの情報を得るパスワードですけどね。とりあえずこれで、誰何に対応できるので、こちらのロボットはすぐには攻撃されないのですけど。だからといって脆弱なこちらの武器で羅刹に攻撃をしても、良いところかすりきず程度だと思うのです。そんな攻撃を仕掛けてくるとなれば、異常を起こした仲間扱いってことで、結局やられてしまいますから、結局役に立たないと思うんです。なにかいい使い道がありそうなのですけど、思いつかなくて」河瀬は肩をすくめた。
「普通のロボット技術者なら、そうなるのが当たり前さ、軍事用ロボットは、基本のインタフェースの他にオリジナルなのが多いからそっちの知識がないと無理だよ」マイヤーは、ぽんと河瀬の肩を叩いた。
「全くですよ、ここに本物があれば試したりもするのでしょうが、想像だけでは手のつけようもないです」
「しかし、ここにはちょっと古いが情報があるぜ」マイヤーは自分のあたまを人差し指でちょんちょんとたたいて見せた。
「マイヤーさんは軍の関係者だったのですか?」
「いや、その下請けの中小企業さ、もっとも社長が金を使い込んで倒産してしまったがね、人殺しロボットのプログラミングの設計はしていた。今でもその構造は変わっていないはずだ」
「しかし、分かっているのは誰何インタフェースだけですよ。」
「いやいや、案外それが一番のキモなんだよ」
「どうしてです?」
「人間と同じさ、互いに見知らぬ場合でも戦場で味方と分かれば、情報交換するだろ。場合によっては、相手の指示に従う場合もある。
しかし羅刹は羅刹に対して指令を送ることはない、人間だけがその権利を持っているからね、そしてそのインタフェースは昔から変わっていることはないだろう…そっちのセキュリティは万全だと親方さんたちは信じ切っているからね。だから、羅刹に命令を下せれば、こっちのものさ」
「マイヤーさんはそれを知っているのですか」
「まぁな、しかし羅刹を前にして生身の人間が小さい通信装置をいじるのは勇気がいるぜ、もしその暗号がもっともらしい嘘だとしたら一巻の終わりだ。しかし本当なら、羅刹を鹵獲できるのじゃないかな。」
「鹵獲ですか、それは面白いですね…」早瀬はマイヤーの笑顔に笑顔で返した。目的が見えてきたところで、眠気が覚めてきた。
「話が決まれば、作業にかかろう、時間がないぞ」




