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進軍の開始

巨大なドックから張り出されたレイルガンカタパルトからは次々と宇宙空母が飛び立った。その重量ゆえ加速までにかかる時間を配慮して、葉巻型の宇宙船はそのカタパルトの冠する名前のごとく、まさにその弾の様にその巨体が暗黒の宇宙にはじき飛ばされて行った。


 空母以外の物は、自力で加速をしており、既に進行方向を先に進んでいた。それを急な加速で空母は追い、やがて追いついた、


 飛龍の角谷は、Gシートから身を起こした。彼が指揮を執る空母の周りには既に多くの軍艦や空母が浮かんでいた。周りの星が見え隠れしなければ、まるで暗黒の虚空に停止しているかのようだ。


「ログオン」と彼は、はっきりとした声で言うと、壁の隅にあるカメラが彼を注視した。コンタクトに内蔵されたディスプレイにはキーボードが映り、彼にはそれがあたかも宙にそれが浮かんで見えるかのようだ。


 彼はその浮かぶキーを素早く押して宇宙軍用のIDとパスワードを入力した、すると周囲の環境が一変した。彼はバーチャルブリーフィングルームの正面に立ち、すでに数人の艦長が着席しているのを見下ろした。あまり時を待たずして空席の椅子にも他のメンバーが姿を唐突に現した。


 メンバーが揃ったことを確認してから、角谷は口を開いた。

「前もって通達した様に我が第13艦隊は、103ノードに位置する都市衛星の反乱分子を殲滅する任務にあたる。この作戦は、今後母星を中軸とする強固な社会基盤を構築するための要となる作戦であるため、各自心得て貰いたい。」彼より老齢の者が多い他艦の艦長が各々頷いた。


「まずは、通常空間での航行速度が速いワイマヌ、イングサ、スターホーク、星殲弐が先に103に到着し最後通告および、女子供の無条件脱出のための交渉を行ってもらいたい。その後の戦闘は状況に応じて判断してかまわないが、こちらの人的損害を抑えるために羅刹4を使う作戦に限定する。その他の艦は、先行する艦より約3日遅れで現地到着となる。

 ルートは、これよりターミナル、ノード3、15、23、45、69、90を利用するこれらノードステーションについては、現在民間船の利用が制限されているが、なにか妨害と思われる行為が認められた場合は、私の了解を得ずにその行為者を排除することを認める。先行艦隊は、ブリィーフィングが終わり次第、隊を組んで直ちに全速で向かえ、他はターミナルに入る前に再度集合をする。連絡はその時に行う。なにか質問は?」


「飛龍が来る前に103が落ちるか降伏した場合はどうしましょうか」ワイマヌのヌンガ艦長が手を挙げた。周囲から笑みが漏れた。


「落ちた場合は、警戒をしつつ必要な人道的援助を行い、反乱分子は確保、幽閉しろ。降伏した場合は包囲を続け我々を待ってもらいたい。ま、それは多分ないだろうが。他には?」


「ま、お手並みを拝見しましょう」ウルフガングが小さい声を出した。それを角谷はにらみつけた。他の艦長たちがそろってにやりと笑みを見せた。


「なにもなければ、解散する。」彼の言葉が終わるか終らないうちに、すべての椅子が空席になった。手でワイプアウトするような仕草をすると、コンタクトは映像を映すのをやめた。それでも視界の隅には、ちらちらとメールの受信を知らせる通知が点滅していた。

 高速巡洋艦の群れは、反物質ペレットを後方で連続的に爆発させながら突き進んだ。それらはオールト雲の中で人類が最初に発見した宇宙花を目指していた。その宇宙花だけが、ターミナルと名づけられていた。


 人類が初めて有人の宇宙船で未知の恒星系へと旅立っていった場所だ。発見当初は誰が何のためにと調査が続けられていったが、やがてその利用方法が明らかになると調査予算は徐々に削られ、その代わりに利用方法については、莫大な予算と人員が投入された。


 激しい加速を続けている間、すべての巡洋艦乗組員は満足に身動きがとれない状態が続く、ヌンガはゆったりとした椅子に座ったまま一本の指をたててどこかにあるモーションファインダーに対して指令を送った。


 すると、コンタクト内に幾つもの選択項目が浮かんだ、それは彼にとって宙に浮か透明なタッチパネルのように見えた。彼は指でそれを次々と選択したりスワイプしながら目的のものを映像に浮かびあがらせた。


 それは彼の乗る艦の舳に設置されたカメラからのライブ映像だった。それが臨場感たっぷりに迫ってくる。彼はこれが見たくて宇宙船乗りになった。本当ならカメラも通すことなく、分厚いガラス一枚隔てただけで見るのが一番良いのだが。現代の戦艦にそれを望むことは滑稽だ。なにより、強烈な宇宙線から人や機器を保護したり、宇宙空間に浮かぶデブリとの激突に備えるべき装甲に透明さを求める構造物は付ける事は無いのだから。


 かつて海に浮かんだ軍艦ではより遠くを見るために高い位置に設けられたブリッジは、宇宙船では一番中央の中心に位置し、通常のカメラはもちろん、各種センサーからの情報から作成された映像により船周囲の状況を確認できるようになっていた。


 一つの気配が彼の傍で止まった。彼が広げた掌を目の高さに挙げると、景色は彼の居る場所の実際の景色となった。そこでは多くの兵士が彼の前でGシートに深く座ったまま見えないキーボーボを打っていた。


「サー、科学班から閉鎖空間内での実験を、許可して欲しいとの再度の問い合わせですが?」副艦長のエルザがハスキーな声で尋ねてきた。


「任務中は許可しないと伝えた通りだ。帰還時なら許可する。と伝えてくれないか、しかしなんで君が伝言役なんだ?」


「訓練室とライブラリが隣り合わせですからね」エルザはパッドを入れて大きく見せた肩をすくめてみせた。「出てきたところで捕まりました。」


「訓練!この加速中にか?」


「結構、良い負荷トレーニングになるのですよ」エルザは細見の女性であるが、この艦きっての格闘家でもあったことを彼は思い出した。


「まったくタフだな。自分を鍛えるだけじゃなくて、たまには実戦の指揮をとってみないか?」


「私にですか?」エルザはびっくりした。


「ああ、ノード103への攻撃を君が指揮してみないか。もっとも羅刹を投入する作戦だがから、どちらかと言えば、ゲーム感覚でできる指揮になる。どうかね?当然私が君のアシストをするが」


「それは!是非ともやらせてください」とエルザは言ってから、しかしなぁと小声で呟いた。


「どうしたなにか問題でも?」


「いえ、さっきジムで羅刹にペイント弾を持たせて相手にしたのですけどね。あいつら動作が単調だから、動きが分かると全然相手にならないのですよ。あいつらは実戦で本当に大丈夫でしょうか?プログラムの修正が必要ではないですか?」


「何?そんなものを相手にしていたのか君は!」


「ええ、こちらの武器の能力を把握しようと思いまして」エルザは微笑みを返した。


「今回の相手は、素人だ。その必要は無いだろう。そもそも実弾を装着して送りだす必要もあるかどうかさえ疑問だ。多分、羅刹の姿を見ただけで怯える可能性が高い」


「しかし、そんなことをすれば舐められます。向こうにどんな武器があるかもわからないのですから」


「そうだな、まぁそういうことを含めてやってみてくれ、最初の降伏への交渉が失敗したらだが。」


「是非とも決裂して欲しいですわ」エルザはわくわくしながら答えた。「では、先ほどの件は科学班に伝えておきます」と背を向けた彼女の背中に赤いペイントの跡を彼は見つけてにやりとした。


 中央部にある司令室から加速中の船内を、通路の手すりにつかまりながら、彼女は船の貨物室に近い場所にあるラボに向かった。


「やはり無理だそうだ」エルザは、ジムの隣にある、研究室の扉をあけるなり大声で言った。「帰途の時なら許可はするそうだが。」


「あーーー」ドア近くにあるシートに体を預け痩せ細った男が弱弱しく声を発した。「分かった。そのときにまた申請するよ」


「アイモネ、ものは相談だが」エルザは男の椅子の横にしゃがんだ


「なんだ」


「羅刹を改造してくれたら、ちょっと目をつむってもいいぞ」エルザは小声で言った。「ただし船は止められないけどな」


「本当か?」


「もちろん」


「で、何を改造すればいい」


「簡単でいいから攻撃でフェイントをかけられるようにしてほしい」


「必要あるのか?今回の相手は素人だぞ」


「そうだな素人相手だけならいいが、もし職業軍人がいた場合には必要さ」


「分かった。どうせ戦争の事は俺にはどうでもいい、宇宙花関連の研究をやりたくて軍直属の研究部門に入っただけだしな、目的地までにソフトウェアを書き換えればいいな」


「そうしてくれ、E8ハッチを使え、そっちの部門の占有にしておく。」

そういうと彼女は、扉を出て行った。加速が体の自由を奪う、しかしそれを気にすることなく隣にあるジム室に入った。まだ何時間も加速は続く、そして後はつまらない等速度に変化してしまう。彼女は、加速の中でさらに負荷をかけたトレーニングこそ面白いと思っていた。筋肉はさらに悲鳴を欲している。


 加速の呪縛から逃れ、船内はグラビトンによる重力制御に変わり、慣性速度で4隻の戦艦が突き進んだ。すでに、進行方向には宇宙花の輪に囲まれた内部が銀色に発色を初めていた。


「マイクロブラックホールの瓶はの準備はいいかい?フェルト」アイモネは、小柄の女性に声をかけた。


「安定しています。それにしても、間違って墜ちなければいいですが…」


「一応、小さいシュバルツシルト境界に沿って囲いがあるから大丈夫さ、採取物はこの周りに張り付いた状態になるからね。まぁ途中でエネルギーを供給できないことになったらダメだろうけど。」


「つぶれますでしょうか?」


「それはないと思うよ、ブラックホールは直ぐに蒸発してしまうから、採取物が飛散するだけだね。」


「それにしても大がかりな装置ですね。なにか普通の容器とかじゃダメだったのですか?閉じた空間の大気ぐらいなら」というフェルトの言葉をアイモネはさえぎった


「大気・・・そう言うのも変だがね。分子一つさえないあの宇宙空間を満たす粒子については誰もが研究しているが、謎だらけだ。だが私の狙いは、あの宇宙でうごめくやつだ」

「ゴーストをですか?」


「そうだ、そもそも宇宙空間に瓶を放したところで、何もかも器をすり抜けてしまう。分子の間を抜けていってしまうからね。そもそもゴーストが、どういう組成でできているのかさえわかららない」


「そうですね、分子さえないというのは、原初の宇宙のようなものなのでしょうか?しかしあんな妙な物が存在するなんて」


「原初の宇宙、恒星さえ発生していないこの宇宙は、ある意味そうかもな」アイモネは口をつぐんだ。宇宙花の向こうの宇宙を満たしているのは、多くの素粒子だけと言われていた。一番小さい水素分子や、ヘリウムの原子核ですら存在していない。

 そしてその密度は、均一であるが故に恒星を生成するために凝縮さえ起らない、重力やダークマターの力が小さすぎ、ダークエネルギーの方が大きいのか、あるいは、もし我々の宇宙において原子核を閉じ込めるための閉じた次元が肥大化し、この閉じた宇宙そのものを閉じ込めているため、原子核そのものが作れないのか、それさえ今のところ不明だ。

 素粒子の凝縮が起きていない宇宙なのになんで、ゴーストのようなエネルギー体がいるのかさえ判らない。


 われわれの宇宙は、特異点からいくつもの高レベルの次元を持つ空間が爆発的に生まれ、その空間からより下位の次元を持つ空間を爆発的に生み出し、高レベルの次元は折りたたまれていった。その結果、低レベルの次元において複数の爆発の接面には物質が高濃度で生まれ圧縮され、そうでないところは希薄になった。しかし、あの向こうの宇宙はビッグバンで始まったのではなく、まるで静かに広がったかのようだ。


 「もっとも、ゴーストがこれで捕まる保障もない、あれの実体はあそこにはないかもしれない」そうさ、もしあれがたやすく捕獲できるものならばとっくの昔に研究成果が発表されているはずだ。この方法だって俺が初めてでないはずだ。

 室内にある掲示板に間もなく宇宙花に突入するとのメッセージがながれた。


「さあ、E8ハッチに移動しよう、フェルト」二人はヘルメットを被ると。台車に乗せた大きな装置を二人で押しながら部屋を出た。



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