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訪問者達

「あばれ馬が来るぞ」ビルは、102ステーションからの連絡を見ながらぼやいた


「あばれ馬ってなんです?」後ろの席で、書類を整理していたアルドリーノが首をかしげた


「クーパー元管制官長だ。全く…」


「クーパー元管制官長って、10ステーションで管制官長をやっていたマフィアの親分みたいだと、噂されている方ですか」アルドリーノは、両手に書類の束を持ったまま、ビルを見た。


「マフィアは余分だが、まぁ暴れ坊だ。手勢を30人ほど連れてくるそうだ」老人は、ひとつため息をついた。


「何をしに来るのです?」アルドリーノは冷製を装い、そう訊きながら歓声を上げたい気分を抑えた。手勢は少ないが、戦いになった時にきっと指揮を担ってくれると思ったからだった。


「お前が呼んだと思ったがね。」ビルは後ろを振り返った。


「いえ、そんなことはしていません」アルドリーノは真顔で返した。


「まぁ来てしまったものはしょうがないが、あのザルどもに酒でも用意して、積もる話でもしないとな」


「ビル管制官長はクーパー元管制官長を知っているのですか?」アルドリーノは、まとめた書類を、老人の机の上に置いた。ステーション内で人手が余っているために、本来システムが行うべき業務に対して、古くさい書類がまかりとおっている状況だからだ。


「この宇宙であれだけの馬鹿を知らない管制官もいないと思うが、奴も私も11ステーションで育ったのさ、小型宇宙船でレースをして勝敗は5分5分ってところだったな。結局結着は付かなかった」



 直径10キロメートルの円環構造をし、その周囲を巨大な太陽光パネルを花びらのように広げている構造物の、穴の中が銀色の発光を始め、やがてそこから、一隻の小型船が出てくると、それに追従するように小さい宇宙船が30隻余り出てきた。

 最初に出てきた宇宙船は、そこで役目を終えたのか、再び円環の中に突入して去って行った。


 案内されてきた船団の先頭は、まるでブドウの房の様な格好をした、コンテナ船であり、その周りを、頭と尻尾と骨しかないような魚にも見える高速戦闘機が、青白いプラズマの尾をなびかせて、ステーションに向かった。


「やっと着いたー」その高速戦闘機のひとつに乗ったカルベが無線機に向かって叫んだ「飲むぞ!」思えば故郷の10ステーションを出てずっとスペースフラワーを出たり入ったりで、満足な休みを得ていないのだ。たまに休むといっても、コンテナ船に接続して燃料を補給するためだけだった。


「だめだ」とクーパーは冷たい声で言い放った。「まずは、挨拶が先だ」


「堅苦しいのは、おやっさんに任せますよ。」カルベはアクセルを踏んだ。「しかし、今回の一番乗りは俺が取りますよ」


「ほう、俺に勝てると思っているのか?」クーパーはエンジンを最大噴射にした。そのためやや後方にあった彼の戦闘機はどんどんとカルベに接近した。2艇はそのまま平行に並ぶと全速で宇宙空間をステーション目指して飛び続けた。


「おやじさん、今度は俺の勝ちだ」カルベはアクセルをさらに踏み続けた


「ふん、お前に勝ちは一生やらないぜ」クーパーもまけじと加速を続ける。

2艇とも、速度を落とす気配を見せずにステーションに向かった


「あれ、何をしてしているんだ危ないぞ」アルドリーノは、不安な気持ちでスクリーン上の船を追った


「チキンレースをしているんだろ」ビルは、ため息をつういた「あの馬鹿、まだやっているのか」


「あの管制官長・・・レースってチキンレースだったのですか?」アルドリーノは、眉間に皺をためてディスプレイを見ているビルの横側が、それでも楽しそうな表情に思えた。



 カルベの前にどんどんとステーションが大きくなってきた。パネルは警告ランプを点滅させ、うるさい警告音がコックピットで鳴り響いた。横についたクーパーの船はまだ、ブレーキをかけていない。すぐさまステーションの非常用出口や、展望用の窓、そしてその窓からこちらを見る人の顔が見えた。その表情が驚きに目を大きく見開いている。彼は逆噴射をかけた。激しいGで吐きそうになる。船はどんどんステーションに接近する。目を開いていられない、パネルは非常事態を示す警告音に変わった。うるせー!彼は、さらに激しく噴射をかけた。警告音が消え。Gが唐突に失われる。船はステーションの外壁からわずか1メートル足らず手前でとまっていた。「勝った」彼は確信して横を向いた。クーパーの船は彼よりステーションに近い位置に既に停止していた。ステーションとの外壁との間は50センチあるかないかだ。


「これで、15勝0敗だ」クーパーのげらげらという笑い声にカルベは、がっくりと肩を落とした


「おやっさん、何遊んでいるんだ。いこうぜ」無線にしわがれた声が入った。


「おお、じいさん悪い悪い、カルベ行こう」


「了解、おやっさん」カルベはなんで勝てないのかなと思いながら逆噴射をして外壁から離れた。


「全く、クーパーはいい年なのに何ですぐにああも馬鹿ばかりするかね」クーパーにじいさんと呼ばれたメイヤーは大きな貨物船を進めていた。助手をかねて付いてきた、ショウは成人になったばかりだ。


「でも、おやっさんはやっぱり凄いですよ。あんなギリギリのところにとめるなんて…」

「宇宙船を10台近くつぶせば、上手くもなるさ」


「ええーー!本当ですか?10台も?」ショウはすっとんきょうな声をあげた


「ああ、つぶしては俺が修理してやったんだ。しかし、その度にやつは腕を上げたもんだ。もっともその都度入院を繰り返したがね。ただ、ここの管制官、ジム・ビルだったかな、若い頃はクーパーと互角に張り合っていたらしい」


「それでも、メイヤーさんもクーパーさんも凄いです」と目を輝かせてショウは前をみた。他のメンバーも次々を急加速をしてステーションに向かってゆく「なあに、若気の至りよ。お前は真似するなよショウ。奴の真似をしていたら命が幾つあってもたりねぇ」


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