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交渉9

 シュナイダーはヘルゴラントの船長室で角谷と向かい合っていた。


「用向きは分かったが、こちらは熊谷艦長の指示がない限り動くつもりはありません」シュナイダーは高い背から角谷を見下ろすように座っていた


「あの人は、人が良すぎるんだ。今ならここを叩けるんだ」角谷は身を乗り出した


「しかし、そこまでの命令を私は受けていません。たとえ貴方の言う通りだとしても命令違反になります。それにこの前の事故でこちらも損害が甚だしい、今はこの艦の修理と人員の治療が先だ」


「全く、この堅物者が、今こうして自然とドックに入っている状況を生かせば、ここはあっと言う間にこちらの手に堕ちるに決まっているというのに」角谷は思わずテーブルを拳で打った。「この次は、こうもやすやすと入れてくれないぞ、それこそ互いに甚大な被害を被ることになる」


「それが戦争というものと思っています。被害の無い戦争なんかない」シュナイダーは、目を深くつむった。


「被害が大きくなると予測できれば、対話によって回避策をも模索するか」角谷は嫌みぽく言った。


「できれば、それがベストです」シュナイダーは目を開き、自分に言い聞かせるように頷いてみせた。


「このステーションについては、それは無いだろうな」角谷の口調は、自分はなんでも知っているぞというように、彼をあざ笑うかのようだった。


「何故です?」シュナイダーは首を傾けて訊いた。


「上層部は、ここを完全に撃破して軍の力を示したいのさ、できるだけ劇的にね」角谷は、口角をあげてにやりと笑った。


「そうすることで、全ステーションの独立の気運を下げると?」


「その通り、しかしそうはならないだろう、きっと紛争が拡大する。ここで戦闘が長引くと全ステーションの援軍も相手にするかも知れない、今叩けば、まさに力を見せつけた上で、他のステーションもやる気を無くす」角谷は、ぐっとシュナイダーに迫った。


「いや、やはり今は無理です。その時がきたら互いに死力を尽くしましょう、」シュナイダーの言葉に角谷はすくっと立ち上がると椅子を蹴飛ばして出て行った。



「今なら、ドックにあるエルゴラントとチェンを奪取できないですかね」アルドリーノは、休憩時間にお茶を飲んでいるビルに言った


「欲しければ捕ればいいじゃないか、今ならあそこの兵士は病人とけが人ばかりだ」ビルはのんびりと茶をすすった。「出来ると思うなら一任するよ」


「ま、飛竜が控えているから無理ですね」アルドリーノは、小さくため息を吐いた。「でも、今後の事を考えると欲しいなぁ」


「飛龍。あればでかい。中に居る兵士も相当な数だろう。どうだ、あれと戦う事になったらどうする?」ジムはにやりと笑った。


「勝つ見込みはありませんね」アルドリーノは、両手を肩まであげて、お手上げというような動作をした。


「我々にできるのは、逃がせることのできる者はあれに運んでもらうくらいさ」ビルは、カップを置いて、手を組んだ。


「それだけではありませんよ、こちらに向かっている猛者もいます」アルドリーノは、笑みをみせた。


「なに?援軍が来ると?」


「はい、あちこちのノードステーションから援軍が来るとの連絡がありました。もっとも少ないでしょうけどね・・・義勇兵といったところでしょう」


「君が要請したのか?」


「まさか、そんなことしませんよ。ただ情報だけは一人歩きをして、動き回っています。そのうち、援軍を纏め上げる人も出てくるでしょう」


「第10ポートのクーパーあたりが血気をあげそうだな、あいつは引退して暇そうだった」


「あの方は人望が厚いですからね」


「しかも過激で、独立心が強い」


「でも、彼からは未だ連絡がありませんよ」


「できれば、戦いは避けたいな」ビルはふっとため息を付きながらぬるくなった茶を飲み干した。



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