交渉3
ノードステーション103の脇に係留された空母飛竜は、まるで宇宙に浮かぶコロニーのようにも思えた。それほどに大きい。
指示された通りに大きく開かれた飛龍の格納庫から中に入ると、そこにはは多くの戦闘機が格納されていた。
当然、それを操る操縦者も多く乗り込んでいる筈だ。ともすれば、兵站船も兼ねているかも知れないという危惧がビル・ナンの脳裏を過ぎった。
あえて、此処を通って来訪をさせたのは、この軍備を見せることで、抗う気持ちを挫けさせるつもりなのだろうなと、彼は考えた。実際、ため息が出るばかりの圧を感じた。
彼は脇にアルドリーノを連れ専用のタグボートのシートに座り押し黙ったまま、ボートの周囲を映しているディスプレイを見ていた
「大きいですね」余りに続く沈黙に嫌気が差したアルドリーノが言った
「ああ、思った以上だ。どうだい、あれを相手にできると思うかね。あの中にはあちこちの惑星との戦乱を生き抜いてきた猛者がうじゃうじゃいるぞ」
「勝てないでしょうね。」アルドリーノはあっさりと認めた。「しかし、猛者ばかりとは限らないでしょう、戦いになるかどうかもあちらの司令官次第ですし」
「嫌な奴だと、殺戮オートマトンを持って来ているかもしれないな」老人は、自分自身不安を煽る言葉を口にした。
アルドリーノはその言葉に一瞬寒気を覚えた。人を認識して致命傷を与える自動機械だ。装甲が薄いので破壊は楽だが、それも命を落とさずに接近できたらの話だ。その上小型で人が入れる場所ならどこでも入ってゆけるから、逃げ場も無い。
「その為に、例の事を極秘裏に行っていたのですか?」
「あんなことはしたくはなかったがね、しかし技術者が少なすぎてね、今は挫折しているところだ。できるなら、こちらの想いを理解していただき、さっさとお帰り願いたいところだ」
やがて、タグボートの操縦を行っていた操縦士が、操縦桿から手を放して椅子から立ち上がると、背中側にある気密ドアを開けて操縦席から出て行った。
そこでは、ビル・ナンとアルドリーノが並んで座っていた。
「空母側の誘導に任せました」男は、ふわふわと浮いたまま、二人の後ろの席まで移動して、椅子に体をつけるとシートベルトを装着した。
制服に身を包んではいるが 宇宙焼けした顔、一本抜けた前歯、そしてぎらついた眼は、いかにも百戦錬磨の船乗りという感じがした。「ドッグにはいりました」
操縦士は、そういいながら首を左右に曲げた、その度にゴキゴキと首が鳴った。
「分かっている。」ビルは、ディスプレイの中に映る多くの戦闘機を見ながら言った。それから肘掛にあるひとつのボタンを押した。すると、室内の壁面の全てが透明にでもなったかのように、外の映像が映し出された
「圧巻だな」ビルはアルドリーノに顔を向けた。若い政治家の卵は、ごくりと唾を飲み込んだ。
「これが我々の故郷である地球が持つ力だ」
上下左右全ては戦闘機だった。彼らのちいさな宇宙船は木の葉の様にゆらゆらと、ドッグの中を進み続けた。




