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暗殺されて平民の娘になった元皇子は元異母弟に求婚される

作者: 日下部ゆいかが




「この隠し通路は、ごく一部の者、それこそ皇族しか知らぬ道だ。なぜ、お前のようなメイドがここにいる?」


喉元に鋭い刃がつきつけられる。

瞬きすら見逃さないだろう、恐ろしい視線に拘束され、少女は心中で呻いた。


やばい。

実は俺がかつてこの城で暗殺された第二皇子だったなんて言えるわけもないし、言ったところで信じて貰えるわけがないのだ。




* * *





アルフォンス・ルフレ・ニヴヘイム。

それが俺のかつての名前である。

世界最大の版図を誇るニヴヘイム帝国の第二皇子として生まれ、この無駄に煌びやかな皇宮で育った。

しかし、三年前に死んでしまい、気が付いたら、なんと平民の娘になっていたのである。

生来の楽観的思考を持つアルフォンスでも、女になった自分は最初は受け入れがたかった。ついていたものがついていないのである。そして、ついていなかったものがついているのである。衝撃に次ぐ衝撃。

夢かと思ったが、夢にしては感覚は鮮明で、いつまで経っても目覚めることがないのだ。しかも、皇宮からは第二皇子暗殺の噂まで流れてくる。

え、俺って、暗殺されたの?

まずその事実に衝撃を受けた。てっきり事故で死んだのかと思っていたが。

もしかして、俺って、幽霊?

殺されて、平民の娘にとりついちゃった?

しかし、平民の娘として生まれ育った記憶もきちんとある。

それとも第二皇子だと思い込んでる、単なるやばい人?

ただアルフォンスとしての記憶も鮮明で、皇城の隅々、そこに働く人々までことこまかに思い出すことができる。

一時は思い悩んだこともあったが、アルフォンスのモットーは、悩む前に動け、なんとかなる、である。

悩んだのも半日ほどで、それだけで飽きてしまった。

何より、せっかくの平民人生、それをアルフォンスは楽しむことにした。

娘の名はアリスといった。

歳は十八。黒髪に青い目、それは奇しくも、亡くなったときのアルフォンスと同じ年齢、同じ色だったのだ。

かつての皇子という立場では願っても叶えられない、自由。それが今の自分にはある。帝都に住む中流家庭で、優しい両親と既に嫁いだ姉が一人いた。

慎ましやかだか穏やかな生活、皇子の身でありながら、そんな暮らしにあっというまに順応したアリスは次第に夢を持つようになった。


海に出て色んな世界を見て回りたい!


それはアルフォンスがぼんやりと抱いていた、外への憧れが起因している。

そうして、アリスは、帝都で一番大きな商会に単身乗り込み、無理やり手伝いを申し出た。最初は女が船旅とは、と鼻で笑われて、まったく相手にされなかった。

平民の女性は適齢期になれば、結婚して子供を産み育てるのが普通だからだ。働くとなっても、メイドや針子といった職業がほとんどで、数ヶ月、下手をすれば数年に及ぶ船旅に参加しようとする女性は考えられなかった。

散々に馬鹿にされたが、アリスは負けずに、下働きからとしつこく頼み込んだ。辟易した商会の人間はどうせすぐに根をあげるに違いないと、男でもきつい雑用仕事をさせることにした。遠慮なくしごかれても、アリスはへこたれずに持ち前の元気さと前向きさで何度も通った。アルフォンスのときも、騎士団に入っていた彼はしごきには慣れていたのだ。女性となり、筋力や体力はかなり落ちてしまったが、負けん気の強さは変わらずに、馬鹿にしてくる相手が根負けしてしまうまで続けた。そんな日々が続き、すぐに投げ出すと思われた娘がどれだけ馬鹿にされても侮られても気にせず働く姿を見て、一人二人と、見る目を徐々に変えていった。それどころか、ちょこまかと元気に動く少女の姿がいないと寂しい気持ちになるまでになってしまった。

とくに、副会長のクレイヴは、早くからアリスの根性を気に入っており、何にでも興味を示す彼女を面白がって、商談につれて行ってやったりした。

とある商談のとき、遠い異国から来た商人が披露した最高級と称される魔石類の中に贋作が紛れこんでいて、アリスがそれを見破るという事件が起きた。

最初はケチをつける気かと、相手の商人が怒りだしたが、クレイヴはそれをうまく宥めて、正式な鑑定に出すことにした。すると、プロでさえ騙されるほどに、精巧に作られた贋作だと判明したのだ。

だてに皇子として、皇宮で暮らしていたわけではないのだ。

本人は宝石やら美術品やらに一切興味がないが、最高級品が身の回りにあるのが自然だったので、知らぬうちに見る目が養われていた。

あれ、なんか輝きが違うくね?なんかちょっと前に見たのとは違う気がする、というかんじで、なんとなく見破ってしまうのだ。

他に武器、とくに剣については、皇子時代から好きだったので、知識があった。

平民の娘のくせに何故か本物を見抜き、武器に詳しい存在。クレイヴはますます面白がった。

似たようなことが何度かあって、商談につれていくのが当たり前になり、商会はとうとう彼女を正式に認めたのだった。


いずれ船で海に出て、世界を見よう。

両親は最初は卒倒しそうな程に驚き、適齢期の娘が船旅なんてとんでもない! と大反対をしたが、アリスが地道に説得を重ねたおかげで、最近では諦め気味だ。


夢はもうすぐに叶う。

しかし、この国を出る前に、アリスには一つだけ心残りがあった。

それは、かつての忠実な側近であり、そして幼少より共に育った兄弟同然の親友、ユリウスのこと。

賢くて、一見冷たく見えるけど、誰より優しい奴。

他にも一目でもいいので会いたい人間が皇宮にいた。

もはや、アリスをアルフォンスとわかる人はいないだろうけど、元気そうな姿を見てから、世界を旅したいのだ。


そういうわけで、商会の伝手を使って、皇宮で働くメイドになったというわけだ。






う~ん、かつて皇子として暮らしていた皇宮でメイドとして働くって、新鮮だなぁ。

水色のメイド服を着たアリスは、皇宮の庭の端っこを掃除しながら、しみじみと思う。

よくつまみ食いをしに行っては料理長にしぼられた厨房は、相変わらず忙しそうだ。

愛馬のいる厩舎――そういえば、俺の愛馬はどうしてるんだろう、元気かな。

騎士団の訓練場――騎士団に所属していたアルフォンスは毎日のように鍛錬しに通っていた。下手をすれば自室にいるよりも、訓練場にいる時間の方が長い日もあった。

武器を見に通った武器倉庫――通う内に仲良くなった倉庫番の兵士は、勉強をサボって抜け出したアルフォンスをよく匿ってくれた。すぐに、ユリウスには見つかって叱られたけど。

当時の記憶が甦ってますます懐かしく感じた。あちこちに顔を出していたおかげで、顔見知りは多く、思わず声をかけそうになってアリスは慌てた。

危ない危ない。今は平民の娘のアリスで、あっちは俺のことはわからないんだから。

少し寂しい気もしたが、仕方ない。アリスはすぐに気を取り直して、メイドとして掃除をしていた。

当然、新参の平民出のアリスが奥の宮で働けるわけがない。

会いたい人間のほとんどが奥にいるため、アリスはまだ目的を果たせてなかった。


どうにかして、入れないかな。

それにしても、なんか変わったなぁ。


皇宮は以前と変わりない筈なのに、雰囲気はまったくといっていいほど、様変わりしていた。

率直に言うと、かなり雰囲気が悪くなっていて、なんというかじめじめと暗く、ぴりぴりしている気がする。

すぐにメイド達と仲良くなったアリスは、皇宮に広がる様々な噂を聞いた。まずは現在の皇宮がどんな状況にあるのか、把握が第一である。

その中にある不穏な噂を聞いて、皇宮の空気が悪い理由がわかった。


アルフォンスが三年前に死んだのは、表向きは事故死ということになっているのだが、そんなことを信じる者はいず、暗殺されたと誰もが思っていた。それは帝都でも噂になるほどなのだ。

相手も公然の秘密と言っていいくらい、裏で堂々と囁かれていた。アルフォンスを暗殺をしたのは、以前から彼を邪魔に思っていた、第三皇子なのだと。

アルフォンスの実の弟である、オスカー・シュタール・ニヴヘイム。

ただ母親は違う。アルフォンスの実母は正妃で、オスカーの実母は側室だった。そういう関係性もあって、確かに、オスカーとアルフォンスは決して仲が良い兄弟でなかった。

アルフォンスとしては、オスカーは弟だし、嫌いではなかったのだが、相手からは徹底的に避けられていたのだ。だから、彼に暗殺されたという噂を聞いたとき、納得したくらいだ。


どちらかというと、本人というより、周りのせいだと思う。

まあ、それはもう仕方ないんだが。


死んでしまった今、どれだけ考えたところで意味はない。

それより現在問題なのは、いまだに皇位争いがおさまっていないということだ。


そう。アルフォンスが死んで、皇帝の嫡子としては第三皇子であるオスカーしか残されていない。第一皇子はアルフォンスが暗殺される前に事故死した。アルフォンスが暗殺されたのも第一皇子の死により、皇位継承権が移ったせいなのだ。

てっきり、とっくにオスカーが次期皇帝として皇太子の座にいるのかと思ったら、皇太子の座は空位のままらしい。

それだけでも驚きなのに、なんと、あのユリウスが、皇帝の庶子、しかも次期皇位継承者候補として、認められたのである。

そのせいで、ユリウス派とオスカー派との泥沼の争いが続いているようだった。


あのユリウスが、まさか兄弟同然だと思ってたら、本当に異母弟だったのか。

死んでから判明する真実におおいに驚いたアリスだった。

彼は知っていたのだろうか。

ちなみにアルフォンスはまったく知らなかった。ずっと一緒にいたが、気づきもしなかった。

ユリウスは、幼い頃に小間使いとして皇宮につれてこられた。

最初は野良猫のように、周りを威嚇をして警戒心が強い奴だった。

なんだか放っておけなくて、アルフォンスは彼を構った。そのうちに彼も徐々にアルフォンスに慣れてきたのか、あとをついてくるようになったのだ。

ふと、思い出に浸ってしまい、アリスは首を振る。



やっぱり、あいつを一目見ないことには始まらない。

皇宮の隅で掃除するために、メイドになったわけではないのだ。さっさと目的を果たして、海へ出る。

そう決意して、アルフォンスはこっそりと人目をさけて、皇宮の奥へと進んでいった。

アルフォンスを実際に暗殺するほどに皇帝の座に執着しているのだ。そんな彼らがユリウスに対して躊躇する理由などないだろう。アリスは何よりユリウスの身が心配だった。

アリスにとって皇宮は勝手知ったる場所であり、隠し通路や抜け道も知っているので、こっそりと探り、ユリウスの身を守ろうと思ったのだ。

しかしまさかその途中で、目的の人物に発見されたあげくに拘束されてしまうだなんて、思いもしなかった。




突き刺すような殺気を肌に感じながら、アリスは冷や汗をかいて、言葉を探す。

目的の人物に会えたのは良いけれど、状況はちっともよくなかった。こっそりと少し遠くから見るだけでよかったのに、なんという失態。

ちくしょう。しかも背後をとられるとは、悔しい。

平民になってからは、ろくに鍛錬もできていないのだ。しかも女になったせいで、筋力も劣ってしまい、以前のように動けなくなってしまった。

三年ぶりに直面したかつての幼馴染兼側近は、すっかり大人になっていた。アルフォンスより一つ年下だったユリウスは、以前は彼より身長が小さかったのに、この三年の間にアルフォンスをすっかり追い越して、アリスより頭一つ分以上は高くなっていた。女のようだとよく揶揄われていた容姿も、精悍さが加わり、今はもう誰も揶揄などできないだろう。変わらないのは、銀に近い金色の髪に紫色の双眸だけだ。

しかし、見た目よりも何よりも、一番変わってしまったのは、その表情だった。


「早く吐け、女。誰の命を受けてこの場にいる?」


「え、えっとー、えっと、な、なんとなく?」

「なんとなく、だと?」

慌てすぎてうまい言い訳が見つからずにふざけた返答になってしまった。

案の定、殺気の滲んだ剣先が頸動脈へあてられて、アリスはひゃっと心臓が跳ねた気がした。

「あ、いや、勘っていうか、なんか、隠し通路ありそう的な予感が急にして」

ああ、なんでこう咄嗟の言い訳がこんなにもアホっぽいのか。本当に決して、ふざけてるわけではないのだ。しかしそんな言い訳がユリウスに届くはずもなく。

「間者にしては酷く低能だな、この場で貴様の命を」

「わー、待て、早まるな!」

てか、今この俺のことを低能って言ったな?

お前、俺はかつての上司だぞ!

兄でもあるんだぞ!上司兼兄を馬鹿にしたぞ、今!

「ユリウス! 俺だよ、アルフォンスだ、今はアリスっていうけど、あのアルフォンスなんだって! 」

途端に、ユリウスの秀麗な面が心底不愉快そうに歪められ、アリスはしまったと思った。

やばい。これは相当怒っている顔だ。

「貴様は、何を言っているのか理解しているのか。アルフォンス皇子殿下は三年前に亡くなられた」

「そう、死んじゃって、気がついたら、女になってな。さすがの俺も最初は信じられなくて、何度も風呂場で確認を」

「黙れ」

「!」

一瞬で気温が下がったのかのように、周囲の空気がぴり、と張り詰める。ユリウスから魔力が滲みだしているのだ。

多くの魔力を持つユリウスの、感情が高ぶると出る現象。逆鱗に触ったかのように、平民となったアリスの身には抗う力はろくになく、まるで蛇に睨まれた蛙のように、身動きがとれない。

「私の前で、あの方を騙るとは、しかも平民の女風情が、皇子の生まれ変わりだと? 馬鹿げた妄想を晒すな、見苦しい」

怒気が膨れ上がり、今にも斬り捨てそうな勢いにも、アリスは負けじと、真正面から視線をぶつけあって叫んだ。

「まじなんだって! 抜け出すときに何回も通ってたから皇族しか知らない通路だって忘れていたんだ、ごめん! 次からは気をつけるから!」

「まだ、気狂いを続けるのか。貴様に次などない」

「騎士の聖剣が暁を突き、光が生まれ、闇は夜に隠れた!」

「!」

それは幼い頃に二人の間で決めた合言葉だった。

ちなみに、帝国建国を果たした聖騎士の一生を描いた有名な叙事詩の一文で、アルフォンスの好きなくだりだった。よく二人で聖騎士の真似事をしては遊んでいたのだ。

一瞬の油断を見逃さず、アリスは次々とユリウスと二人しか知らぬ秘密を並べていった。幼い頃から、一緒に、というか殆どアルフォンスが提案して、無理やりユリウスにつきあわせた悪戯や失敗の数々、その内容を。重臣の知られたくない恥ずかしい秘密もばらしてやった。

正体を話すつもりはなかったのだが、しかし、またもやこんな若い身空で、二度も死にたくないのだ。今度こそは、長く気楽に生きたい。海に出て、世界を巡るのだ。

なので、アリスは必死だった。

「なぜ、貴様がそれを……それは、私と殿下しか……」

驚愕の色に染まっていく。きわめつけは、彼女が、アルフォンスが焦っているときによくする癖――右目だけ瞬きを連続でする、をしていたからだ。

「……」

滲み出ていた魔力が消えていき、アリスはほっと安堵した。いつもの冷静さを取り戻したのだろう。

「……確かに、殿下と私しか知らぬことをお前を知っているようだな」

「そ、そうだろう? 信じてくれたか?」

ぱっと目を輝かせるアリスに、ユリウスは目を細める。

「いいや、それだけでは信じがたい」

「ええっ、どうしたら信じてくれるんだ。間者なんかじゃない。少しお前の顔を見にきただけだというのに」


「……ついてこい」


顎で先を促され、アリスは素直についていく。

とりあえず、この場で問答無用で斬り殺されなくて安心した。しかし、いまだ、ユリウスの警戒心は解け切っていない。

まあ、当然だが。

当事者であるアルフォンスでさえも、最初は信じられなかったのだ。

突然に聞かされたユリウスが混乱するのも無理はないだろう。


一体どこに行くのだろう、と思っていると、皇宮の奥にある、塔にたどり着いた。

「ああ、成程」

「……ここが何かわかるか?」

「皇族しか入れない塔だろう。歴代の皇族の所有していた武器やら骨董品がたくさんある……昔はここに忍び込んで、叱られたよな」

歴代の皇族にはアルフォンスのように武器が好きで収集家もいたので、珍しい武器が仕舞われていたのだ。それが見たくて、こっそりとアルフォンスは忍び込んでいた。いくら皇子とはいえ、無暗に入ってはいけない場所だった為、見つかっては説教されていたが。

「……そうだ」

そう返答しながらも、ユリウスはいまだ半信半疑のようで、アリスを訝しげに凝視していた。

その塔の扉には魔法がかけられており、皇族がいないと入ることができない。入れるか否かで、アリスの言っていることの真偽を判断するとのことだろう。


「う~ん、でも体は平民の娘であって、入れるのかわからんぞ」

「魔法陣は、肉体ではなく、魂に触れて判断する」

「あ、そうだったか。じゃ、いけるかな」


アリスの手が扉に触れると、そこに描かれた魔法陣が光を放って浮かび上がると、扉がすっと消えた。

その先に現われたのは、壁に色々な武器がたてかけられた、薄暗く広い部屋。奥へと続く扉、高い位置にある窓から少ない光が差し込んでいる。

長く閉め切られた部屋の中の独特な臭いすら懐かしく感じてしまう。

「おーっ、よかった、開いたか」

「……まさか、本当に」

ユリウスは目を見開いて、呆然とした様子で呟いた。

「とりあえず、間者じゃないということはわかってくれたか?」

何故か得意げに胸を張って、アリスはそう言い放つ。口元を手で押さえたユリウスが、難しい顔をして考え込む。しばしの沈黙があったが、ふうっとため息が落ちたと思うと、ユリウスは観念したかのように頷いた。


「……そうですね、それは認めましょう」


「あー、よかった、よかった。お前が頭の良い奴で助かった。じゃ、とりあえず、これで」

「待て」

アリスが引き返そうと背を向けると、がしっと肩を掴まれる。

「えっ、なんで引き止めるんだ」

「何故、引き止められないと思ったんです?」

呆れた様子のユリウスに、アリスこそ同じように呆れをのせて見返した。

「……今、俺は、平民の娘だぞ?」

「そんなことは関係がありません。とりあえず、貴女を元の場所に戻すわけにはいけません。こちらに来てください」

急に口調が変わってしまった。皇子時代によく聞いた口調だ。

がらりと変わった様子に、アリスはうろたえる。以前の彼に戻ったのは嬉しいが、ここに来た本来の目的を思い出して、焦りだす。当初の予定からかなり外れた展開になってしまった。

「ええっ、しかし今は下働きのメイドなのに、奥にいてたら、明らかにおかしいだろう」

「不法侵入罪」

「うぐっ」

「皇族に対する不敬罪」

「ぐぐぐっ」

痛い事実をつかれ、反論を失ったアリスは、逆らうことをやめて、ユリウスに従うことにした。昔から、口でユリウスに勝てた試しがないのだ。

それに、そのときは、すぐに解放されると思っていた。


しかし、そんな予想は覆され、皇宮の奥の宮にある豪華な部屋へつれていかれると、専用の侍女と護衛の騎士までつけられ、アリスは部屋から容易に出ることができなくなってしまった。



侍女達に取り囲まれ、着せ替え人形のように華やかなドレスを着せられ、アリスは一人憤慨していた。

様子を見に来たユリウスを見るとすぐさま訴える。

「おおい、どういうことだ!」

「どうもこうもありません。アルフォンス様が皇宮に戻られたのですから、ふさわしい場所をご用意しました」

「いやいやいや、そんなことを思っているのはお前だけだって。皆明らかに不審に思っているぞ!  俺を見て、ぎょっとされたぞ」


仲良くなった侍女にも色々と教えてもらった。

今まで、平民どころか、貴族の姫君達すら相手にしていないユリウスが、アリスを自分の宮につれこんだという噂は衝撃をもって広まってしまったらしい。

次期皇位継承を争っている危うい時期に、一体何を考えているのかと、オスカー派だけでなく、ユリウス派もやきもきしているようだ。それもそうだろう。アリスでさえ、まずい状況だとわかる。

昔から聡明だと有名だったユリウスがそのことに気付かない筈はないのだ。


「お前、命を狙われているんだろう!? 大丈夫なのか」

「そのことなら、問題ありません」

アリスの心配は杞憂だというようなユリウスの淡泊な反応に拍子抜けする。皇位継承権など気にもしていないそぶりで、どこから見ても彼が皇帝の座を狙っている様子はうかがえなかった。

そもそも、昔から、ユリウスは権力や金には一切興味を示さなかったのだ。

他にも護衛の騎士に聞いたところ、ユリウスはとくにアルフォンスも所属していた騎士団の支持を受けており、またその他にも強力な貴族も味方につけているようで、第三皇子派を凌駕しそうなほどらしい。そういう背景もあって皇帝も彼を候補として認めざるを得なかったらしい。

昔から何をさせても優秀で、周りから一目置かれていたが、この三年の間にそれほどの力をつけるとは。心の中で感心していると、ユリウスがじっとこちらを見ていた。

「どうした?」

「……決めたのです」

「……何を?」

何か嫌な予感がする。

しかし、アリスは続きを聞くしかなかった。


「皇統を継ぎます。そしてあなたを正妃にする」


「は? 何を言っているんだ」

最初、アリスは聞き間違えたのかと思い、聞き返した。

「お前、皇帝なんかに興味ないだろう」

「ええ、そんなものに興味はありませんが……」

ユリウスの返答にアリスはそうだろう、と頷いた。しかし状況は変わりました、とユリウスは言葉を続ける。

「本来ならば、皇帝の座にあなたが就くはずだったのです。しかしこうなっては、あなたには、帝国の国母となって、この先連綿と続く帝国の栄光の道を敷いていただくしかありません。遠回りしましたが、やはり神はあなたが帝国を統べるにふさわしいと思ったのでしょう。大丈夫です、邪魔な奴らはすべて私が消しますから」

「はっ!? 真面目な顔でとんでもないことを言うな! 今の俺は平民だぞ!? 正妃どころか側室も無理だってば」

アリスはただ唖然とするしかなかった。

帝国を統べる皇帝の正妃となれば、一国の王女、もしくは公爵家といった高貴な女性を据えるのが普通だ。というかそれ以外は許されないし、平民だなんて側室どころか、愛妾の座も無理だろう。事実、ユリウスの実母は貴族でなかったため、最後まで皇宮に迎え入れられることもなかったし、実子であるユリウスも庶子とすら今まで認められなかったのである。一番理解している筈のユリウスがそんなことを言い出すとは、アルフォンスは驚きしかない。

「そんなものはどうとでもなります。適当な貴族の養女にでもすればよいし、あなたが貴族の血を引いていることにすれば問題ありません。既に途絶えた貴族を調べさせます」

真面目な顔で不穏なことを話し出すユリウス。本気でやりかねないその様子に、アリスは戦々恐々とした。

「待て、堂々と不正をするな!しかもお前が皇帝で俺が正妃って、精神的には男同士ではないか! 無理だぞ! 俺はまだ心は男なんだよ!」

「私も男同士なんてありえないですが、現在あなたは女性なのだから、問題ありません」

平然と恐ろしいことをのたまうユリウスに、アリスは慌てた。

やばい、話が通じない。昔はもっと話が通じていたはずなのに、今は奴が何を言っているのかわからない。いや、意味はわかるが、わかりたくないというか。

「いやいや、大問題だ、俺が無理だってば」

「慣れれば問題ないでしょう」

「慣れとかそういう問題じゃない! 永遠に無理だってば! お前となんて無理!」

ユリウスと夫婦だなんて、想像できない。想像しようとすることすら、恐ろしい。

アリスが断固拒否すると、ユリウスは明らかにむっとした顔をした。心外、といった表情だ。何故そんな反応をされなくてはいけないのか。心外だと言いたいのは、アリスの方だ。正しいことを言ってるのはアリスの筈なのに、まるで間違っているのはこちらだと言わんばかりの態度である。

「ならば、不法侵入罪と皇族である私への不敬もあわせて、暫くあなたは解放されません」


「えーっ、ひどい! 見逃してくれた筈だろう!」


アリスの必死の訴えもむなしく、執務があるからと呼ばれて、ユリウスは去っていってしまった。

そのあと部屋に戻ってきた侍女が、「ユリウス様があんなに感情を露わにするになんて、アリス様は本当にすごいお方ですね」と感心した様子だったが、アリスにはまったく意味が不明だった。




ああもう、埒があかない!

元々、お姫様な生活など、アリスには我慢できない退屈なものなのだ。軟禁状態に辟易したアリスは、もうここを出よう、と決意した。

当初の目的である、ユリウスの元気そうな姿は見れた。まさか軟禁されるとは思わなかったが、潮時だ。これ以上アリスがここにいることは、ユリウスにとってもよくないことだろう。

アリスは、侍女の目を盗んで、抜け出す計画をたてた。扉の前には護衛の騎士が立っているので、脱出口は窓しかない。二階だが、工夫をすれば出られる高さだった。

アルフォンス時代から、抜け出すのは得意だったのだ。簡易なワンピースに着替え、計画通りに窓から脱出成功したアリスは、とりあえず、帝都にある自宅へ戻ろうと思った。

奥の宮から中央の宮に出ようとしたところ、アリスは不意に立ち止まる。


「……」


アリスは無言で辺りを窺う。細かい人数まではわからないが、取り囲まれている。いつのまにか尾行されていたのだろう。

十中八九、ユリウスを狙う第三王子派に違いない。

「出てこい」

ちょうどむしゃくしゃしていたのだ。隠し持っていた短剣を二本取り出して、アリスは周囲を挑発した。

がさり、と茂みの中から数人の男が出てくる。にやにやと余裕の笑みを浮かべながら、アリスを取り囲んだ。

「意気の良いお嬢さんだ」

「さすが、あの金獅子の選んだ娘、と言ったところか」

「金獅子、ってユリウスのことか?」

「無論」

それぞれが剣といった武器をもっていた。煌びやかな皇宮にそぐわない、物騒な男達にも、アリスは怯むことなく、短剣を両手に構えた。

帝国の第二皇子として生まれ育ち、騎士団にも所属していたアルフォンスは、賊の討伐に隊を率いたことも何度もあるし、その際に殺した経験もある。もっと多くの敵兵に取り囲まれたことだってある。それに比べたら、この程度の男達など怖くもなんともなかった。

ただ単なる平凡な娘になってしまったので、以前のように動くことはできない。だが、それでも護身程度の力は身に着けていたのだ。騒ぎを聞きつけて衛兵たちが駆けつけるまでの時間稼ぎはできると踏んでいた。

そのアリスの予想通り、すばしっこい少女の動きをとらえることができず、男達が手間取っている間に、こちらに向かってくる数人の軍靴の音が響いた。


「アルフォンス様!!」


衛兵かと思ったら、一番最初に駆け付けたのはユリウスと騎士数人だった。

「ユリウス!」

驚きながらも助かった、と思ったアリスは、すぐにユリウスの様子がおかしいことに気付いた。いつもの冷静さは消え失せ、冷たく鋭い魔力を放ちながら、容赦なく、男達に斬りかかる。

「ぐぁっ!?」

「ひぃいっ!!」

残る男達には火炎の魔法を浴びせ、全身火だるまにしようとした。悲鳴をあげて、地面に転がる男達。致命傷を負い、倒れ伏す男に、なおも止めを刺そうと刃を振り下ろすユリウスを、アリスは慌てて止めた。

「よせ! 殺すな、ユリウス!」

ユリウスと男の間に入り、彼の剣先を短剣で受け止め、違う方向へ流す。

「何故止めるのです! 貴女を二度も殺そうとした奴らを絶対に許しはしない!」

「落ち着け、ユリウス!」

激昂し、殺すことを望むユリウスから剣を叩き落としたアリスは、思いっきり彼の頬をひっぱたいた。

「早く火を消してやれ!」

「は、はいっ!」

アリスに命じられ、その気迫に圧された騎士達はつい従ってしまった。



からからと、ユリウスの右手から落とされた剣が空しく音をたてて、地面を滑る。それを視界の端に留めながら、ユリウスは、アリスの指示に従った騎士に連れていかれる男達を視線で追う。

打たれた頬がじわじわと痛み出した。


――どうして、あなたは殺されたというのに、恨んでいないのですか。


アルフォンスと同じ色の髪、瞳を持つ少女を眺めながら思う。

彼女から、恨みや後悔といった負の色は何も感じられない。

つい先ほど襲われたばかりだというのに、かつての自身を殺した敵達だというのに、それをあっさりと受け入れてしまっている。そして、次の生へ進んでいる。

――私を置いて、先へ進んでしまう。


そうだ、この方はそういう方だ。

初めて出会ったときから、まっすぐにこちらを射抜く、彼の心の有様をそのまま映したような、透き渡る青空の瞳。

ひたすらまっすぐに前を向き、懐が大きくて、どんな人間もそのまま受け入れて、味方に引き入れてしまう。そういう方だから、自身を殺した相手も、理不尽な最期も受け入れてしまえるのだろう。

だからこそ、周りの者は彼に惹かれ、器の小さな第三王子は彼を拒んで妬み、あげくの果てに殺してしまった。


――だからこそ、そんなあなたを自身の欲望のために殺したあの男を許すことはできない。

どんな手を使っても、あの男をこの手でこの世界から滅ぼす。己のしでかした罪を心の底から悔いさせてから。








ひっぱたいてから、俯いてしまってぴくりとも動かくなってしまったユリウスに、アリスはさすがに気まずい思いが浮かんできた。


ちょっと、ひどかったか。

こいつは俺を守ろうとしたのに。


思いっきり平手打ちをしたが、所詮は少女の力だ。アルフォンスのときと違って、そこまで痛みはないと思ったのだが。まるで絶望したような重い空気を背負っているユリウスが心配になって、アリスはおそるおそる声をかける。

「なぁ、引っぱたいて悪かったよ」

「何故……」

「うん?」

ぽつり、と絞り出したような小さな呟きが落ちて、アリスは優しく聞き返した。

「何故、あなたは理不尽に殺されたというのに、何も恨んでいないのですか」

それは今まで聞いたことのないような、苦しみを抱えた声だった。


「全てを奪われて、恨まないでいられるのですか……私には何も許すことができない」


「ユリウス……」


「あの男を滅ぼすまで、たとえ滅ぼしても……あなたを失い、守れなかった私はもうどこへもいけない……」


ユリウスの周囲に魔力が滲みだし、彼の感情を表すかのように、冷たく、重く、まるで泥のように、彼の身体を覆っていく。

アリスは呆然と、今まで見たことのないほどに弱さと苦痛を吐露するユリウスの姿を見下ろしていた。


「死を選んでも、あなたと同じ場所へはきっといけない。いつも、あなたは私を置いて行ってしまう……」


「……」


白くなるほどに握りしめた彼の手を見詰めながら、アリスは唐突に理解した。

ユリウスが一番憎悪を抱き、呪っているのは自分自身なのだろう。



「なぁ、死んで悪かったよ……」



なんで殺された俺が謝ってるんだろう……。

そう思いはしたが、アリスは目の前で嘆き悲しむ存在を、放っておくことはできなかった。

皇宮で三年ぶりに会った彼は、とてつもなく冷たい、暗い目をしていたのを思い出した。初めて出会った頃の、周囲をすべて敵だと思っていたようなあの頃よりも、もっと酷く痛ましい。

誰よりも優秀で、強く、賢く、自慢の側近だった。兄弟のようにずっと一緒に育って、誰よりも信頼していた。

そんな彼がここまで自分のことで苦しんでいたなんて、想像もできなかった。

アリスが俯くユリウスのすぐ傍で膝をつき、彼の肩に手を置く。



「俺のことでそこまで辛い思いをさせてすまなかった。だが、こうして俺は新しい生を歩んでいる。誰も恨んでいない。あいつを殺してほしいだなんて思ってもいない。

……もう仕方ないことなのだ。過去に戻ることもやり直すこともできない。

だから、お前もこれ以上危ない真似はするな。お前の人生を歩んでくれ。 お前の苦しむ顔を見たくないんだ」


自分の死よりも、それによって、ユリウスがこの先不幸になるしかない道を選んでしまったことが何よりも辛いことだった。


「何より、自分を許してやってほしい。お前には幸せになってほしいんだ――俺の大切な弟だから」


ずっと近くにいたのに、弟だと気付いてやれなくてすまない。それでも弟とは気づかなくても、大切だと思っていたのは本当だ。だから、その気持ちをこめて、伝えた。

一度死んでいなければ、こんなことを直接本人に伝えることはなかったのだろう。





「……わかりました」


「あれ?」


復活はやくない?


滲み出ていた泥のような魔力はすっかり消えていて、ユリウスはいつもの冷静な紫色の双眸をこちらへ向けていた。

なんか距離が近いような気がする。

「他ならぬあなたがそうおっしゃるなら。先程、私の苦しむ顔を見たくないと、おっしゃいましたよね?」

「え」

「私には幸せになってほしいと」

念を押すかのように詰め寄ってくるので、アリスは気圧されながらも頷いた。

「あ、ああ、言ったけど……」

「じゃあ、結婚してください」

「いやいやいや、だからなんでそうなるんだよ!?」

結局、その話に戻るんかい!とアリスはつっこみながら、大声を上げた。

「今のあなたと一緒にいれる方法はそれしかありません」

「いや、別に結婚しなくてもさ、お前のことを忘れることはないし、たまには会ったりするくらいはできるんじゃないか?」

皇族と平民という関係になってしまったので、普通に会うことは難しいだろう。しかし、こっそりとなら、いけそうな気がする。まあかなり無理をしないと駄目だろうけど、と心の中で思っていると、ユリウスは、きっぱりと却下した。

「それでは、私は満足できません。私はあなたのお傍にいると誓ったのです。永遠に」

あ、駄目だ、これ。

絶対引き下がらない顔だ。

長年の付き合いから、アリスは彼の固い意志が痛いほどに伝わってきた。

しかし、かといってアリスも、はいそうですか、と頷ける問題ではない。


「い、今はお前も混乱してるんだよ、な! 落ち着いて、何日か経ったら、冷静になれるから!」

とりあえず、時間おこう、そうしよう、とアリスは早口でまくしたて、相手の返答を奪った。どうするかと思っていると、ユリウスの無事を確認しにきた騎士団の騎士達がこちらに向かってくるのが見える。

チャンスだ。

「隙あり!」

「!」

「じゃあ、またな! とりあえず、お前は冷静になって考えろ! 話し合うのはそれからだ!」

それだけ言って、騎士達に一瞬の気をとられた彼の隙を狙って、皇城の門に向かってアリスは全速力で駆け出した。足の速さにはアルフォンスのときも、アリスのときも自信があるのだ。

騎士の奴らも、ユリウスの安全が第一だろうし、無理やりに今追ってくることはないはずだ。


息切れするまで走り、帝都へ下る道まで出る。そこでやっと速度を緩め、後ろをそっと振り返る。追っ手はいないようで、アリスはほっと大きなため息をついた。



ふう、やばかった。

まあこれで、一番気懸かりだったあいつの無事も確認できたし、ちょっくら遠くにいくか。

旅したかったし。

その間に、あいつも少しは冷静になるだろう。

そうじゃなきゃ、元男で、元異母兄に求婚なんてするわけないしな。

ははっと軽く笑って、アリスは、ユリウスはあくまで今はちょっと混乱しているだけだと思った。

もうアルフォンスは新たな生を謳歌しているとわかってくれただろうし、ちゃんと恨んでいないって話したし、前向きに生きてくれると、そう信じていた。

ユリウスなら、大丈夫。

強いし、頭良いし、なんでもできるからな。

ちょっと船旅をしてる間に冷静になるだろう。話し合いはそれからだ。

半ば言い聞かせるようにして、アリスは前を向いて、両親が待つ家へ戻る道を急いだ。







「……逃がしませんよ」

小さくなるアリスの背中を見つめながら、ユリウスはふっと笑う。

それを偶然見てしまった騎士はぎょっとして、思わず身を引いた。

ユリウスの笑顔など、アルフォンスが暗殺されてから失われていたものだからだ。








――アリスは知らない。


ユリウスのアルフォンスへの執着の深さを。

劣悪な境遇で生まれ育ち、周りを嫌悪し自身すら嫌悪の対象だった彼にとって、光とぬくもりと居場所を与えてくれたアルフォンスはまさしく聖域であり、彼のいない世界など塵芥としか思っていないことを。

アルフォンスの魂が生まれ変わっていると知った今、今度こそ、一生傍にいることを誓って、なりふり構わずにいることを。

そして、それだけでなく。

このあと、ユリウスに劣らず、アルフォンス至上主義の騎士も加わり、逃げ道をことごとく塞がれ、先回りして、皇宮に連れ戻されるとは。

あげく、皇子時代の婚約者だった公爵令嬢まで、アリス包囲網に加わることになるとは、このときのアリスには到底予想もつかないことだった。







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[良い点] 面白かったです! 連載化しないんですか……?
[一言] 続きが欲しいの…(笑)
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