舞踏会で無視されて壁の花でしたが、しかしそこであの襲撃の犯人に知り合いが関係していると聞きまして…
「退屈ですわ」
「殿下と踊らなくていいのかアデリア?」
「今は喧嘩中ですのよ、お兄様、口を聞きたくないのですわ」
私は壁の花となっています。舞踏会でただぼうっと突っ立ち、お兄様がおろおろとするのを見ていました。
殿下は私を無視して、他のご令嬢とワルツを踊っています。
「喧嘩か、そうだな婚約破棄……」
「それはまだですわ」
私はどうしてあんな思わせぶりなことを言っておいて、華麗に無視しますのと腹が立ってきました。
みーちゃんに聞いてみようかと思いましたが、会わせてもらえません。かー君もだんまりでした。
「……少し踊るか?」
「そうですわねお兄様」
私はお兄様と手を取り合って踊りだしました。でも舞踏会っていつ来ても退屈ですわ。
お嬢様たちのお婿様選びの戦場ですけど、私はもう関係ないですし。
「しかしカディスがついていながら……」
「かー君が私の守護についたのはどうしてですの?」
踊りながら私たちは会話をしています。お兄様が確かカディスがお前の守護を希望したからだなと答えますが、でもねえ。
「跡取りの守護につくがの普通では?」
「いや、確か跡取り以外の守護にもついてたしな、あいつ」
どうもかー君のことも調べなおす必要がありそうですわね。私はお兄様くらいしか踊る相手がいないのが少し悲しいとは思います。
まあ王太子殿下の婚約者を踊りに誘う人もいないでしょうが。
「……終わりだな」
「かー君はだんまりですし、今回の襲撃について少し調べておいてくださらないお兄様」
「わかった」
かいつまんでお兄様にはお話ししましたが、しかし私もボケっとしているわけにはいきませんわなどと思っていると。殿下がにっこりと笑って疲れた? などと聞いてきます。
「疲れていませんわ!」
「そう、なら僕と踊ってくれませんか、アデリア嬢」
「お断りしますわ!」
私は殿下の差し出した手をたたいて、踵を返しました。だってにっこりと笑って知らんふりをする殿下の相手なんてする気分じゃなかったのですわ! お兄様は苦笑いしていますし。
私はどうも殿下は何かを隠しているというのはわかったのですが、誰も教えてくれない現在に不満を感じていました。
私はバルコニーに出て「かー君、出てきてください」と声を掛けます。
『なんだ? アデリア』
「あなたと、みーちゃんの関係くらいは教えてくださいまし、二人は知り合いですのよね?」
『古い知り合いだ』
二人は知り合いで、もともとはかー君は蛇の姿をとっていなかったというのは聞きました。でも蛇に円が深く、蛇の体に入ってしまったと。みーちゃんもそうだと聞きましたわ。
「なら、二人は一体どういう関係ですの!」
『同じ守護精霊だ』
「でもみーちゃんは世界を破滅に導く力を持つってあのおじいちゃん賢者が言ってましたわ。蛇の体に封印したって!」
『あれはそんなことはせんよ』
「ふうん、よくわかりますわね」
『……』
黙り込むかー君、どうしたって私をのけ者にしますのよね、私がため息をついたとき、後ろから声をかける人物がいました。
「あら、アデリアさん、お久しぶりですわ」
「マーゴットさんお久しぶりです」
「あなたが王太子殿下の婚約者に選ばれるなんてね!」
「はあ」
おーほほほほと高笑いをして扇をひらひらさせるマーゴットさんは、イヴリス侯爵の家の令嬢でした。
しかし、殿下に見向きさえされず、いまだに婚約者が決まらない。それがあって学園時代から私へのあたりは強かったのですが。
「そういえばお聞きになりました?」
「え?」
「隣国の魔法協会で騒ぎがあったそうですわね。暴漢が魔法使いたちを襲ったとか」
「はあ」
どうもあの研究会の騒ぎはそういう感じで話をごまかしたようです。私がそう考えたとき、
「そういえば、あの襲撃は魔法協会の支部長が起こしたものだったとか」
「え?」
「たしかあなたのお友達のジルさん、支部長の補佐でしたわよね。大変ですわね~」
私はそんなことがあるはずと思って聞き返しました。しかし支部長が襲撃の犯人であり黒幕だと聞いたと言うのです。
私は失礼と彼女にあいさつし、あわてて会場に戻り殿下を探しましたが、見つかりません。
「……ジル殿が」
「支部長が……」
そして殿下の部屋までたどり着くと、中から殿下と男性の声が聞こえ、支部長が処罰され、ジルが連座になるかも……という会話が聞こえてきました。私が驚いて扉を開けると、そこには、殿下と一度だけ顔を合わしたことがある隣国の魔法協会の魔法使いの青年がいて……。私は二人を問いただすことにしたのですが。しかしその内容は私の予想を遥かに超えた内容でした。
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