殿下 、愛する人ができました! 婚約を破棄してください!
愛する人ができました! 婚約を破棄してください!
私は殿下に向かって宣言し、にっこりと笑い掛けました。
「え、どこの誰だい?」
「目の前にいるこの人です!」
どうもとにこりと笑って挨拶する人、どうも初めましてと殿下も挨拶。
柔らかい笑顔のまま、セシルですと自己紹介をする。
「あ、王太子……」
「存じております」
セシルがにこりと笑うと、殿下がそうですかとにこにこと笑います。
私がセシルが私の愛する人です! と再宣言すると、殿下がふーんと興味なさげにしています。
「殿下!」
「嘘ならもっと上手くついたほうがいいよ。アデリア」
「嘘ではありませんよ、殿下」
私がこんなに仲がいいのです! と腕を組むとくくっと殿下が楽しげに笑いだしました。
「見た目からしたら、女の子の友達同士みたいだね。侍女長対策をうまく考えたものだ!」
うー、ばれてます? 私はお兄様にセシルに連絡をとってもらうよう頼んだのです。お兄様から合図がきたのでセシルとこのように……まず、男という生物と会えないという現状、なら男じゃなければ? と考え……。
「私は一応男ですよ。証拠を見せましょうか?」
「いや結構」
セシルが上衣を脱ごうとすると、大丈夫知ってますからと殿下がにっこりと笑いました。
ええ、見た目はジルは美女にしか見えません。
長い銀の髪、青い瞳、白皙の肌、細身の体、ゆったりとした衣を着ているので余計です。
いつも女性に間違えられています。
私の魔法研究仲間であり、お兄様のお友達なのですが。
くう、侍女長対策は何とかできたのに……お友達ですわあで一発オッケーで通れましたわ。
でも、どうして殿下がセシルのことを知っていますの?
「婚約者の交友関係位把握してるよ」
はあとため息をついて、殿下がまた適当な茶番劇をしたねえ。と両手をあげて呆れたという顔をします。
バカにされてますわ!
「やはりばれましたかぁ」
セシルがてへっと舌を出します。というかばれるのが早いというのか、最初からばれていたという……。
「あ、多分、舞踏会と魔法研究発表会の日時がかぶってるから自棄になって、こんな適当な手をうったんだろうけど、大丈夫、研究会は昼、舞踏会は夜、二つ行けば……」
「隣国で開催されますのよ! 馬車で片道1日はかかりますわ!」
「魔法協会の転移陣を借りる申請が通ったから、それでいっといでよ。あ、舞踏会に間に合うように帰ってきてね」
いやそれって申請に二か月かかるし、私が以前申請したとき、却下って……。
「僕が申請したら3日ほどで通ったよ? うん王族特権だね! 君の考えることくらいはわかっていたからね」
殿下って、そういえば頭は良かったですわ。なんというか、先回りする知恵というか。
歴代の婚約者たちには生かされない才能でした。
「ほら、これで悩みは解決したね!」
「魔法研究発表の前のお勉強の時間が……」
「大丈夫、天才といわれた君のことだ。大丈夫、一日一時間で、一位くらいはとれるよね?」
あ、笑いながら挑発されてます。腹が立ってきましたわ! セシルが苦笑いでこちらを見てます。
「取れますわよ、一位くらい!」
「はいなら問題解決、セシル殿、ごめんね、変なお芝居ににつき合わせて」
「いえいえ大丈夫です」
……茶番劇と言われ、セシルのことまで知られていて、仮の恋人作ろう作戦はあえなく駄目になりました。殿下が意地悪く笑います。
笑う以外のお顔を最近見てないですわよ!
腹が立ちますわ!
「逃がさないよ……」
小さく何か言ったようですが聞こえませんでしたわ、はい? と聞き返すとなんでもなーいと殿下がまた笑ったのでした。
あと、かー君の化けた君はつり目過ぎるよとウインクして、なにか殿下の手のひらで踊らされてますわ。そう思ったら、かー君が懐から顔をだし、やはり茶番と言われたかとため息をついていました……。
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