悪夢(後編)
その悪夢というものは・・・・突然襲ってきた。約・・・・23時ごろか。12歳のオレは漫画を読んでいた。初めて買う”その手の漫画 ”だったため、フツウの人なら多少はワクワクするのだろうが、木田からもらった本ということもあり、興奮は南極みたいに冷めていた。しかしそれでも、木田が他人にばらすなと釘をさすので、もちろん親に気づかれぬよう電気は最小のものにしていた。暗いところに入るとすぐに寝てしまう俺は、悪夢に遭遇してしまったのである。
矢橋・・・・・・・・・・・・・・・・・・どこすか、ここは。・・・・・・・・・・(見るとなんか・・・なんともいえないような空間に入っていた。あと・・なんか穴がある。)
坂○ 順くん!
矢橋 どこかで聞き覚えがある声だな・・・・・そうおもえば順なんて最近呼ばれてなかったな。
○巻 わたしだよ。わたし。気づいてよ・・・・。
矢橋 えっ・・・・・。ひょっとして坂巻か?
坂巻 晴美でいいよ。そっちの方がいいやすいし。
矢橋 ってさ。ここってどこなんだよ。ひょっとしてどこかの異次元じゃねぇだろうな。
坂巻 実は・・・そうらしいの。少なくとも3次元ではなさそうよね・・・・。
矢橋 はぁ?(無茶いうなって。おれはそんな次元に迷い込む義務も権利もないはずだぞ。)
坂巻 おどろかないの?
矢橋 おどろいてるさ。これほど驚いたことは無い。
坂巻 ここから脱出できないの?
矢橋 オレにすがりつくなって・・・おまえここに入ってきたときはどうだったんだ?
坂巻 わからない。何かに吸い込まれてきたような気がする・・・・・
矢橋 (どういうことだか全くわからん)これってひょっとして出口ないのか?
坂巻 さっきから気になってたんだけど・・・あそこ穴が無い?
矢橋 ある。(ここに来たときにきになっていた・・・。)はいってみるのか?
坂巻 そうしかないみたい。きゃぁぁぁぁっ!
矢橋 ってまて!(吸い込まれたみたいだな。)
しゅうううううううううううううううううううううーーーーーーー
降り立ったところは・・・・・・・ってここは・・
坂巻 ここ学校じゃない!
矢橋 戻ってきたっていうことか?
坂巻 よかったぁ。
矢橋 って泣くなよ。たどり着いたんだから。
坂巻 わたし順くんがくるのずっと待っていたんだから・・・・・
矢橋 (ううう。なんでオレの足にしがみついているんだよ。突き放すわけにも行かないし・・)帰ろう。
坂巻 どこ?
矢橋 家に決まってるだろ。
坂巻 うん。ありがとね・・・・
バタッ・・
矢橋 おい大丈夫か?晴美!
・・・・・・・・・・・
それからというもの、学業も体力も中ぐらいのオレは、21世紀の大発見!ともいうべき大活躍をしていた。坂巻をしょって学校からでて、坂巻の家の前まできて、ちょうどいいタイミングで坂巻が目をさめ、(気絶は演技だったのかもしれない。)自分の家に帰ることが出来た。
そして午前3時、ようやく就寝した・・・
現実の世界に帰った俺は、午前3時に突然目が覚め、首をつりたいような思いになりながらも、坂巻ってあんなにかわいかったっけ・・・・・(いつもの強引でリーダーな感じではなかった。)と妄想していた。そのうち夜見ていた漫画のことを思い出し、かばんの中に入れた。当然また寝られるわけも無く、新発売されていた銭湯・・・ではなく戦闘ゲームシリーズで暇をつぶした。
そんなこんなで、学校に行く憂鬱な朝である。校舎が見えたとたん、今日起きてきてから目をそらしてきた問題が頭をもたげたのだ。その問題っていうのはなぁ・・
木田 よう矢橋!ずいぶん眠たそうじゃねぇか。どうしたんだい?
矢橋 ・・・・お前がくれたあの漫画・・・俺を苦しめたみたいだ。
木田 どういうことだよ。校門の前で会うのはめったに無いことなのになんでそんなに喜ばない?
矢橋 今日はお前に話すことがありすぎるようだ。話に乗ってくれるな・
木田 めずらしいな。別にいいけど?
矢橋 騒ぎ立てるなよ。
木田 もちろん!
それからというもの、昨日から今日にかけてみた悪夢を説明し、これは病気なのか尋ねた。
木田 ・・・恋だな。
矢橋 恋?
木田 ああそうだ。お前は坂巻に恋をしている。心のどこかでな。
矢橋 別にそんな関係は無いんだけど。
木田 表向きはそうなんだろ?
矢橋 えっ・・・・・
木田 あとで坂巻に聞いてみ。昨日どんな夢を見ていたのか。
矢橋 ・・・・・。ところでさ、この漫画返すよ。
木田 ああわかった。
休憩時間に木田と会話したことは、ちょっとした事実としてのしかかってきた。
放課後
矢橋 あの・・・坂巻。
坂巻 なに?
矢橋 きのうどんな夢見た?
坂巻 寝ている夢。
矢橋 (・・・・・・)それだけ?
坂巻 それだけ。それがどうかしたの?
矢橋 いや、、なんでもない。ちょっと気になっただけ。
坂巻 ああそう。ならよかった。
そのときからだった。坂巻の視線を妙に感じるようになったのは。そして坂巻も自分のことを観察していたのであった。