第1話 友の初恋
4月 始業式
ホント全く変わらない校舎だ。春休みの間に工事するって言っていたのになーんも変わってないじゃないか。ひょっとして賄賂でも贈っているんじゃないか?いざ教室に入ってみても相変わらず殺風景だ。いつもながらの教室なら聞こえがいいが、これだけ地味だと何もやる気になれない。・・・ってなんかいやな足音がするんなぁ。無視しよっ。
木田 何顔かくしてんだよ!オレがそんなにブサイクだってか。
矢橋 うるせえ!(ったくお前とは会いたくない!あれのせいで春美とコイビトとか言われておれちょー恥ずかしかったんだよ!)なんで1学期早々オレのところに来るんだよ!
木田 話がある。
矢橋 どんなだ。(ひょっとして・・・)工事の件か?
木田 あいにくだが、違う。でも、気になる話だとは思うよ、お前は特に。
矢橋 早く言えよ。
木田 いいニュースと悪いニュースどっちを先に聞く?
矢橋 どうでもいい。
木田 じゃぁいいニュースから。とうとうゴリラが教養界から去った。
矢橋 エッ…マジかよ
木田 それも今行方不明なんだってさ。
矢橋 これがいいニュースか?ふざけるな。これのどこがいいんだよ!
木田 実はなぁ。きっかけが春休みの事件なんだよ。
矢橋 ・・・(こりゃ聞かざるをえない。オレが徹底的にかかわってしまったもんなぁ。)
木田 悪いニュースいくぞ。
矢橋 なんだよ。
木田 ゴリラがあの学級裁判がきっかけで、やめたんだ。センセイ。
矢橋 ・・・!うそつけ!
木田 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ホントだ。
矢橋 なんでそこでタメる。お前さっきからお前らしくないぞ。
木田 あたりまえだろ。オレの友達であるお前が徹底的にかかわってんだからとうぜんだろ?
矢橋 (友達だったのかよ・・・・・)いったいどういうことだから教えろ、それでお前は満足だろ?
木田 ひひひ。乗ったね?
矢橋 気持ち悪いな。早く言えよ。
木田 へへ。お前が知っているかぎりでは春休みの事件はどんな感じなんだ?
矢橋 えっ。(俺が言うのかよ・・・)教室に1人で残っていた坂巻春美が、教室にあった林間学校の集金が盗んだって言う疑いがあって、ゴリラが学級裁判を開いて、俺が弁護士になって、逆転無罪っていう話だよな。
木田 やっぱりね。お前でも気づかなかったか。
矢橋 どういうことだ?
木田 オレ不思議に思ったんだよ。なんでゴリラが学級裁判開いたかわかるか?
矢橋 フツウだろ、教師として。
木田 ゴリラは体罰教師だろ?
矢橋 (・・・・・・・・・!)そういえば不自然だな。
木田 だろだろ?なんかうらがあるはずなんだ。
矢橋 お前さ、ゴシップ記事を書くセンスもなかなかだけど、捜査もするんだな。
木田 オレの父ちゃんも新聞記者でさ、血を引き・・・・って関係ないじゃないかよ。
矢橋 どうぞ”うら”をお話ください。
木田 おう。アリバイが不自然なんだよ。
矢橋 オレがついたヤツか。そりゃそうだろ。ゴリラの職員会議は完全下校後の13:30〜13:45で、坂巻がいたのは残っていたとはいえ、13:25分に、保健室の先生が帰っているのを目撃しているんもんな。
木田 そのあとどうしたっけねぇ。
矢橋 エッ。犯人捜しはやめにしよう。ってゴリラがいったよな?
木田 それだったら集金も今は無いはずだろう?
矢橋 あっそっか。林間学校行けたもんな。
木田 ってことは、センセイが集金をかっぱらったってことだろう?
矢橋 えっ!!でも、そんなことをする動機なんて無いはずだろ?横領にもなって自分の進退にも関係するからさぁ。
木田 実は、職員室の教頭先生が開いた職員会議ってのはさぁ。ゴリラの進退に関するものなんだよ。
矢橋 ・・・!その進退なら俺がかかわったことあるかもしれない。保護者がたくさんいたところで、ゴリラが1年生にセクハラしているのを見て、”刑法176条て起訴してやる!!”って言ったことはある。
木田 それの仕返しだと考えられる。坂巻春美を教室にセットして、あとは学級裁判を開くだけだ。
矢橋 で、なんでおれが弁護士にならないといけなかったんだよ。
木田 ひひひ。ざまあみろ。
矢橋 いま”ざまあみろ”って小声で言ったろ。
木田 おれのせいだよ。だから悪いニュースなんだよ。ごめんな。言いふらして。
矢橋 ゴリラが勘違いしたってことか?オレと坂巻がコイビトだって。
木田 そう。坂巻が有罪になったらお前はショックを受けるだろうって思ったんだろうな。
矢橋 じゃあ何で坂巻春美だ?他の女子でもいいじゃないか。
木田 アイツリーダーだろ?
矢橋 なんのだよ。
木田 お前ホント女子をわかってないな。坂巻春美はゴリラの娘をいじめているように見えていた。
矢橋 あの”自作自演”の話か。仕立てたんだよな。ゴリラの娘が。
木田 もう理由がわかっただろ?それだけだ。
矢橋 ありがとな。
木田 30分前と大違いだな。笑っちゃうよほんと。
矢橋 (っ)
?? これより授業を始めます。私の名前は坂巻優子。よろしくね!
木田 やさしすぎて生徒に学級崩壊になってきたセンセイとして有名らしいぞ。
優子 木田君!!しゃべるのをやめなさい。あなたのことは大谷先生からきいているわよ。注意して行動しましょうね。
木田 よーし。ゴシップ記事完成!!タイトルは”新任先生、あのゴリラとコイビト”だ!
優子 こら!いい加減にしなさい!!鈴木くん!学級委員として注意してください!
都築 鈴木じゃなくて都築です!!
木田 先生〜〜!都築君の学級委員としての任期はもうとっくに期限が切れてまーす!
優子 いい加減にしなさい!・・・・・遅くなってしまったけど、初めての授業をします!!
木田 その内容は保健体育のあの部分で〜す。
優子 うるさい!!えーと、算数の授業を始めます。日直は相田君と、飯田君ね。挨拶をして頂戴。
相田 おはようございます。
ガッハッハッハッハッハ・・・・・
優子 これから算数の授業を始めます!では、今日は立体の体積の勉強をしましょう。
矢橋 (あっ礼っていわないんだ。やっぱ新任の先生だな。あっ、なんかメモがきた。”センセイの体積をスライド式に求めると、約700000cm2”っくっくっく)
優子 なにそこわらっているの!!しまいなさいその紙。
矢橋 (なんだ、きづいていたのか。きもい先生だ。)
そのあとは全く授業に集中できなかった。昨日から徹夜していたせいもあったが、なによりセンセイの性格が生徒として気になったからである。また、ほかの事をぼーっと考えながら俺は少しにやけながら時間をつぶしていった。
キーンコーンカーンコーン
矢橋 (サイレン・・・じゃなくてチャイムがつまらない空間に間抜けに鳴る。ようやく1時間つぶせてまあよしとしよう。そして考えていたことも話さなきゃな。)木田!!ちょっとこい。
木田 なんだよいきなり。目が輝いているな。
矢橋 おまえ坂巻春美のこと・・・・・好きなんだろ?
木田 ・・・・っ。そんなわけねーだろ?べべべつにきににかけてていたわけけではなないし。
矢橋 どんだけ緊張してんだよ。ラブレターわたしてやろうか?っはっは。
木田 じゃあよろしく。
矢橋 えっ。図星かよ。って逃げるな!!(しかたがない、渡してやるか・・・・)