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「なっ、逃げたのか?」

趣味で書いてるので、温かい目で見てね。

 旧ロシア領土のヤクーツクは、ユーラシア大陸を流れるレナ川に面した河港を持つ都市であった。周辺は森林と山に囲まれていたが、建物の件数も多く嘗ては多くの住民が栄えていた事が解った。


 だが、吹雪の荒れ狂う朝靄には明かり1つさえなく、雪を被り崩れかけた無数の建物が過去の記憶を微かに残すだけだった。


 追手から逃走を続けるターキッシュとミアは、衛生からの追跡を逃れるために昼間はカサブランカの巨体を隠せる場所に身を潜める事にしていた。そして、休憩と身を隠す場所を探す彼等の進路へ人気の無くなったヤクーツクの廃墟街が見えると、2人は深夜3時と早いがそこに潜伏する事に決めたのだった。


「ターキッシュ様、緊急事態です」


「ミア、一体どうした?」


「先程仕掛けた監視カメラに装甲車1台とサイドカー付きバイクが2台映りました。フェミアンの斥候部隊です」


「こんなタイミングに…数は?」


 だが、ターキッシュがスポーツ複合施設の森にカサブランカを隠してから少し経った頃に、フィルムの様なタブレットで監視カメラの映像を確認するミアが声をかけた。


 その声に驚きつつ木陰で情報収集をするミアの元に歩み寄ると、ターキッシュは彼女が傾けて見せる画面を覗き込んだ。そこにはフロントライトの明かりを付けた大小の箱を繋げクローラーを付けたような形の装甲車と、局面を多様する随伴して走行する近代的なデザインのバイクが2台走っていた。


「まだ、ヤクーツク外周です。しかし、まだ見つかっていないだけですので、何れ発見される可能性があります」


「ヤクーツクって言っても広いだろ?それに、これだけ建物もあって、見たところ1個小隊程度だ。上手くやれば、またやり過ごせるんじゃないか?」


「あの時は猛吹雪でした。そして、今回の相手は偵察小隊です。1人あたりの装備でも直ぐに発見者されます。先手を打たなければ、発見され増援を呼ばれ袋叩きにされます」


「ふっ…袋叩きって言っても、撃てば直ぐに通報されるだろ?ECMや電子機器へのダメージを与える兵器が…まさか、有るのか?」


 映像にはバイクに跨がる白い装甲服の歩兵が辺りを見回す映像が拡大されて映っていた。歩兵の被るフルフェイスヘルメットには細いゴーグル状のカメラが付けられている様であり、ターキッシュの見る映像ではそのカメラが不気味に青白く輝いていた。


 その映像を見ながらターキッシュに考えを述べるミアに、彼は再びやり過ごすという考えを不安げに言った。だが、彼女から返ってきた言葉は"先手を打つ"という極端なものであった。攻勢という危険な賭けに驚くターキッシュは思わず知っている知識の範囲で意見を述べると、カサブランカの知らない機能についてミアに尋ねた。


「性能はあくまで限定的ですが、起動後連続5分稼働で1.5km範囲の通信機器を破損させられます。1キロ先に中央街道か有りますので、待ち伏せからの奇襲で撃退可能かと」


「来てくれるかが問題だろ?いや、そもそもドローンとかで探索されたら…」


「その際は、カサブランカの射撃で撃退すれば良いかと思われます。ドローンを使うにしても、小型探索ドローンを展開するのは街の中央で行う方が効率が良く、彼等の行動からほぼ確実にこちらへ来ます。そうすれば、少なくとも30分は時間を稼げます」


「そこまで言うなら…やるしか無いか…」


 フィルムタブレットを操作してカサブランカの機体説明をするミアは、ターキッシュの心配を理解して更に2段構えで説明をした。彼女の淡々とした発言にはターキッシュも疑念を挟めず、苦い表情を浮かべ頭を掻きながら納得するとカサブランカのコックピットへ向かった。


「サブコックピットへの搭乗、固定完了。コントロールシステムとリンク完了。ターキッシュ様、そちらはどうですか?」


「何度かやれば慣れるもんだな。背中のコネクターを…付けてから…腕のコネクターを…付ける〜。するとヘッドセットが降りてくる」


「メインコックピット搭乗確認。操縦システムリンク確認。機体チェックシステムC起動。異状なし。ブルーメ起動させます」


「うおっ、と…相変わらず、この起動した時の背筋の刺すような感覚は何なんだかな…後は、バレないように身を潜めるか。10m近い巨体で隠れるも何も無いと思うけど…」


 バイザーカメラを一瞬だけ赤く光らせたカサブランカは、相転移装甲を展開し夜闇の森に紛れた。膝立ちで5mはあり翼まで持つカサブランカだが、広い森林の中では全く姿を感知できず周りが廃墟街な事も身を隠すのに丁度良かった。


「ミア、ライフルの出力は10%だ。バレてまたバトルドレスってのと戦闘は勘弁だ」


「了解しました。ライフル出力を10%でキープ。遮蔽物が多いので、攻撃は空中から行います」


「視界にCG補正で場所をマーキングしておいてくれ。ジャンプのタイミングは任せるよ」


「了解しました。補正をかけます」


 右手に固定したパタを確認しつつ、左手に戦闘で撃破したゲシュペンストから奪ったライフルを握り直したターキッシュはミアに指示を出した。その言葉に答えつつミアがターキッシュに機体操作の指示を出すと、ターキッシュは何時でも飛翔出来るよう足に力を込めた。


 暗視カメラの映像にCG補正の掛かったターキッシュの視界には、ヤクーツクの中央街道を真っ直ぐ進む車両隊が見えゆっくりと警戒しながら近づいていた。その車両隊はミアの言う通り、街の中央で停車すると車両から数人が外に出てきた。


 車両から6人程が出てくると、1人は車両の外側に設置されている装置を操作し、残りの5人はバイクの兵士達と共に周辺の警戒を行うのだった。


「車両外に6人。バイク1台につき2人で、合計4人。総数10人が外にいるのか」


「余計な兵士が増える前に片付けます。よろしいですか?」


「よろしいも何も無いだろ。"片付ける"ってのが不服だがな…」


「それではターキッシュ様、ジャンプしてください」


 補正映像を前に息を呑むターキッシュだったが、彼の不安を他所に淡々とミアが指示を出した。その内容に不満げな彼も、装甲車の側面が上方に開き始めると黙り込みミアも空かさずジャンプの指示を出した。


 足を踏ん張らせていたターキッシュは、あらん限りの力で地面を蹴って飛び上がった。その動きに連動して、カサブランカの背中の翼が展開し、青や紫のプラズマを輝かせると闇夜の空に飛び上がった。


「敵勢力を確認。ドローンの展開途中のようです。ECM展開」


「させるか!目標をセンターに入れて…スイッチ!」


 明かりのない廃墟街を飛ぶカサブランカは、その中央に煌々と光る明かりへまるで光に飛ぶ蛾の様に突き進んだ。眼下に広がる光景は、ミアの言う通りドローンの展開の為のチェック作業中でり、更に手こずっているのか作業を警戒していた歩兵が手伝い周辺警戒が疎かになっていた。


 半ば奇襲と言う形で気づかれなかったターキッシュとミアは、カサブランカの頭部にある耳の様な角の装甲を一部展開すると薄く青白い衝撃波の様なものを周辺に放った。


 通信機器へ攻撃を行ったカサブランカの推進音にようやく気付いて振り返る歩兵達に両手の火器を向けた。だが、相手が身を晒す歩兵である事に引き金が迷ったターキッシュは、装甲車の中央から奥に掛けて狙いを定めると引き金を引いた。


 ソードライフルのビームは反動が少なく装甲車を確実に消滅させたが、鹵獲したライフルは予想以上に反動が強く砲弾の数発は建物に当たった。

 それでも集弾性は比較的高く、車両隊はほぼ壊滅と言っていい状態になっていた。


「やっ…やったか?」


「ターキッシュ様、そのまま機体を降下させます」


「なっ、逃げたのか?」


「ターキッシュ様が直前で照準をずらした事によって、4名が逃走しました。着陸後、私が追跡します」


 煙を上げる装甲車の上空で滞空するカサブランカの中、ターキッシュは爆炎を地表へ散らしつつ思わず呟いた。その呟きはミアの指示に流され、彼の質問には淡々とした返事が返ってきた。


 そのミアの口調はまるでターキッシュを非難している様にも聞こえた事で、彼はやるせなさや悲しみを心に抱きつつ地面に足を付けた。


「放っておけばいいだろ?相手は通信も出来ないし…」


「対装甲ランチャーを持っていました。迂闊に放置すれば狙撃される危険性があります。そして、周辺に潜伏しているのは間違いありません。機体はターキッシュ様と私無しには動きませんから、コックピットで…」


「俺も探す。銃は使えるし、まだ訓練で体が覚えてる。自分のやった事だ、自分で尻拭いする」


「しかし…」


「その方が効率がいいし…いくら1.5馬力とか言っても、ミア1人で戦闘なんて危ないだろ。俺だって、ここで死んでも納得出来ないからさ…死なないよ」


「了解…しました」


 跪くカサブランカの中でターキッシュはミアに言い放つと、彼女は珍しく言葉を曇らせた。その事に感想を抱く前に、ターキッシュはコックピットの拘束から開放されたのだった。

読んでいただきありがとうございます。

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