「いい加減に落ちろ!」
趣味で書いてるので、温かい目で見てね。
推力を後方にのみ放出するカサブランカは、編隊を組み直すゲシュペンスト4機から逃れるように左へ急旋回を掛けた。
「何だ、あの機体?急に速くなったぞ!」
「逃げるつもりか?」
「そうはさせるか!」
第2小隊の2番機から4番機まてが、距離を取りうとするカサブランカを慌てて追撃しようとトマホークをライフルへ持ち替えた。
「3人とも焦るな。あの機体は旋回を掛けた。バトルドレスは人型なのにわざわざ大きく旋回をしてる。つまりあの機体は戦闘機なんかと変わり無い訳だ」
Ⅳ-Ag154426が焦る部下達引き止めると、片手に持つライフルの銃口で旋回を続けるカサブランカを差し諭す様に言った。
コックピットの画面に映るカサブランカは青い空に良く映えており、Ⅳ-Ag154426の例え通り翼を広げるその姿は航空機の様にも見えた。
「なら、戦闘機相手と要領は同じだ。私と3番機、4番機で牽制をする。弾種を対空用近接信管に切り替え!2番機、トマホークを装備して上昇。たたっ斬って仕留めろ!」
「「「了解!」」」
速度が速くも振らつきながら飛ぶカサブランカの姿に、Ⅳ-Ag154426は青い瞳の整った顔に不敵な笑みを浮かべながら操縦用のグリップを掴みスイッチを操作した。すると、コックピット内のサブモニターの弾種と書かれた項目が、近接信管に切り替わった。
その切り替わるのと連動して、ゲシュペンストのライフルに横並びに付けられたバナナタイプマガジンが1つずれた。それまで填められていたマガジンは勢いよく右側の空中に放り出されると、ライフルに新しいマガジンが込められ、自動てコッキングが行われた。
「私は左、3番機は右から。4番機は下から回り込め!上手いこと直線飛行させろ!」
「「了解!」」
滴る汗を拭いながら部下に指示を出したⅣ-Ag154426は、上昇を始める2番機を確認しつつカサブランカの左側へ回り込む様に移動を開始した。
それに続く3番機が右側に回り込み、高度を下げて速度を上げた4番機はV時の軌道を描くようにカサブランカの前へ出ようとした。
「飛行機なんて飛ばした事ないのに…いや、グライダーはあるか。教官後ろに10回だけど…ぐぇっ!」
移動を始めたゲシュペンストを視界の端に捉えたターキッシュは、怖じ気付く自分に軽口を叩いて奮い立たせようとした。だが、そんな彼は胸元や腹部を殴られる様な衝撃に体内の息を吐き出した。
「いって〜!対空砲、喰らったのか!」
自身の周りで炸裂する灰色の煙を前に、ターキッシュは痛みに身を捩らせた。すると、カサブランカは振らつき上昇しながら更に左へ旋回を始めた。
「くっ!こっちに来るのか!」
「隊長、援護します!対ショック姿勢!」
「隊長に当てないでよ!」
カサブランカの急旋回にⅣ-Ag154426は驚きながら機体の上半身を反らして回避運動をしようとした。彼女の無線と急接近する2機を見た3番機は、高度を上げると旋回途中のカサブランカへ向けてライフルを向けた。
3番機のパイロットは、彼女の通信を受けて右足のシールドで機体をカバーする隊長機と接近するカサブランカをモニターで確認した。彼女はモニターに映る照準をカサブランカの黒い影に重ねようとしたが、その右下付近に映る隊長機の姿に引き金を引くのを躊躇った。
そんな3番機に4番機から励ます様な明るい声が響くと、彼女は青い瞳を見開きながらその照準をカサブランカの少し上方にずらしながら引き金を引いた。
「当たれ!」
3番機の叫びに促されるかの様に、砲弾は若干弧を描きながらカサブランカの目の前に飛び込み炸裂した。
その近接信管の炸裂に大きく軌道を変えたカサブランカは、翼の端に雲を曳きながら右側へ進路をずらした
「流石、ウチのスナイパーはカワイイだけじゃないな!」
「まぐれですよ、まぐれ!」
「謙遜しなさんな。隊長、そろそろキルエリアです!」
「良し!牽制射撃中断!」
迫るカサブランカに至近弾を当てた3番機に褒める言葉と感謝の無線をⅣ-Ag154426が送ると、3番機のパイロットははにかみながら軽く頭を撫でた。そんな3番機の謙遜に4番機が茶化す様な通信を送ったが、直ぐに真面目な口調になると銃口てカサブランカを差した。
そこには木の葉の様に揺れながら飛ぶカサブランカの姿があり、Ⅳ-Ag154426が無線で指示を出すと3機はカサブランカを囲う様に分散した。
「なっ…何だ?いきなり攻撃が止んだ?」
カサブランカの飛行がマニュアル設定の為に前しか向けないターキッシュは、前方に見えず体に感じない爆発の煙や衝撃を前に猛烈な違和感を感じた。
「エースコンバットでも対空砲火ってあるよな…何で撃ってこないんだ?あれっ、俺は何で変に冷静なんだ…」
命の危険とミアのサポート無しという危機的な状態を前に、発狂もせずに独り言を呟き状況を判断しようとする自身に、ターキッシュは敵弾以上に驚いた。
「ミア、まだなのか!」
「下方からの上昇気流に対する直立姿勢維持の…」
「まだなのかよ…逃げるばかりじゃ…」
ミアを急かしたターキッシュは未だ彼女の呟く声が聞こえると、彼は高度を上げようと上を見上げた。太陽が輝き一筋の雲が流れてゆく青空を見たターキッシュは、その青さに戦闘中でありながら一瞬見惚れてしまった。
「何だ?」
そんな真っ白に輝く太陽の中に黒い黒点が見えたが、ターキッシュは呟くだけで上昇を止めなかった。
「しまった、誘い込まれたのか!」
「もらったぁ〜!」
ターキッシュは太陽に浮かぶその黒点が一瞬で大きくなり人型の姿をしている事に気付くと慌てて旋回しようとした。だが、右に視線を向ける前にゲシュペンストはカサブランカに向けて落下のエネルギーを加えつつトマホークを振り下ろそうとしていた。
「うっ、うわぁあ~!」
赤色に輝くトマホークの刃を前に焦ったターキッシュは叫び、その行動で彼は直ぐに右を向かず2番機のトマホークから足と流れる様に視線の方向を変えた。そのためカサブランカが旋回を始めると、その無理な動きで翼がゲシュペンストの左足に直撃した。
「なっ、嘘でしょ!」
トマホークを振り下ろしかけた2番機は、その予期せぬ翼の直撃にバランスを崩し白い蒸気を上げる刃は空を斬った。
「まだぁ〜、逃がすか!」
「うわっ!引っ掛かったのか?」
空中でつんのめったゲシュペンストは、機体を半回転させると左手でカサブランカの翼にしがみついた。衝撃で折り畳まれたローターブレードがひしゃげる中、カサブランカの推力に振り落とされんとする2番機のパイロットは叫びながらトマホークの柄をカサブランカの肩に突き立てた。
その衝撃にターキッシュは驚きに声を漏らしつつ後ろを向くと、そこには瞳を不気味に輝かせるゲシュペンストの姿があった。
「ひっ、1つ目の化け物!」
「なっ!男?何で男がバトルドレスを動かせる!」
「ミアじゃない女の声?何で聞こえるんだ?」
「そうか、お前があの"タチバナ"か!」
赤く輝くセンサーに呟いたターキッシュだったが、彼の耳に突然の知らない女の声が聞こえた。彼はまた戦場で女の乗る人型兵器に出会した事や、突然の敵の声が聞こえた事に驚くと混乱しながら呟いた。
その呟きに透き通った声質の激昂が響くと、ターキッシュは背中に猛烈な衝撃と痛みが走った。
「謎の機体の捕獲にタチバナ逮捕も付いてくるとはな。これで小隊皆が纏めて青服になれるくらいだ!」
「この子、何を言ってる?ミア!」
「ミア?あぁ、個人名ってやつか。バトルドレスが動くなら女も乗っているのか!3年前からやる事の外道な…抵抗するな!」
「ぐぁ!」
興奮気味の女性の声に猛烈な殺意や怨念を感じたターキッシュは、ミアに助けを求めるように彼女の名前を呼んだ。その言葉を理解し怒りを顕にした女は、機体を旋回させながら手足を動かすカサブランカの背中にトマホークを突き立てた。
その衝撃にターキッシュはバランスを崩しかけたが何とか持ち直し、機体を急上昇させた。それでも背中にトマホークを叩きつけられる衝撃と痛みが走しり、彼はゲシュペンストを振払おうと肘をその胴体へ打ち付けた。
「離れろ!離れろよ!」
「隊長、タチバナです!この機体にはタチバナが乗ってます!」
「なっ!Ⅲ-Sg483256、本当か!」
「解った。2番機、そのまま押さえてろ!せっかくの大物だ逃がすなよ!」
「接触回線か?こいつ等、また全員が女…」
喚きながら抵抗するターキッシュに、背中に取り付く2番機はトマホークを何度も叩きつけながら無線で小隊に援護を求めた。その無線に聞こえる声は全て女の声であり、ターキッシュは痛みに思考を鈍らせながら呟いた。
「不味い…なっ、何だ!」
ゲシュペンスト3機が迫る中、ターキッシュの視界に赤い文字で突然警告と書かれた映像が現れた。視界の邪魔にならない様に若干薄いその文字にターキッシュは驚いたが、それ以上に彼は書かれる内容に驚き恐怖した。
「サブコックピットに攻撃集中…相転移装甲の電力消費増大により推力低下!ミア、不味いぞ!」
「…爆風と気流によるバランス維持と緊急回避運動の…」
「背中に乗り込んでるんだろ!ミア、危ないんだぞ!落ちるんだぞ!」
思わず読み上げた警告の内容にターキッシュは自分で恐怖した。それと同時に背面にあるコックピットへ攻撃が集中しているという事実にミアの安否を心配して彼は叫んだ。
だが良くも悪くもミアの作業を続ける声が聞こえると、ターキッシュは安心と恐怖の入り混じり裏返った声で彼女に叫んだ。
「いい加減に落ちろ!」
女の怒声がターキッシュの耳に響き、1番強い衝撃と痛みが彼を襲った。それと同時に、遂に目の前の警告は推力停止を知らせターキッシュは絶句した。
「落ちる…」
ようやく出てきた言葉もか細く、背中に感じていた支えられる感覚が消えるとターキッシュの思考は一瞬で真っ白になった。
「やっっ、た〜〜!」
「3番機、2番機を拾ってやれ!ローターブレードが破損している。我らのヒロインだ、丁重にな」
「昇進だ!クリアランスレベル上昇だ!」
「了解です!Ⅲ-Sg483256、やったじゃん!あの機体もほぼ無事だし!」
ゲシュペンスト4機は墜落していくカサブランカを見ながら喜びに湧いていた。落下途中の2番機の左腕を3番機が掴む頃には、カサブランカは地面まで高度500mを切っていた。
「何も解らず…突然放り込まれていきなり終わるのか、俺の人生?死ぬのか?」
「もう1度言いますが、貴方は死にません。私が貴方を護るから」
眼前に迫る真っ白な地面にターキッシュが力無く呟くと、突然ミアが彼に相変わらず感情のない声で言った。
シベリアの雪原に雪と土煙が舞い上がった。
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