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のんびりまったり異世界生活  作者: 和奏
第二章 異世界はやっぱり異世界です
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24 パッチワーク風カレンダーと天ぷらそば

 翌朝、トーストとサラダ、昨日の残りのコーンスープで簡単に朝食を済ますと、洗濯や掃除などの家事をさっさと終わらせ、昨日の続きに取り掛かった。


 十一から三十までの数字を刺繡し終えると、最初にチャコペンで描いた線に沿って丸く切り抜く。

 丸が小さいので最初に切り抜いてしまうと刺繡がしにくくなるので、刺繡枠にはめられるように大きな生地のまま刺繡したのだ。

 三十枚、丸く切り抜き終えたところで時計を見ると、もう昼前だった。


 「好きなことをしてるときって時間がたつのが早いなあ。さっき朝ごはん食べたと思ったらもうお昼だもん。お昼は何にしようかしら?」


 冷蔵庫の中を見ながら考える。


 「何だかおそばが食べたい気分。・・・そうだ。天ぷらそばにしよう」


 パントリーから乾麺のそばを取ってくる。

 それと昨日食べたスチールバードの肉。

 海老がないので海老天は諦めて、これでとり天を作ろうと思う。

 あとはちくわ。

 磯辺揚げにしたちくわ天も美味しいよね。

 それからネギ。

 冷蔵庫から取り出したこれらをテーブルの上に置くと、エプロンをつけて早速作り始める。


 まず、天ぷら用の衣作り。

 小麦粉、片栗粉、卵、水、マヨネーズをボウルに入れ混ぜ合わせる。

 ここに一口大に切ったスチールバードの肉を入れて衣の生地に絡ませる。

 あらかじめ熱しておいた油の中に入れ、両面がきつね色になるまで揚げる。

 とり天ができたら次は・・・。


 私がアイテムバッグから出したのは薬草。

 今朝、朝食の前に私が森で摘んできたものだ。

 リオラ草、フォルモ草、カウラリア草。

 元々ポーションや状態異常を治す薬の元になるんだから、そのまま食べても問題ないんじゃないかと思うんだけど、どうかな。


 物は試しとばかりに、洗ったリオラ草に衣をつけて揚げてみる。

 カラッと揚がったそれは見た目はとても美味しそうだ。

 味見と称してパクリっ。


 「ヨモギの天ぷらっぽい味ね。これはこれで美味しいわ」


 次はフォルモ草。


 「・・・うーん。何だろ、この味は。あまり馴染みのある味じゃないわね。というか何かの葉っぱを食べてるって感じ。美味しいかどうかと言われると・・・微妙ね。味付け次第かしら」


 最後にカウラリア草。


 「見た目はインパクトがあるわね。白い天ぷらだもの。食感は舞茸みたい。コリコリして美味しい」


 薬草の天ぷらを揚げ終えると、衣に青のりを投入し、そこへ縦半分に切ったちくわを入れる。

 ちくわの磯辺揚げを作ったら、次はおそばの準備。

 茹でる前に十分ほど冷たい水に浸しておいたそばを、沸騰したお湯に入れて茹でる。

 茹で時間はパッケージの表示より一分ほど短く。

 その間にそばつゆを作る。

 沸かしたお湯に顆粒だし(鰹と昆布、二種類のだしね)、醤油、酒、みりんを入れ、ひと煮立ちさせる。

 器にそばを盛り、そばつゆを注いで天ぷらをのせ、刻んだネギを散らせば完成。


 出来上がった天ぷらそばをテーブルの上にのせると同時にイヴァンも椅子に座って準備万端とばかりに待ち構えている。

 タイミングよくシロも湖から帰ってきてテーブルに着席。


 「熱いから気をつけてね。私は先にユラのところにこれを届けてくるわね」


 そう言うと私はユラの住む家へと転移した。


 「ユラ、お昼ご飯持ってきたよ。どこにいるの?」


 私が言い終わるや否や目の前の空間がゆらゆら揺れてユラが現れた。


 「はい、どうぞ。天ぷらそばというの。熱いから気をつけてね」


 イヴァンとシロに言ったのと同じことをユラにも言って、天ぷらそばをテーブルに置く。

 ユラはゆらゆら揺れながら天ぷらそばの上まで来ると、いつものように一瞬で食べてしまった。


 「何回見ても不思議だわ」


 そうつぶやく私の前で、ユラはぷるぷる震えだしポンっと何かを出した。

 今回は白い花の咲いた鉢植え。

 今朝も朝食を運んできて同じように黄色い花の鉢植えをもらったのだ。


 「綺麗な花ね。名前はわからないけど」


 白い花の鉢植えを店舗スペースの窓辺へと運ぶ。

 昨日もらったピンクの花と今朝の黄色い花の横に白い花を置く。

 窓辺が華やかになって気分も上がる。

 ユラの頭をぷにぷに撫でまわすと、


 「じゃあ、また後で来るからね」


 転移魔法で風の森にある家まで戻って来ると、イヴァンはすでに食べ終わり、私の帰りを待っていた。

 もちろんおかわりをするためだ。

 イヴァンの器にさっきと同じように盛りつけるとイヴァンの前に置く。

 すぐさま食べ始めるイヴァンを見ながら私も自分のために用意した天ぷらそばを食べ始めた。


 「やっぱりスチールバードの肉で作ったとり天、美味しいわね。薬草の天ぷらもいけるわ。フォルモ草の天ぷらは微妙だったけど、そばつゆを衣に吸わせたらそれなりに美味しいし。ちくわの磯辺揚げは言わずもがなよね。イヴァンはどの天ぷらが美味しかった?」


 イヴァンに聞いてみると、

 

 『この茶色の長いものは風味があって美味い。上にのっているものもサクサクしてて美味い。スープを吸ってしっとりしても美味い』


 結局そばも含めて全部美味しかったんだね。

 それはよかったよ。

 シロもしっかり完食していたので、薬草の天ぷらはありのようだ。

 満足げにハンモックへと戻るイヴァンを見送ると、私も後片付けを始めた。

 シロはもちろん湖へ。


 その後はまたソファに戻って、カレンダー作りの続きを始める。

 次はパッチワークだ。

 端切れを七センチ四方のサイズに四十二枚カット。

 それをバランスよく縦六段、横七列に並べる。

 全体を見てあっちの布とこっちの布を入れ替えてみたり、そっちの布とこっちの布を入れ替えてみたりと配色を考え、満足のいく配置にすると、二列目の一番左端の布を手に取り、「一」と刺繡されたフェルト生地を真ん中に糸で縫い付けていく。

 縫い終わったら元の位置に戻し、その横の布を取って「二」を縫い付ける。

 それを三十まで繰り返す。

 もちろんこれが日にちの部分になる。

 次にピーシング。

 カットした布同士を縫い合わせることだ。

 わかりやすいように右上の二枚を手に取り中表にする。

 そして端から一センチの所を縫っていくのだけど・・・。


 「手縫いにしようと思ってたけど、やっぱりミシンで縫っちゃお。時間があるときはのんびり手縫いでやるのもいいんだけど、今はやることがたくさんあるからね。それに・・・」


 チラッとイヴァンに目をやる。


 ハンモックに揺られながら顔はテレビから離さない。

 一体何を熱心に見ているのかと言うと・・・落語だ。


 別にいいんだよ?

 落語もけっこうおもしろくて思いっきり笑ってすっきりすることもあるし。

 全然悪くないよ?

 私だって好きだし。

 でも・・・精霊って落語のおもしろさが理解できるのかしら?


 実際、イヴァンの顔は無表情だ。

 元々そんな顔だけど、おもしろいと思って見ているのか全くわからない。

 ただ、私が作業に集中できないのでテレビを消そうとしたら、何故か怒られた。

 なので、私がミシンのある二階の趣味部屋に移動することにしたのだ。


 精霊とは全く理解不能な生き物である。


 ミシンの前に座ると、中表にした布の端から一センチの所を縫い合わせる。

 待ち針で留めた方がズレる心配がなくていいのだけど、面倒なので省略(笑)。

 次に真ん中の上二枚の布を取り、同じように中表にしてミシンで縫っていく。

 次に左上の二枚。

 こうして一列ずつ二枚の布を縫い合わせていく。

 それが終わると布の裏側の縫い目を開いてアイロンであて割っていく。

 縫い目の部分にアイロンを全部当て終わったら二枚づつの布を中表にして同じように縫っていく。

 四枚になった布も裏側の縫い目を開いてアイロンであて割っていく。

 これを繰り返し最初に決めた大きさまでつなげていき、一枚の大きな布にする。

 それが終わると次は月の部分。


 この世界は白の月と黒の月が交互にくる。

 新しい年が来ると、白の一、次が黒の一、その次が白の二、最後は黒の六で終わるそうだ。

 つまり日本の奇数月が白、偶数月が黒にあたるらしい。

 それが六ヶ月づつあって、十二ヶ月で一年が終わる。


 「白の月は白いフェルト生地、黒の月は黒のフェルト生地で作って、それぞれ黒い刺繡糸と白い刺繡糸で数字を刺繡すれば、わかりやすいしかわいいわね」


 早速、フェルト生地に直径三センチの円をチャコペンで描いていく。

 白、黒六個づつ描き終えたところで、突然イヴァンの声がした。

 びっくりして声の方を見ると、落語を見ていたはずのイヴァンが相変わらずの不機嫌そうな顔で私を見ていた。


『サキ。そろそろおやつの時間だろう』


 時計を見ると三時を少し回ったところで、確かにおやつの時間だ。

 おやつの時間なんだけど、小さな子供じゃあるまいし、そんなにきっちりおやつが必要なの!?


 『おやつの時間におやつを食べるのは当たり前だろう』


 「別に食べなくても問題ないでしょ」


 『大ありだ。我の楽しみがなくなるではないか』


 「楽しみって・・・。他に何か楽しいことってないの?」


 『ないな』


 「何かあるでしょ。たとえば・・・狩りとか?」


 『何を狩るのだ』


 「そりゃ、魔物でしょ」


 『何故、我がそんな面倒くさいことをせねばならぬ』


 「人助けになるでしょ」


 『何故、我が人助けなどせねばならぬ』


 「何故って、社会の一員なら社会貢献も大事でしょ」


 『社会貢献?何だ、それは。美味いのか?』


 「あのねぇ・・・」


 呆れる私に畳みかけるようにイヴァンの声が響く。


 『とにかくおやつだ。早くしろ』


 「あー、もう、わかったわよっ。作るわよっ。本当にわがままなんだから」


 多少抵抗したってどうにもならないことなんてわかっていたけど。

 つい、反抗してみたくなる。

 こういうところもかわいいと言えばかわいいのかなあ。


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