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のんびりまったり異世界生活  作者: 和奏
第二章 異世界はやっぱり異世界です
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13 教会へ

 詰所を出ると、モリドさんに案内されて教会へ行く。

 教会はギルドのある場所とは反対の方へ十五分ほど歩いた所にあった。

 イヴァンが一緒なので相変わらず目立っていたけど、これといったトラブルもなく教会に着いた。


 ボディーガードが二人もいるんだもん。

 何も起こりようがないよね。


 教会は、十字架こそないけど日本でもよく目にする教会の建物に雰囲気がよく似ていた。

 教会の中に入ると、モリドさんは大声で叫んだ。


 「バロールっ、いるか?治療師を連れてきたぞっ」


 モリドさんの呼ぶ声に、奥から優しそうな風貌のおじいさんが出てきた。

 

 「モリド。大きな声を出すな。そんなに大きな声で呼ばんでも聞こえとる。で、治療師を連れてきたと聞こえたが・・・。こちらのお嬢さんか?」


 モリドさんをたしなめた後、私の方を向いておじいさんは言った。


 「あぁ、そうだ。サキ、このじいさんがバロール。ここの教会の責任者だ。バロール、この子がサキ。光魔法の使い手で週に一回ここで治療師として働いてくれることになった」


 モリドさんに紹介してもらった後、私たちはお互い挨拶を交わした。


 「初めまして、バロールさん。サキと申します。よろしくお願いします」


 「バロールだ。・・・シルバーウルフが一緒にいるということはお前さんが今街で噂の魔術師か」


 噂って・・・。

 私、噂になってるの?


 「モリド。まだ子供のようだが、働かせていいのか?まぁ子供だろうと治療師の仕事をしてくれるのなら教会としては助かるが・・・」


 子供じゃないですっ。

 正確にはおばさんですがっ。


 「バロール。こう見えてもサキは十八才だ。成人しているから問題はない」


 笑いながら言うモリドさんの言葉にバロールさんは驚いた顔をしたけど、


 「そうか。成人しとるなら何の問題もないな。週に一回ということはそれ以外の日は冒険者をしとるのかな?」


 「冒険者でもありますし、商業ギルドにも登録したので、商人でもあります。まあどっちもなりたての新人なんですけど」


 「冒険者なら長く街を離れることもあるだろう?」


 「新人の私にできることなんて限られてますから、今のところそういう類の依頼を受けるつもりはありません。街の周辺でちまちまポイント稼ぎしようかなと思っています。いろいろすることが多いので毎日というわけにはいきませんが、私でお役に立てるのならお手伝いさせてください」


 私がペコリと頭を下げると、バロールさんもペコリと頭を下げて、


 「こちらこそ、よろしく頼みます。これで怪我や病気で辛い思いをしている子供たちが楽になる。大人は我慢できても子供は酷な時もあるのでなあ・・・」


 ほっとした様子のバロールさんは人のいいおじいさんという風だ。


 好感の持てる人でよかった。

 週に一回でも一緒に働くなら、気持ちよく働きたいものね。


 その時、奥からバロールさんの雰囲気によく似た、少し白髪が目立ち始めた初老の優しげな女性が出てきた。


 「あなた。また怪我をした子供が来たの?あらっお客様?まあモリドじゃないの。どうしたの?怪我が悪化したの?」


 「あぁ、エミリ。ちょうどよかった。エミリにも紹介しておくよ。彼女はサキ。これから週に一回、教会で治療師として働いてくれることになった。モリドが連れて来てくれたんだ」


 「初めまして。サキと申します。よろしくお願いします」


 頭を下げる私にエミリさんは、


 「バロールの妻のエミリよ。ごめんなさいね。こんな小さな子供に働かせてしまって。でもこの街には常駐の治療師がいないから助かるわ」


 ・・・。

 いや、もういいけど。

 私が子供に見られるのは鉄板なのね。

 受け入れるしかないのね。


 「エミリ。心配しなくてもいいぞ。サキは十八才だから子供じゃない。俺の怪我もサキに治してもらったんだ」


 さわやかな笑顔でモリドさんが答えると、


 「え?十八才?・・・まぁそうだったの。ごめんなさい、失礼なことを言って」


 謝るエミリさんに私は手を振りながら、


 「大丈夫です。子供に間違われるのはいつものことですから気にしないでください」


 と言いつつ、すごく気にしているのに言えない小心者の私・・・。

 だって中身はアラフィフだよ?

 子供、子供って言われるとちょっと抵抗が・・・。

 でも最近、肉体に引きずられているのか精神的にも考え方や感じ方が子供っぽくなってきたような気がする。

 あっ、間違えた。

 考え方や感じ方が()()なってきたような気がするの。

 そう、若く、ね。


 結局、休み明けの一日が私の勤務日になった。

 イヴァンも一緒でも大丈夫かと尋ねると、危害を加えないなら一緒でかまわないと言ってもらったので、ほっとする。


 イヴァンは理由なく人を襲ったりしないからね。


 今までは薬師でもあるエミリさんが薬を作って処方していたそうだ。

 軽い病気や怪我なら初級ポーションを飲めばある程度治すことができるけど、モリドさんのように少し重い怪我や病気には少しの効果しか期待できなくて、それでも飲まないよりましといった程度らしい。

 中級や上級ポーションなら話は別らしいけど、値段が高いのでそうそう常備できないそうだ。

 パーティに光魔法の使い手がいれば、怪我や病気に対応できるのでそんなにポーションや薬は必要ないけど、光魔法の使い手がいないパーティはそれなりにポーションや薬が必要となる。

 そのため冒険者は受ける依頼によって持っていくポーションや薬を考えなくちゃいけないし、使ったらその分補充も必要となる。

 それに万能だというイメージのあるポーションも怪我にはよく効くけど、病気、例えば腹痛や胃痛ならそれ専用の薬を飲んだ方が値段も安いし早く効くらしい。


 今日私が摘んだ薬草も腹痛や胃痛に効く薬の元になるって教えてもらったし。


 「ずっと治療師がいなかったから私のところへ来る病人や怪我人が多くていつも薬が不足しがちだったのよ。ギルドに依頼しても簡単に手に入らない薬草も多くて・・・」


 眉間にしわを寄せて困った顔をしながらエミリさんが嘆く。


 「今朝、リオラ草とフォルモ草、ダリル草にヒハツ草、それからファリノ草とピペリア草なら摘んできたのでこの後ギルドに持っていくつもりなんですけど・・・」


 私が告げるとエミリさんはパッと顔を輝かせて嬉しそうに言った。


 「まぁ、本当なの?最近ヒハツ草もファリノ草も数が少なくてなかなか手に入らなかったの。後でギルドに行ってみるわね。サーバル草やアトリア草はどう?今ちょうど季節の変わり目でこれから風邪をひく子供や老人が増えるから風邪薬の元になるサーバル草が欲しいのよ。それから血の巡りを良くする薬の元になるアトリア草。ご婦人方はどうしても血行が悪くなりがちで体調不良になりやすいから欲しがる人が多いの」


 確かに季節の変わり目って朝晩の寒暖差が大きいから、体力のない子供やご年配の方は風邪を引きやすいだろうし、看護師でもある恵里も、体は冷やしちゃダメ、血行を良くする食事をしたり運動することが大事だって言ってたっけ。

 どこの世界でも一緒なのね。


 「ごめんなさい。サーバル草やアトリア草はなかったです」


 私の返答にがっかりした様子のエミリさんだったけど、気を取り直したように笑顔で、


 「もしまた機会があればお願いしてもいいかしら。どうしても必要なの」


 風の森にあるかしら?


 そっとイヴァンを見たけど、よくわからなかった。

 あるともないともとれるよくわからない首の振り方だったからだ。


 「わかりました。必ずとはお約束できませんけど、探してみます」


 そして三日後の休み明けに来ることを約束して私たちは教会を後にした。


 冒険者ギルドに向かって歩きながら、私は考えていた。

 そう、カレンダーだ。

 この世界の一週間は六日しかないので、日本のカレンダーは用をなさない。

 この世界対応のカレンダーじゃないと教会へ行く日がわからなくなる。


 作るしかないわね。

 ふふっ、こういうのって考えるのが楽しいのよねえ。


 歩きながらあれこれ考えていると、


 「サキ。何、ニヤニヤ笑ってるんだ?何だか気持ち悪いぞ」


 引き気味のモリドさんの言葉に少なからずへこむ私だった。


 やっぱり私の笑ってる顔って変なんだ・・・。


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