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のんびりまったり異世界生活  作者: 和奏
第二章 異世界はやっぱり異世界です
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10 モバ茶とほうじ茶

 朝食の片付けを終えると、イヴァンとシロと一緒に散歩がてら湖まで足を伸ばす。

 シロはイヴァンの頭の上でとぐろを巻いてチロチロ舌を出している。

 昨日シロが言っていたように食事が終わると元の白蛇の姿に戻ってしまった。

 なかなかのイケメンぶりで、けっこうウキウキしていたのだけど。

 ちなみにイヴァンに人型になれないのか聞いてみたけど、変異魔法は使えないらしい。


 残念。

 絶対イヴァンもかっこいいのに。


 湖に着くとシロは早速湖に入り、泳ぎ始めた。

 イヴァンは湖の側の木陰で一休み。

 私はというと、湖の周りで薬草探し。

 一応これでも冒険者だもの、それらしきこともたまにはしないとね。


 リオラ草とフォルモ草を探して摘み取ってはアイテムバッグの中に入れていく。

 きっちり三十本ずつ摘み取ると、他に薬草が生えていないかイヴァンに聞いてみると、他にいろいろな薬草があった。


 丸っこい大きな葉が特徴のダリル草。

 胃腸薬ができるらしい。

 真っ黒で細い茎と葉のヒハツ草。

 これは腹痛に効く薬の元になる。

 それからファリノ草。

 青みがかった緑の葉ととげとげした茎を持つ草で、痛み止めになるそうだ。

 それから薄紫色のピペリア草。

 リオラ草から作る下級ポーションよりも効果のある中級ポーションができるらしい。


 それらもサクサク摘み取りアイテムバッグに入れる。


 「これくらいでいいかな。イヴァン、そろそろ街まで行こうか」


 シロはここで留守番をしていると言うので、イヴァンと二人で街の近くまで転移魔法で移動する。

 もちろん、瞳の色を変えるのも忘れない。


 ギルドカードを見せて街へ入ると、ちょうど詰所の所にスタンさんがいるのが見えたので、スタンさんの方へ足を向ける。


 「おはようございます、スタンさん」


 「ああ、おはよう」


 「おはよう、サキ」


 うん?


 もう一人、私に声をかけてきたのはモリドさんだった。

 スタンさんの方を向いて、私に背中を向けていたので、気がつかなかったのだ。


 「モリドさん、おはようございます・・・ってどうされたんですかっ?その怪我・・・」


 見るとモリドさんは左腕を包帯で吊って、右足首にも包帯が巻いてあり松葉杖をついていた。


 「いやあ、面目ない。実は喧嘩の仲裁に入ったら喧嘩してる場所が悪くて、宿屋の二階の階段の近くだったもんだから、喧嘩してたやつらと一緒に下まで転げ落ちちまってな。結局このザマだ」


 左腕は骨折し、右足首は捻挫だそうだ。


 「本当はこの間の捕り物に俺も参加するはずだったのに、その前日にこの怪我だ。サキも大変だったんだってな。力になってやれなくて悪かったな」


 モリドさんは申し訳なさそうに言ってくれたけど、私より大変なのはモリドさんの方だ。

 警備隊なんて体が資本の仕事なのに。


 「心配してくださってありがとうございます。モリドさんこそ、怪我が治るまでお仕事できないんじゃないですか?」


 「まあな。でも俺がドジッたせいだし、仕方ねぇよ」


 わははと苦笑いするモリドさんに「ちょっと失礼しますね」と声をかけてから私はヒールをかけた。


 パッと光った一瞬のちにはモリドさんの怪我は完全に治っていた。


 「おいっ。サキ、何を・・・」


 「このままじゃお仕事にも支障が出るでしょう?なので、ヒールを使わせていただきました」


 モリドさんは慌てて腕や足首の怪我を確かめ、治っていることを確認すると、


 「すまん。助かった。治療代はいくらだ?」


 はい?

 治療代?


 私はしばらくモリドさんと見つめ合った後、叫んだ。


 「いりませんっ。治療代なんてっ」


 昨日も似たような会話をしたなと思いながら、モリドさんに必要ないと伝えると、


 「サキ。魔力を使って治療した以上、ちゃんと対価は受け取るべきだ」


 「そんなに魔力も使ってませんから大丈夫です」


 「そういう問題じゃねぇ」


 「でも・・・」


 さらに私が言いかけたとき、それまで成り行きを見守っていたスタンさんが、


 「こんな所で押し問答もなんだから中に入れ。もうすぐ隊長も戻ってくるし・・・」


 スタンさんの言葉に私たちは素直に従った。

 詰所を入ってすぐの所に私がエドさんに初めて会った部屋があり、その奥は警備隊の皆さんが休憩するときに使う広めの部屋、さらに奥にはエドさんの執務室があるらしい。


 休憩室にある椅子に座るとスタンさんがお茶を入れてくれた。

 冒険者ギルドで出してもらったのと同じハーブティのようなお茶。


 やっぱりここではこれが定番のお茶なのね。


 「ありがとうございます、スタンさん。ちなみにこのお茶は何のお茶ですか?」


 一口お茶を飲んで例のハーブティもどきだとわかると、スタンさんに聞いてみた。

 

 どうせもう何も知らない小娘だってバレてるんだからいいよね。


 案の定、怪訝そうな顔をするスタンさんだったけど何も言わず、


 「モバ草から作るモバ茶だ」


 と教えてくれた。


 「どうやって作るんですか?」


 「・・・。乾燥させたモバ草にお湯を注ぐとモバ茶ができる」


 「モバ草は乾燥させただけですか?」


 「そうだが・・・」


 そうか、乾燥させただけなのか。


 普段、休憩するときに入れるのは緑茶が多いけど、食事のときはほうじ茶を飲んでいる。


 ほうじ茶って確か緑茶を焙じて、つまり焙煎して作るんだよね。

 今度モバ茶を焙煎してどんな味になるか試してみよう。


 というのも商業ギルドに登録した以上、商人としても仕事しなくちゃと思っているんだけど、何を売ればいいかなあって考えてるところなんだよね。

 だから今はいろいろな情報を集めようと思っている。


 カップに入ったモバ茶を見ながら考えていると、モリドさんの驚いたような声が聞こえた。


 「サキはモバ茶を知らないのか?」


 「はい。私、街に来たのは初めてなので知らないものがいっぱいなんです」


 えへへと笑う私に、


 「それにしても知らなすぎだろう・・・」


 モリドさんが呆れたようにつぶやいた。


 確かにそうなんですけど・・・。


 「そうか、だから無料(タダ)で治療しようとしたんだな。サキ、治療師も立派な仕事だ。魔力の多少にかかわらず、治療したらちゃんと治療代は受け取らないとダメだ。この街には常駐の治療師がいねぇからサキなら立派な治療師になれるぞ・・・って、うん?治療師?」


 なんだかモリドさんがおかしなことになっている。


 私、治療師になるなんて一言も言ってませんからっ。

 ってか治療師って何?

 医者みたいなものかしら?

 そもそも光魔法なんて便利なものがあるんだから医者なんているの?

 でも今朝摘んだ薬草は胃腸薬や痛み止めの薬の元になるって教えてもらったっけ。


 次から次へと出てくる疑問を口にしようとしたとき、エドさんが帰ってきた。


 「おかえりなさい、エドさん。お邪魔してます」


 「ああ、サキか。どうした?何かあったのか?」


 エドさんは私に声をかけながら、私の向かいの椅子に座った。


 「あ、いえ、そういうわけでは・・・」


 と言いつつ、スタンさんとモリドさんを見る。


 「隊長、実はサキが・・・」


 モリドさんが私がここにいる理由を説明した。

 それを聞いたエドさんは笑いながら、


 「それがサキだっていえばサキなんだろうな。俺は今マルクルのところに行ってたんだが、マルクルから聞いたぞ。お前、そこのフェン・・いやシルバーウルフに頼んでギルドのアイテムボックスとドラゴンナイトの奴らが持っているアイテムバッグに無料(タダ)で時間停止魔法つけてやったんだってな。マルクルが心配してたぞ。人が良すぎるって。まあ、そんなサキだからモリド、お前の怪我も簡単に治したんだろうよ」


 時間停止魔法を無料(タダ)でつけたと聞いたスタンさんとモリドさんは目を見開いて驚いた顔をしたまま固まった。


 そんな顔になっちゃうくらいのことだったんだね。

 改めて理解したわ。

 これからは知らない人には内緒にしておこう。


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