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のんびりまったり異世界生活  作者: 和奏
第二章 異世界はやっぱり異世界です
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7 やっぱり桜餅には桜の葉がほしい

 門に着いたのでウッドさんにお礼を言って帰ろうとしたら、ウッドさんが耳元で囁いた。


 「後ろの建物の陰にメイブがいる。どうする?風の森まで送って行こうか?」


 思わず振り返ろうとした私をウッドさんが止めて、


 「気づかれるから動かないで。風の森まで一緒に行ってもいいけど、風の森に住んでるって知られてそこで待ち伏せされても困るよねえ。たとえ風の森に入れなくても・・・。やっぱりここは俺が囮になって引き付けておくからその間にこっそり帰っちゃう作戦にする?」


ウインクしながらいたずらっぽく言うウッドさんに、私も笑いながら、


 「大丈夫ですよ、ウッドさん。シロに付与してもらった転移魔法があるので心配いりません。人目のある所では使いませんけど、その時はイヴァンに乗って逃げますから」


 「そうだった。サキにはそんな便利な魔法もあるんだったね」


 「はい。なのでウッドさん。できれば私の姿が見えなくなるまでここに立っていていただけると助かります。人目がなくなったらこっそり転移魔法で家に帰りますから」


 「わかった。それくらいお安い御用だ」


 快く引き受けてくれたウッドさんに手を振り、門番さんにギルドカードを見せて門から出て行く。

 そっと後ろを振り返ると、ウッドさんがまだ手を振ってくれていた。

 ウッドさんが見えなくなるギリギリの所まで来ると、振り返ってもう一度手を振った。


 転移魔法で家まで帰ってくると、ドサッとソファに座り込む。


 なんだか疲れたなあ。

 それもこれもメイブってやつのせいよね。

 本当に気をつけなくちゃ。


 予定より早く帰ってきたので、午後からの時間が思いっきり空いてしまった。

 時計を見るとまだ二時を少し回ったところだ。


 三時のおやつに何か作ろうかな。


 家にある材料を思い浮かべつつ、私が食べたいという理由で桜餅を作ることにした。


 キッチンに立ち材料を用意する。


 ボウルにピンクに色付けされた道明寺粉、甜菜糖、水を入れて混ぜる。

 ラップをしてレンジで五分加熱し、その後十分蒸らす。

 こしあんは等分にし丸めておく。

 生地を軽く練り、こちらも等分にする。

 こしあんを生地で包み、桜の葉を巻くと完成・・・なんだけど桜の葉がないのでこれは省略。

 

 でも、桜の葉がないと桜餅って感じがしないな。

 今度作るときはちゃんと桜の葉も用意しよう。


 いつもはダイニングでおやつを食べるのだけど、今日は天気も良くさわやかな風も通り抜ける行楽日和なので、庭の一角に置いてあるガーデンテーブルでいただくことにした。


 今では半分庭の置物と化しているテーブルだけど、あの人がまだ生きていた頃は時々、二人でお茶を飲んだり、庭の手入れをする私をあの人がここで眺めたりしていた。


 ついついそんなことを思い出してしまうけど、あの人が座っていた椅子に今はイヴァンが嬉しそうにしっぽを振りつつ座っている。

 早く食べたくて仕方ないようだ。


 イヴァンがいてくれるからあんまり寂しくないのかも。


 お茶と一緒に桜餅を並べると、手を合わせて食べ始める。


 あぁ、美味しい。

 道明寺粉のつぶつぶ感がいいわね。


 桜餅の食感を楽しみながらゆったりお茶を飲む私とは反対にイヴァンはものすごい勢いで食べていた。

 私が作るものは何でも美味しいと言ってくれるイヴァンだけど、やっぱりあんこは特別らしく食べる勢いが違う。

 見る見るうちに桜餅がなくなっていく。

 私がシロの分を取っとかなくちゃと思ったときには最後の一個がイヴァンのお腹の中へ消えていった。


 「もう、イヴァンたら食べ過ぎよ。シロの分がなくなっちゃったじゃない」


 「かまわん。元々精霊は何かを食べて魔力を補うわけではないゆえ、何の問題もない」


 いや、それは聞いたけど・・・。


 「本当にもう・・・」


 私はため息を一つついた。


 食べ物が絡むと容赦ないんだから。


 ふと目の前にある花壇が目に入る。

 いつもなら春の花が満開になっている頃だ。

 チューリップ、アネモネ、パンジー、ビオラ、ナデシコ、マーガレット。

 でも今年は雑草だらけで隅っこの方に白いスイセンが二つほど咲いているだけだ。


 それどころじゃなかったし、そんな気分でもなかったし。


 そう言えば、前に家に来た恵里が荒れ放題の庭を見て、だだでさえ寂しくなっちゃったのにこんな雑草だらけの花壇じゃ余計に寂しくなっちゃうと言っていくつか花の種を送ってくれたっけ。


 家の中に入り、リビングのチェストの中を探す。


 「確かこの辺りに入れておいたはずなんだけど・・・、あった」


 手に取るとけっこうな量だった。

 カスミソウ、アスター、ペチュニア、金魚草、マリーゴールド、ひまわり、コスモス、松葉牡丹・・・。

 貰ったときはちゃんと見てなくてそのままチェストに入れちゃったけど、どれも今が蒔き時の花ばかりだ。

 恵里に感謝しつつこの後は庭の手入れをしようと決めた。

 お腹いっぱいのイヴァンはいつものようにリビングのラグでのんびり過ごすようだ。

 イヴァンに一声、声をかけてから私は庭仕事用のエプロンと手袋をつけて庭に出た。


 まずは雑草抜きね。


 黙々と雑草を引っこ抜いていく。

 花壇だけじゃなくて庭中の雑草を抜き終えると、かなりの量の雑草の山ができた。

 それを庭の隅に設置してあるコンポストの中に放り込む。

 これで堆肥にして肥料として使うのだ。

 以前、これで肥料代が浮くし、生ゴミも減らせて一石二鳥とばかりにコンポストを買ってきて肥料作りを始めたものの、中身をかき混ぜたり、実際に堆肥として使うまでに時間がかかったりして結局面倒くさくなってやめてしまった。


 だって、生ゴミはゴミの日に出した方が早いし、肥料だってホームセンターで安く買えちゃうんだもん。


 でも、この世界に来てから食事作りのたびに出る生ゴミの処理に困り、また使い始めるようになった。


 さすがにここでは、決まった曜日にゴミ収集車が来て回収していってくれるなんてことはないからね。


 これで生ゴミは何とかなったものの、少しずつたまり始めている、堆肥にできないプラスチックやナイロンゴミ、ペットボトルなど解決できていないゴミ問題がある。


 これはどうしたらいいのかなあ。

 何か考えなくちゃ。


 綺麗になった花壇に肥料を撒き、マリーゴールドやひまわりの種を蒔いていく。

 最後に水をまいて終了。


 芽が出るといいな。


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