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のんびりまったり異世界生活  作者: 和奏
第一章 こんにちは異世界
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5 精霊は和菓子以外もお好き

 その後、イヴァンと今後のあれこれを相談して、イヴァンはここに一緒に住むことになった。

 近くにいてくれた方が安心だし、寂しくない。

 さらにいえば、いつでもモフれる。

 イヴァンは嫌そうな顔をしたけど気にしない。


 だって、もう家族みたいなものだよね。


 それから二階にある寝室に入り、イヴァンの寝床を整える。

 リビングにあったふかふかラグマットが気に入ったようだが、あれはサイズが大きすぎるので、物置部屋にしまってあった二畳ほどの同じようなラグを出してきてベッドの近くの床に置く。

 これだけでいいらしい。


 まあ、寒ければ一緒に寝るのも有りよね。


 思わずニンマリしたら、またしても嫌そうな顔をされた。


 何故だ。


 もう一度ラグを手に取り、掃き出し窓を開けベランダに出ると、手すりにラグをかける。

 ずっとしまいっぱなしだったから、これでさらにふかふか間違いなし。

 ついでに私の布団も干しておく。


 天気も良さそうだしね。


 せっかくだからと掃除機を取り出して部屋の掃除を始める。

 最初は掃除機の音にびっくりしていたイヴァンだったけど、不思議な物がたくさんあるなとあちこち探検し始めた。

 あれこれ興味津々のイヴァンはほっといて、他の部屋にも掃除機をかける。

 階段を上がってすぐ左側手前が寝室、その奥が和奏と洸大が泊まりに来たときに使う部屋、右側手前が書斎、その奥は物置部屋になっている。

 手早く掃除機をかけ終えると次は一階だ。


 一階にはリビング、ダイニング、キッチンと和室、あとは水回りがある。

 一階の掃除は部屋の隅に鎮座しているル〇バに任せて水回りへ。

 チラリとイヴァンに目をやると、何故かル〇バに追いかけられていた。

 お風呂とトイレの掃除を終えてリビングに戻ると、ル〇バは自分の仕事を終えて元の場所で待機中。

 イヴァンはというと、ソファの上からル〇バを凝視していた。


 そんなに気に入ったのか(笑)


 あれこれバタバタしている内に気がつくともうお昼をかなり回っていた。


 そういえば、お腹すいたな。

 何を作ろう。

 イヴァンも食べるのかな。


 イヴァンに目をやると、ル〇バに興味を失くしたのか、今度はテレビの前をうろうろしている。


『これは何だ?』


「テレビよ」


 私はリモコンを手に取るとスイッチを入れた。

 すると黒かった画面がパッと明るくなって映像が音とともに映し出される。

 びっくりしたイヴァンは思わず一歩後ろに飛び退って、ローテーブルにお尻を強か打ち付けたようだ。

 後ろに誰かいるのかとテレビの後ろを覗き込んだり、くんくんと匂いを嗅いでみたり。


 かわいいなあ。

 何だか生まれたての仔犬を見てるみたい。

 図体は大きいのにね。


 ほっこりしながら、イヴァンの様子を見ていて、はたと気がついた。


「どうしてテレビがつくのーっっ!」


 どういうことだ。

 どうして電波が届いてるの?

 ここは異世界じゃないの?

 実は日本の誰も知らない秘境の地だとか?

 でも、イヴァンはここはオルテンブルク大陸だって言ってたし。


 さらに気がつく。

 電気も水道も問題なく使えていることに。

 我が家はオール電化なので、元々ガスは使っていないが、朝から電気も水道も普段通り使えていた。


「どういうことなの、これは・・・?」


 異世界に、グルノーバル王国にトリップしてきたのよね、家ごと。

 でも電気も水道も使えるし、電波だって届く。

 よくわからないけど、家は元の世界と、日本と繋がっているってことかしら。


 家ごとトリップしてきたとわかったときにふと頭をよぎったけど、あえて考えないようにしてきたことがある。

 一夜にして家が丸ごと消えて大騒ぎになってるんじゃないかってことだ。


 ニュースに取り沙汰される我が家とか考えたくもない。

 さらに住人が行方不明だとか。


 ふと思いついて、スマホから恵里に連絡してみる。


(うちの家の方で何か騒ぎになってない?)


「わぁ、ちゃんと送れた」


 仕事中ならすぐに返信はないだろうから、とりあえずスマホは置いておいて、つけたままのテレビの方に目をやるとイヴァンが真剣な顔でテレビを見ていた。

 主婦向けのお昼の情報番組で、今はちょうど美味しいオムライスの特集をしていた。


『サキ、我はこのオムライスとやらが食べたいぞ』


 イヴァンがテレビから目を離さずに私にリクエストする。


 興味があるのは和菓子だけじゃないんだ。

 とりあえず、今日のお昼はオムライスに決定ね。


 冷蔵庫を確認すると、何とか有り合わせの材料で作れそうだ。


 玉ねぎをみじん切りにして炒めている間に、冷蔵庫の冷やご飯をレンジでチンする。

 炒めた玉ねぎに、小さめに切ったベーコンを投入。

 軽く火が通ったらケチャップをかけて混ぜ、さらにコンソメ、塩こしょうも加える。

 炒め終わったら、レンチンしたご飯を入れてさらに炒めたらケチャップライスの出来上がり。

 次に、ボウルに卵、牛乳、塩こしょうを入れて混ぜる。

 フライパンを熱し、バターを入れて程よいところで卵を一気に流し込み、箸で少しかき混ぜる。

 半熟より少し固くなったらご飯にのせて完成。


「イヴァン、できたよー。どこで食べる?」


 するとイヴァンは嬉しそうにダイニングの椅子の上に飛び乗った。


 おぉ、すごい。


「ここでいい?」


 二人分のオムライスをダイニングテーブルの上に並べると、イヴァンの目はオムライスに釘付けだ。


『テレビとやらに映っていたものと同じだな』


「熱いから気をつけてね」


 私の忠告も聞こえたのかどうか器用にオムライスを平らげていく。

 誰かのために料理をするのも久しぶりだなと思いながら、私も「いただきます」と手を合わせ食べ始める。

 そんなに料理上手ではないけど、料理は嫌いではないのできちんと毎食作っていたけど、あの人がいなくなってからは自分一人のために作るのが面倒で随分手抜きになっていた。


「美味しい?」


『うむ。美味いな』


 なんだかほっこりして嬉しくなってくる。


 やっぱり誰かのために作るっていいなぁ。


 ガツガツ食べまくるイヴァンにさっきから気になっていたことを聞いてみる。


「イヴァンもちゃんとご飯を食べなきゃ生きていけないの?」


 私の中に、精霊が何かを食べるというイメージがなかったからだ。

 やはりというか、何も食べなくても生きていけるけど、食べても特に問題はないらしい。


 うん、なんだかそんな気がしてた。


 オムライスを食べ終わったイヴァンの口元を拭いてあげた後、イヴァンはリビングのラグに戻り、のんびりくつろいでいる。

 もしかしたら眠っているのかもしれない。


 そして私はというと、パソコンを開いていた。

 電気も水道も普通に使え、テレビまで見れるんだからもしかしてと思い、いつも利用しているネットスーパーのページを見ている。

 普段はお米や飲料水、トイレットペーパーなど重い物、かさばる物を主に購入するのだけど、今日は食材をメインにかごに入れる。

 といっても、購入できるかどうか、購入できても届くかどうかわからないので、少しだけにしておく。

 鶏もも肉、ブロッコリー、トマト、それとお饅頭。

 もちろんイヴァン用の和菓子だ。

 それらを精算してみると、購入はできたみたいだけど本当に届くのか?

 夜までに届くようにしておいたので、今日中に届けばネットでの買い物も可能だということだ。


 もし届けば食料確保の問題も解決するけど、届かなければ食料確保や生活費の算段をしないといけない。

 電気や電波、水道まで使えている以上、物体も届くのではと期待してしまう。


 届いたらいいんだけど。


 その時、ピロンとスマホが鳴った。

 見ると、恵里からの返信だった。


 おぉ、返信が来たということは一方通行でもないということだ。


(どういうこと?火事でもあったの?それとも何かの事件?)

(その家の住人ごと家が丸々消えちゃった・・・なんてニュースになってないかなって)

(何言ってるの?お姉ちゃん、大丈夫?)

(あー、ごめん。何でもない。

 そうそう、昨日豆大福と一緒に貰った桜饅頭、知り合いにお裾分けしたらすごく喜ばれたよ。ありがとね)

(そうなの?じゃあまた持って行くね)

(うん。ありがと)


 すると、どういたしましてと書かれたプラカードを持ち、ピースサインしている猫のスタンプが送られてきた。


 スマホを終了すると、あごに手を当てて考えてみる。


 つまり日本とは完全に切れているわけではなく、ライフラインや電波は繋がっている。

 どんな原理が働いているのかはわからないけど。


 完全に一人きりではないと思うとかなりホッとする。

 もちろん、今はイヴァンが側にいてくれているが、それでも恵里と連絡が取れるというのは精神的に全然違う。


 今度、テレビ電話も試してみよう。


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