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のんびりまったり異世界生活  作者: 和奏
第一章 こんにちは異世界
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閑話 アレス②

 次の日、集合場所である西門に行くと、すでに早紀は来ていて領主やその息子と話をしていた。

 領主の息子がやたらと早紀を気にしているように見えるのは俺の気のせいか。


 早紀は俺のもんだからな。


 俺に気づいた早紀はそっと近づいて来ると


「おはようございます、アレスさん」


 と挨拶してくれる。

 更に昨日のマントの礼も。

 よく見ると昨日買ったマントの胸元に小さな紫色の花が刺繡されていた。

 昨日買ったときはなかったから早紀が自分で刺したんだろう。


 そういえば早紀は手芸が好きだったな。


 シルバーウルフの首にかかっているものも早紀の手作りなんだろう。

 胸元には紫の宝石。


 ん?

 紫?


 するとシルバーウルフと目が合った。

 そう、紫の瞳と。


 なんか無性に腹が立ってきたぞ。

 そういや昨日早紀はシルバーウルフがたった一人の家族だとかなんとか言ってたな。

 違うぞ。

 早紀の家族は俺だけだ。


 シルバーウルフを睨みつけながら早紀に昨日の夜は何もなかったか確認する。


「はい。心配していただきましたけど、全然平気でしたよ」


 早紀の返答に安堵していると俺たちの会話を聞きつけたシェリーが割り込んでくる。


 ちっ。


「え?何?どうしたの?」


「いえ、何でもないです。昨日アレスさんにこのマントを買っていただいたのでお礼を言ってたんです」


 早紀、そんなこと、いちいちこいつに言わなくていい。


「え?アレスに買ってもらったの?」


 そう言いながら、シェリーが俺を見る。


「ふーん。どういう風の吹き回し?アレスには心に決めた(ひと)がいるんじゃなかったの?」


 ニヤニヤ笑いながらシェリーが俺をからかってくる。


 余計なことを言うんじゃねえ。


「何でもねえよ。クッキーの礼だ」


 と言えば、レインまで、


「では、私もあなたに似合うドレスを贈らせていただきますね」


 と言い出した。


 レイン、お前まで早紀に気があるんじゃねえだろうな。

 早紀は俺のもんだっつうの。


 レインに釘を刺そうとしたところで領主とマルクルに呼ばれ、仕方なしにその場を離れた。

 グリーントレントの討伐について最後の打ち合わせをし、二人からくれぐれも早紀を危ない目に合わせるなと釘を刺された。


 俺がそんなことをするわけがないだろう。


 いざ、出発という時になって早紀が馬に乗れないことが発覚し(そりゃそうだ)誰が乗せるかで揉めていると早紀はさっさとシルバーウルフに飛び乗り、「先に行って待ってます」と一言言い残しあっという間に見えなくなった。


 くそっ。

 俺が早紀を乗せたかったのに。


 2時間かけて嘆きの森近くまで行くと、早紀とシルバーウルフの姿が見えた。

 領主の息子が早紀を捕らえるより早く、エドの野郎が早紀を自分の馬に引き上げた。


 エドっ。

 何だか早紀との距離が近すぎねえか?

 お前は妻子持ちだろうっ。


 早紀と笑い合うエドに怒りの視線をぶつけながら嘆きの森の近くまで移動する。

 ここで二手に分かれると早速シルバーウルフがグリーントレントを捕らえに行った。

 シルバーウルフがいなくなった途端、早紀の顔が不安に揺れる。


 心配しなくても大丈夫だ。


 そんな意味を込めて早紀の頭をなでながら、早紀に言った。


「大丈夫だ。あいつは強い」


 俺の言葉を聞いた早紀は安堵の表情を浮かべ、そして花が綻ぶように笑った。


 不意打ちはやめてくれ。

 心臓がドキドキして止まらない。


 程なくしてシルバーウルフから合図が来ると、俺たちはグリーントレントの討伐に向かった。

 そこには結界に閉じ込められたグリーントレントの姿があった。

 こいつは結界に閉じ込めさえすれば、あとは火を放ってやるだけだから楽に倒せる。

 ただ、閉じ込めるまでが大変なんだが。

 ファイヤーボールを唱えるとあっという間にやつは火だるまになった。

 俺は早紀と一緒にいることに浮かれていたのかもしれない。

 咄嗟に体をずらして心臓への直撃は避けたが、腹に深々とやつの体の一部と思わしき枝が刺さっていた。

 しまったっと思ったときにはもう俺は、大量の血を流しながら地面に倒れ込んでいた。


 やっと、早紀に会えたのにこんな所で死んでたまるかっ。


 そう思ったのも束の間、俺は意識を手放した。



「・・・スさんっ。大丈夫ですかっ。アレスさんっ」


 俺を呼ぶ早紀の声に少しずつ意識が戻ってくる。

 目の前には泣きそうな顔の早紀がいた。


「俺は・・・?」


「よかった。アレスさんが助かって。大丈夫ですか?痛い所はないですか?」


 早紀の言葉に俺は早紀に助けられたんだと気づく。

 どこも何ともないことを素早く確認すると、早紀に礼を言い立ち上がる。

 いつの間にかうじゃうじゃと魔物が集まってきていた。

 早紀にここを動かないように念を押し、俺は魔物の群れに突っ込んで行く。


 もうこれ以上、早紀にかっこ悪いとこ見せられねえ。


 大剣を振り下ろし魔物どもを一撃で屠り、時には火魔法で応戦しながら着々と魔物を殲滅していく。

 早紀に目をやると、シルバーウルフの結界で守られているため、怪我の心配はなさそうだ。

 それでも何かの役に立ちたいのだろう、土魔法ピットウォールを使って上手く魔物を穴に落としたり、戦闘の邪魔にならないようにヒールをかけたりしていた。

 初めての戦闘だろうに特に怯えた様子もなく安心する。

 取り乱しでもしたら危険だが、あいつは昔から肝が据わったところがあるからな。


 魔物を殲滅し終えると、俺たちはマルクルたちと合流すべく森の奥へと向かった。


 アジトらしき廃村でも魔物との戦いが繰り広げられていた。


 何があった?

 ん?

 あれは・・・ティーナ?


「ティーナの様子がおかしい。魔力切れを起こしかけてるな。大変だ。加勢するぞっ」


 俺の掛け声とともにグリーントレント討伐組だった面々も武器を手に飛び込んで行く。


 なんだ?

 この大量の魔物は。

 それにちらほらAランクの魔物の姿も見えるぞ。


 手強いAランクの魔物はシルバーウルフが率先して倒してくれているようだ。

 時折、光の粒が降り注ぎ、傷を癒してくれる。

 早紀の光魔法キュアだ。


 そうして俺たちは魔物を一掃し終えた。

 なんでこんなことになったのかを考えるのは領主やエド、マルクルの仕事なので、俺はそっと早紀の様子を窺った。


 早紀はマントの下の鞄から出来立てのような焼き菓子を取り出し、シルバーウルフに与えていた。


 時間停止魔法付きのアイテムバッグか?


 シルバーウルフが食べている間に早紀は領主をはじめ、一人一人にお疲れ様でしたと声をかけ、ヒールで傷を治して回っていた。

 俺の所にも来ると、同じようにお疲れ様でしたと声をかけ、ヒールをかけてくれた。


 たいした怪我はしてなかったんだがな。


「早紀のおかげで助かった。ありがとな」


 早紀の頭を撫でながら言うと、早紀は嬉しそうに笑ってくれた。


 ああ、思いっきり抱きしめたいっ。

 早紀は俺のもんだって大声で言いたいっ。


 早紀がヒールをかけ終わってみんなが元気になった頃、マルクルから素材や魔石の回収を命じられた。


 ちっ、面倒くせえ。


 仕方なしに魔物から素材や魔石を回収していると、ふと早紀の姿が目に入った。

 レインのドスディモラスを抱きかかえながら領主と何やら話している。

 すると突然、早紀が領主に俺でもドキッとするような愛らしい笑顔を向けた。

 途端、領主が早紀に抱きつくのが見え、俺は作業を放り出し早紀の元へ走った。

 俺より早紀の近くにいた領主の息子が領主を引き剥がし、さらにレインまで早紀の側に駆け寄り何かを呟いている。

 俺が近づくと「仕方ないだろ、サキが可愛かったんだから」という領主の声が聞こえ、俺はキレた。


「こいつ、ぶん殴ってもいいか?」


 領主の息子に許可を求めると息子まで、


「ええ。私も手伝います」


 と腹黒い笑顔で言った。


 物わかりのいい息子でよかった。


 いざ領主をと思ったとき、さらに領主がのほほんと、


「本当にサキは可愛いねえ。どうだい?やっぱりうちの子にならないかい?」


 やっぱ、殺るしかねえ。


 そう思って実行に移そうとしたとき、マルクルが来て早紀にアイテムバッグを使わせてくれと頼んだ。

 早紀は慌てて誤魔化そうとしたが、マルクルにもうバレてるだろと言われ、あんなアツアツの焼き菓子まで出せるんだから時間停止魔法も付いてるんだろと指摘されると、目を潤ませて泣きそうな顔になった。


 俺が慌てて、


「大丈夫だ。アイテムバッグくらい俺たちも持ってるぞ。さすがに時間停止魔法までは付いてないが・・・」


 領主の息子も、


「そうですよ。持つのを禁止されているわけじゃないですし、少し時間停止魔法が珍しいだけで・・・」


 とフォローする。


 フォローになってるよな!?


 結局、早紀のアイテムバッグにAランクのレアもの、キングボア、スチールバード、マトルトサーペント、マーダーグリズリーを入れると、早紀はお肉っお肉っと何だか浮かれていた。


 そんなに肉好きだったか?


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