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のんびりまったり異世界生活  作者: 和奏
第一章 こんにちは異世界
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47 イヴァンだけで十分です

 ふと、あいかわらずイヴァンの頭の上でとぐろを巻いてチロチロ舌を出しているアクエが目に入った。


 あっそうか。

 いいことを思いついた。


「領主様。ではこうしましょう。アクエのことを王宮に報告してください。アクエなら話せますから意思の疎通もできます。まあ、その後アクエがどんな行動をとってもアクエの勝手ですから責任は持てませんけど」


 次にアクエに向かうと、


「アクエ、しばらくはまだこの国にいるのよね?魔力が足りなくてラシュートのお家に帰れないって言ってたから。だったら王宮に行ってみたらどう?きっと王宮なら優秀な魔術師もたくさんいるだろうから魔力もたくさん分けてもらえるんじゃない?」


 目に力を込めてアクエを見れば、アクエの返事はあっさりとしたものだった。


「嫌だ」


「どうしてっ?アクエが頷いてくれれば全て丸く収まるのにっ」


「王宮にサキはいないのであろう?我はサキの魔力がいいのだ。甘くて優しくて心地良い。なので、サキ、我もお主と従魔契約をしてやろう」


「・・・はい?」


 何を言ってるんだ、このヘビは。


「お断りします」


「何故だっ。精霊との従魔契約を断るなど前代未聞だ。何が不満なのだっ」


 なんだか切れ気味のアクエに、


「だってもうイヴァンと契約してるもの。イヴァンだけで十分でしょ」


「こやつは風の精霊だろう。我は水の精霊ゆえ水の加護が付与できるぞ」


「だからもう間に合ってます」


「サキはまだ水の加護は持っておらんだろう」


「持ってないけどいりません」


「だから何故だ。持っておらぬなら持っていても損はなかろう」


「損得の問題じゃありません。ああ、そうだ。どうしても付与したいのならレインさんにしたらどう?レインさんは水属性の魔法使うから」


「誰でもいいわけがなかろう。それにそこの男はもうドスディモラスと従魔契約をしておる。何故、精霊の我が魔物ごときと同じ従魔にならねばならん」


「魔物ごときって何?サクラはもう随分前からレインさんと従魔契約を結んでいるの。いわゆる従魔の先輩よ。その先輩に対してその言い方は失礼でしょ」


「だから、何故精霊である我が魔物などと同列視されねばならん。おかしいであろう」


「どこが?」


「どこもかしこもだ。何ゆえサキはドスディモラスの肩を持つのだ」


「かわいいからに決まってるでしょ」


「・・・は?」


「サクラはかわいいのよ」


「意味がわからん」


「だーかーらー」


 そっとサクラを抱き上げ、サクラの顔にほっぺたをスリスリしながら、


「かわいいは正義よっ!かわいければ何でもアリなのよっ!」


 と言い切った。


 本日二度目の台詞である。


 私の言葉を聞いたアクエは見るからにショックを受けた顔で、


「つまり我はドスディモラスにかわいさで負けたというのか・・・」


 そのままイヴァンの頭の上でへにょんとうなだれている。


 そして私はなるべく優しく聞こえるように、


「というわけでアクエ?王宮へ行ってその傷ついた心を癒してくればいいわ。ぜひそうしなさい」


 後ろから「悪魔だ」という声が聞こえたが無視(スルー)だ。


「フェンリルよ。何故お前は良くて我はダメなのだ?同じ精霊であろう?」


 悲しげなアクエの声に少し胸が痛んだが、そこへ容赦なくイヴァンの一声が飛ぶ。


『見た目だろう』


「お前も我がかわいくないというのか?お前だってかわいげなどないだろう?」


「あらっ。イヴァンはかわいいわよ。でもそれ以上にかっこいいのよ」


 すかさず私が言うと、


「サキは我には格好良さすらないというのだな」


 またしても後ろから「地獄に叩き落したぞ」という声が聞こえたが無視(スルー)だ。


「大体もう一つ魔法属性が増えたところでお主の魔力なら何の問題もなかろう。何故そうも嫌がるのだ」


「・・・だって。属性が三つあるだけで知らない冒険者の人たちに絡まれそうになってるのに、さらに増えちゃったらどうなるの?今はイヴァンがいてくれるからいいけど、本当の私は力のない弱い人間なの。料理をするための包丁とか果物を剥くためのナイフくらいしか持ったことがないの。そうじゃなくても冒険者の人たちは体格がいいから素手でこられても私、太刀打ちできないの。もちろん、イヴァンに魔法も教わって少し使えるようにはなったけど使いこなせる自信もないし。

 今は毎日を普通に過ごすのに精一杯でなるべく危険なことには関わりたくないの。それにいろいろ事情もあって面倒事にも巻き込まれたくないの。だからごめんね。アクエ」


 私はアクエに本心を告げた。

 いや、正確に言うと本心の一部だ。


 すると何故かアクエは急に元気を取り戻して嬉しそうに言った。


「サキは狼藉者から身を守れれば良いということだな。ならばそれこそ我と従魔契約をした方が良い。なぜならば我と契約すれば転移魔法が付与できるからだ。転移魔法があればいつでも逃げることができるぞ。これならば問題なかろう」


「転移魔法?」


 つまりアレだよね。

 行きたい所へ一瞬で移動できる便利なやつ。


 え?

 もうイヴァンという名のジェットコースターに乗らなくてもいいってこと?

 何それ、おいしいかも。


 揺れる私の心を察してか、アクエはさらに畳みかけてきた。


「他に変異魔法も付与できるぞ」


「変異魔法?」


「うむ。姿形を変えられる魔法だ。まあそんなに長くは持たぬが一時、目を誤魔化すくらいはできよう」


「・・・例えば髪の色とか瞳の色とかを変えたりできる?」


「簡単なことだ」


 じゃあわざわざカラコンつけなくてもいい?

 異物感に慣れなくて本当はあまりつけたくないんだよね、カラコン。


 どうしよう。


 チラッとアクエの下のイヴァンに目をやると、面倒くさそうにあくびをしながら、


『それならまあ、悪くはないな』


「おお、フェンリルの許可が出たぞ」


「イヴァンはいいの?」


 こんなのが増えて・・・とこれは声に出さず・・・と思ったら


「聞こえておるぞ」


 とアクエの不機嫌な声が聞こえた。


 なんだ、やっぱりアクエも念話できるんだ。


 うーん、迷うなあ。


「迷っているならさっさと契約してしまえば良い。悩むのはそれからでもよかろう」


 何、簡単に言ってくれちゃってんの。


 私の本心の大部分を占めること、それは。


「ねえ、仮によ、従魔契約をした場合、アクエはどこに住むの?まさか一緒に住むわけじゃないよね?」


「フェリルンは一緒に住んでいるのであろう?なら我も一緒だ」


「だからそれが嫌なの。家の中でヘビがにょろにょろ勝手に歩いてるとかありえないっ。ヘビは飼育ケージに入れて飼うものなの。家にいる時はケージから絶対出ないって約束できる?」


「ケージとは何だ?」


「ガラスなんかでできた透明な四角い箱よ」


『そんなもの、こやつには無駄だぞ。転移魔法があるからな』


 そうか。

 転移魔法が付与できるってことは自分も使えるってことか。


「じゃあ、無理ね。絶対無理」


「何故だ?」


「私の従魔になったら家に入り放題でしょ。転移魔法で好きな所へ行けるってことは、私がお風呂に入ってるときとかベッドで寝てるときでも飛んで来れるってことじゃない。そんな変態エロヘビと従魔契約とか絶対に無理っ」


「変態エロヘビ・・・。サキ、お主には精霊を敬う気持ちはないのか?」


「ないっ」


 きっぱり私が断言するとアクエはまたイヴァンの頭の上でへにょった。


「・・・フェンリル。こやつは一体何なのだ。これまで千年以上生きてきてこんな扱いを受けたのは初めてだ」


『これがサキなのだから仕方あるまい。どうしても従魔契約がしたいのであれば、サキの言い分を飲むしかないな。サキはどうもお前の姿形が苦手らしい。どちらにせよ、お前には水が必要であろう。風の森にもそう広くはないが湖がある。ならば夜くらいはそこで眠るのだな』


「うむ。少し納得いかぬところもあるが仕方ない。サキ、夜は風の森にある湖で休むことにする。なるべくお主が気に入らぬことはせぬよう心掛けよう。どうだ?これなら従魔契約してもらえるか?」


 私は顎に手を当てて少し考えてみる。

 まあ、多少の譲歩は必要だよね。

 いきなり出現することさえなければ、まあいいか。


「しょうがないわね。従魔契約してあげる。でも約束はちゃんと守ってよね」


「おお、わかっておる」


 嬉しそうなアクエの声とは逆方向から「何故サキの方が偉そうなんだ」という声が聞こえたがやっぱり無視(スルー)だ。


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