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のんびりまったり異世界生活  作者: 和奏
第一章 こんにちは異世界
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36 かわいいサクラとかわいいリタさん

 次の日、いつもより早く起き出し、朝食用と昼食用のサンドイッチを作っている。

 たぶん、戦闘中にのんびりご飯なんて食べてる暇なんてないと思うけど、あのイヴァンのことだ、何を言い出すかわからない。

 途中で帰ると言われても困るので準備だけはしておこうと思う。

 それに昨日寝る前にふっと思ったのだ。

 レッドボアの肉をカツにしたら美味しいんじゃないかと。

 なので朝からカツを作ってます。


 ボウルに卵を割り入れ、小さじ一のサラダ油を加える。

 油を加えると肉の旨味を逃さず作れるってテレビで見てからはこの方法で。

 小麦粉、卵、パン粉の順につけると低温の油で一度じっくり揚げ、その後高温の油で一気に揚げる。

 出来上がったカツをレタスで挟んだカツサンドと、刻んだゆで卵にレタス、きゅうりを挟んだたまごサンドを作った。

 温かいコーヒーを入れた水筒と一緒にそれらをアイテムバッグに入れると素早く朝食を済ます。


 ジーンズとシャツに着替え、昨日買った革の胸当てをつける。

 髪を三つ編みにし、カラコン装着。

 小手をつけて最後にアレスさんに買ってもらった紺色のマントを羽織れば準備完了。


 いつものようにイヴァンに乗って、街の少し手前まで駆け抜ける。

 いい加減慣れなくちゃとは思うんだけど、なかなか上手くいかない。


 いつも利用している門が西門のようで到着するとエドさんやマルクルさんの姿が見えた。

 足早に駆け寄って「おはようございます」と挨拶すると「おはよう」と返ってきた。

 約束の時間にはまだ少し早いようで、領主様一行や冒険者の方々の姿は見えなかった。

 私はイヴァン、アレスさん、城の騎士の方数名、警備隊から数名でグリーントレントの討伐に向かうことになっている。

 少しして領主様一行が騎士様方と一緒に現れると、何だか場が一気に重苦しい雰囲気になる。


 うん、遊びに行くんじゃないもんね。

 私、何だか足手まとい感ハンパないんだけど。


 領主様とグリセス様に挨拶をしているとドラゴンナイトのメンバーがやって来た。


「おはようございます」


「ああ、おはよう」


 領主様方とドラゴンナイトの方々が挨拶を交わす。

 頃合いを見計らってアレスさんに近づくと、


「おはようございます、アレスさん。昨日はありがとうございました」


 もう一度マントのお礼を言っておく。

 それと忙しいのに時間を取ってくれたことやいろいろ心配してくれたことも。


「いや、気にするな。それより大丈夫だったか?」


「はい。心配していただきましたけど、全然平気でしたよ」


「え?何?どうしたの?」


 私たちの会話を耳に留めたシェリーさんが会話に入ってくる。


「いえ、何でもないです。昨日、アレスさんにこのマントを買っていただいたので、お礼を言ってたんです」


 野宿の話をして話がこじれるのも面倒なので、マントの話だけ振っておく。


「え?アレスに買ってもらったの?」


 シェリーさんがニヤニヤ笑いながらアレスさんを見て、


「ふーん。どういう風の吹き回し?アレスには心に決めた(ひと)がいるんじゃなかったの?」


 何だか含んだ言い方をされたアレスさんは少し目元を赤くしながら、


「なんでもねえよ。クッキーの礼だ」


 と吐き捨てそっぽを向いた。


 するとレインさんまでにっこり笑って、


「では私もあなたに似合うドレスを贈らせていただきますね」


 朝からイケメンの笑顔はキツイです。


「結構です」と断ったけど、レインさんは「この子を助けていただいたお礼をさせてください」とマントの下からパンダもどきのサクラを出した。


 いやいや、私が助けたわけじゃないですからっ。


 サクラは私と目が合うと、そっと腕を伸ばして私に抱きついた。


 かわいすぎるっ。

 そんなつぶらな瞳で私を見つめないでっ。


 しばらくサクラを堪能していたら、サクラがそっとイヴァンの方に手を伸ばしたので、イヴァンの方に行きたいのかなと思った私はイヴァンに、


「落とさないでね」


 と声をかけてからそっとイヴァンの背中にサクラを降ろした。

 するとサクラはもぞもぞ動いて移動するとイヴァンの頭の上にポテッと自分の頭を置いて動かなくなった。


「かっ、かわいいーっ!写真撮りたいっ。でもカメラがなーいっ。やだ、何で?何でこんなにかわいいのっ?」


 一人興奮状態の私に後ろから声がかかった。


「何騒いでるの?」


 振り向くとフェアリーウィングの皆さんだった。

 私は思わず、声をかけてきたリタさんの腕を取り、


「見てくださいっ。めちゃくちゃかわいくないですか?かわいいですよねっ。ここまでかわいいともう犯罪ですよっ」


 イヴァンとサクラを指差し、いつのコーコーセーのノリだよと突っ込まれそうなテンションでリタさんに捲し立てた。

 かなり引き気味のリタさんは幾分視線をさまよわせながら言った。


「う、うん。かわいい・・かな?」


「ええ。かわいいですっ。かわいすぎますっ」


 そんなリタさんの目をしっかり見つめて私は言い切った。


「かわいいは正義ですっ。かわいければ何でもアリなんですっ」


 しばらく呆然としていたリタさんだったが、ハッと我に返ると私の腕をつかんで、


「つまり、女はかわいい方がいいってことなの?」


「・・・はい?」


「私が結婚できないのはかわいくないからなのね?」


「・・・はい??」


「私が結婚するためにはかわいくなればいいのね?どうすればかわいくなれるか教えてちょうだい、サキ」


「・・・はいっ!?」


「すまん。こいつは昔から結婚願望が強くてな。なかなか結婚できなくて焦ってるんだ」


 ガレルさんの言葉に、私は信じられない思いでまじまじとリタさんを見つめた。


 こんなにボン、キュッ、ボンのナイスバディなのに?


「一体、何がダメなの?」


 リタさんの顔は真剣そのものだ。


「うーん。男の人のみならず、女の私でも抱きつきたくなるようなナイスバディなのに・・・。あっもしかして露出しすぎなんじゃ?」


 ?マークを浮かべるリタさんに、


「男の人は見えそうで見えないチラリズムが好きな人が多いって昔聞いたことがありますよ。本当かどうか知りませんが。これがダメだというなら、そうですね。肌の露出の少ない、でも体のラインは綺麗なので体のラインがわかるピッタリとした服を着てみるのはどうですか?案外その方が色気が出るかもしれません」


「・・・色気・・・」


「ええ、もしくは反対に大きめの服を着て華奢に見せるのもいいかも。長めの袖とかお尻が隠れる長さのシャツとかかわいいですよ。そうそう、女の子の憧れ、彼シャツですよ」


「・・・彼シャツ・・・」


 しばらく考え込んでいたリタさんだが、突然ガシッと私の両肩を掴むと、


「サキ、この仕事が終わったらじっくり話をしましょう。私の輝ける未来のために。いいわね?」


 リタさんの有無を言わせないオーラに私は頷くことしかできなかった。


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