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のんびりまったり異世界生活  作者: 和奏
第一章 こんにちは異世界
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17 首飾りをつけたイヴァンはさらに男前になった

 さて、夕食までの時間、何をしよう。

 庭いじりをするには少し時間が遅いし、夕食を作り始めるには少し早い。


 どうしようかな。

 そうだ。


 私は二階の書斎に入るとがさごそ必要な物を取り出した。

 ここは夫の書斎だけでなく、私の趣味部屋も兼ねていた。


 それを持って一階に降りるとダイニングテーブルの上に広げてみる。


 うーん、何色がいいかな。


 やっぱり森の緑と空の青、湖の水色・・・かなあ。

 所々に赤を混ぜるのもいいかも。


 いろいろ配色を考えていると、イヴァンの声がした。


『これは何だ?何をしている?』


「ん?ああ、ビーズでイヴァンの首輪を作ろうと思って。まあ、首輪というより首飾りに近いけど」


 視線を動かさずに私が答えると


『首輪?・・・そんなものいらんっ!』


 イヴァンの不機嫌そうな声に


「うん、私だって本当は、家族だと思ってるイヴァンに首輪なんてつけたくないよ。でも街の人の反応を見たら・・・」


 今度はしっかりイヴァンの目を見て言う。


「やっぱり街の人たちにもイヴァンを受け入れてほしいと思う。イヴァンは本当に優しいもの。だから野良狼と区別するための印代わりに首にかけておいてほしいの。ダメ?」


 うーっっとしばらく唸り声をあげていたイヴァンだが、諦めたのか小さくため息をつき


『我に似合うものならばつけてやらんでもない。野良狼(・・・)とは思われたくないからな』


 と妥協してくれた。


 なので、張り切って作り始める。


 ビーズ手芸は私の趣味の一つだ。

 というか手芸全般が好きなのだけど。

 ちなみにリビングに飾ってあるサンキャッチャーも私の手作りだ。

 今までビーズでアクセサリーやバッグチャーム、和奏や洸大のためにストラップや髪飾りなどいろいろ作ってきた。


 今回は複雑な編み方はせず、シードビーズを使って一番基本の花編みで幅2cmくらいのひも状のものを編むつもりだ。

 配色次第でいろいろな模様を作ることができるけど、イヴァンがつけても違和感がないように幾何学模様にしようと思っている。


 釣り用の丈夫なテグスを用意する。

 本来ちゃんと手芸用のテグスも手芸店で売られているけど、ちょっとお高めなので、私は釣り用のテグスを使っている。

 釣り用なので丈夫なのはもちろん、ものすごく安い。

 よく作る人にはお薦めだ。


 テグスを適当な長さに切り、丸大ビーズを一つテグスに通し、そのビーズを中心にテグスの左右の長さをそろえる。

 左右のテグスに一つずつビーズを通し、さらに片方のテグスにもう一つビーズを通し、通していない方のテグスをビーズの反対側から通して交差する。

 それぞれ左右のテグスを引っ張ると中心に花のように4つのビーズが並ぶ。

 これが花編みの基本で、後は左右それぞれにビーズを通し次のビーズで交差するということを繰り返して好きな長さまで編んでいけばいい。

 幾何学模様になるようにビーズの配色を考えながら手を動かしていく。

 面倒だったので、展開図を作らずに編み始めたので、時々出来上がった物を確認しながら慎重に編んでいく。


 黙々と作業を進めていたら、ふと小さい頃の洸大を思い出した。

 小さい頃の洸大は昆虫が大好きで、特にカブトムシやクワガタに夢中だった。

 自分でも飼育していたが、ある日恵里がうっかりG退治のためにバル〇ンをたいてしまい・・・。

 もちろんカブトムシやクワガタは全滅した。

 洸大は相当ショックを受けたようで、三日間幼稚園も行かず部屋に閉じこもった。

 話を聞いた私もさすがにそれはかわいそうだと思い、洸大のためにビーズでカブトムシやクワガタ、カマキリなどの昆虫を作ってあげた。

 小さな飼育ケースを買ってきて、フェルトで木の枝なんかを作り、そこにビーズで作ったカブトムシやクワガタ、カマキリなどをセッティングしたのだ。

 自分で言うのもなんだけどけっこう上手くできたと思う。

 実際、洸大もすごく喜んでくれて、何とかバ〇サンショックから立ち直ったからね。


 なんてことを思い出していると、オーブンからチーンと高い音がして、パウンドケーキが焼きあがったことを知らせてくれた。


 オーブンから取り出すと、美味しそうな匂いが辺り一面に広がる。

 夕食後にと思っていたが、やっぱり焼き立てに勝るものはないとコーヒータイムにすることにした。


 夕食を少し遅らせればいいよね。


「イヴァン、コーヒーとお茶、どっちがいい?」


『コーヒー』


 すかさず、イヴァンから返事が返ってきた。


 苦笑いをしながら私には牛乳たっぷりのカフェオレを、イヴァンには砂糖たっぷりのコーヒーをスープカップに入れてテーブルに。


 汚れないようにビーズ一式を横にどけ、焼きあがったばかりのパウンドケーキにナイフを入れる。

 お皿に二切れのせ、イヴァンの前に置く。


「甘納豆入り抹茶のパウンドケーキよ。どうぞ、召し上がれ」


 私も一切れお皿にのせると椅子に座って


「『いただきます』」


 と手を合わせ食べ始める。


 米粉を使っているので、もちもちだ。


『おお、これも今まで食べた和菓子とはまた趣が違って良いな。美味い』


 これも気に入ってくれたようでよかった。


 パウンドケーキを食べていると、洸大のことを思い出した理由がわかった。

 ビーズ手芸をしていたこともあるが、このパウンドケーキの焼ける匂いだ。

 洸大はパウンドケーキが好きで、家に来るときはいつもパウンドケーキを焼いて用意していた。


 五感絡みの思い出ってその度に思い出すから忘れないんだよね。


 あっという間にパウンドケーキを平らげたイヴァンが、物欲しそうに残りのパウンドケーキを見ているので、そっと布巾を被せイヴァンの目から隠した。


 コーヒータイムを終えると、またさっきの作業の続きに戻る。

 更に二時間ほど黙々と作業を続け、ひも状のものを完成させ、首の後ろで留められるようにネックレス用の金具を取り付ける。

 最後に首元にぶら下げるためにスワロフス〇ー社のシズク型クリスタルを取り出す。

 小さいものだけど、さすがスワロフ〇キー社のクリスタルだけあってキラキラと存在感がすごい。

 色はイヴァンの目の色と同じブルーバイオレット。

 それを取り付けて完成だ。


「イヴァン、できたよ。ちょっとつけてみて」


 ラグの上でのんびりくつろいでいたイヴァンはのっそり立ち上がると渋々私のところまでやってきた。

 イヴァンの首につけてみると、


「わあ、素敵!イヴァン、すごく似合ってる。かっこいいよっ!」


 私はイヴァンを連れて浴室に入った。


 低いところにある鏡ってここくらいなんだよね。


 体毛がシルバーなので、青や緑が良く映える。

 ひも状の両端は金色のビーズで縁取り、金色のビーズに挟まれた部分は青や緑、水色の幾何学模様で所々に赤色のビーズが配色されている。

 やはり一番目立つのは首元のシズク型クリスタルだ。

 光が反射してキラキラ輝いている。

 あんなに嫌がっていたイヴァンもまんざらでもないらしく、どことなく浮かれているようにも見えた。


『うむ。なかなか良いな』


「よかった。気に入ってもらえて」


 ホッとしたせいか、ぐぅーっと私のお腹が鳴った。


 早くご飯作らなきゃ。


申し訳ありませんが、次回から偶数日の投稿となります

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