16 甘納豆入り抹茶のパウンドケーキは和菓子か洋菓子か
家に帰るとすぐにシャワーを浴び、早速お昼ご飯を作り始める。
すでに時刻は二時。
帰る道すがらお昼は何にしようかなんて話をしていて、結局焼うどんを作ることにした。
冷凍庫に入れてあったうどん三玉を解凍している間に、キャベツ、人参、長ネギを食べやすい大きさに切り、油を引いたフライパンでよく炒め塩こしょうを軽く振る。
隣のコンロで目玉焼きを作る。
野菜がしんなりしたらほぐしたうどんを入れ炒め合わせ、醤油、みりん、だし汁、オイスターソースを入れてさらに炒める。
水分がなくなったらお皿に盛り付け、かつお節、紅しょうが、青のりをかけ、最後に目玉焼きをのせれば完成。
イヴァンの前には大盛りの焼きうどん、私は普通に一人前。
「『いただきます』」
手を合わせて食べ始める。
うん、美味しい。
普通の焼きうどんだけど。
イヴァンも、最初は細長いうどんに手こずっていたけど、慣れると器用に吸い込んで食べている。
変わった狼よねえ。
『我は狼ではない。フェンリルだ』
うどんを口に入れながらイヴァンの抗議。
「もう!勝手に私の思考を読まないでっ。ずるいよっ。シルバーウルフのふりしてるくせにーっ!」
考えていることが全部バレるってどうなの?
『我が読むというより、サキの思考が漏れているだけなのだが』
「えっ、私が悪いの?」
あんまりだ。
『・・・うむ。わかった。後で思考が漏れない方法を教えてやる』
「そんな方法あるの?」
『お前の魔力で壁を作れば良い。少し練習すればできるようになるだろう』
「もう!そんな方法があるならもっと早く教えてよっ」
『・・・お前という奴は・・・』
イヴァンのため息が聞こえた気がしたが無視だ。
昼食後、イヴァンに教えてもらって少し練習すると思考ダダ漏れ状態は改善された。
気を抜くと漏れちゃうけどね。
依頼品は新鮮な方がいいだろうから明日の朝摘んで持っていくことにして、今日はどうしよう。
時計を見ると三時半を少し回ったところだ。
チラリとイヴァンに目をやると、いつものようにリビングのラグの上に、大仕事をしたので今日はもう終わりとばかりに寝そべっている。
確かに今日はいろいろ頑張ってもらったからなあ。
お礼代わりに何か作ろうかな。
冷蔵庫とパントリーを確認して・・・和菓子の材料が何もないことが判明した。
パントリーで袋入りの甘納豆を発見したくらいだ。
うーん。
そうだ。
甘納豆入りの和風パウンドケーキを作ろう。
確か米粉も抹茶パウダーもあったよね。
材料を取り出しキッチンで作業開始。
ボウルにバターを入れ柔らかくしている間に米粉、ベーキングパウダー、抹茶パウダー、甘納豆を混ぜる。
柔らかくしたバターに砂糖を入れて混ぜ、よくかき混ぜた卵を加えてさらに混ぜる。
この中に米粉や甘納豆を入れたものを混ぜると生地が完成。
できた生地をパウンドケーキの型に入れオーブンで焼く。
よし、後は焼き上がるのを待つだけだね。
今のうちに洗濯物を取り込んでおこうと二階へ上がる。
取り込んだ洗濯物をたたむとクローゼットに片付け、バスタオルなど水回りで使うものを持って階下へ。
脱衣所でバスタオルやパジャマ類をかごや引き出しにしまってからキッチンに戻る。
ふんわりパウンドケーキの焼ける匂いがしている。
そして・・・何故かオーブンの前でイヴァンがしっぽを振りながら待機していた。
「・・・」
『これは何だ?何かいい匂いがしているが・・・』
「パウンドケーキを焼いてるの。あと二十分くらいで焼き上がるわ。でもこれは夕食の時のデザートだからね」
明らかにしゅんとしたイヴァン。
でもさっきお昼ご飯食べたばっかりだし。