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のんびりまったり異世界生活  作者: 和奏
第一章 こんにちは異世界
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14 商業ギルドへ行こう

 ロザリーさんに教えてもらった通りに歩いていると、やはりイヴァンが怖いのか街の人は皆さっと道をあけて避けてくれる。


 おばさんはちょっと悲しいぞ。


 時折、見て、月の女神ルーナオレリア様のような真っ黒の髪よ、なんていう会話も聞こえてきてアンバーのカラコンをしていなかったらどうなっていたことかと怖くなる。


 しばらく歩くと、目の前に白を基調とした、冒険者ギルド以上に立派な建物が見えた。


 これが商業ギルド。


 今回はエドさんがいないので一人だ。


 大丈夫かな。


『我もいるぞ』


 イヴァンの声に、そうだ一人じゃないんだと勇気づけられるが、商業ギルドでイヴァンが役に立つとは思えない。

 威嚇する相手がいるのか?


 扉を開けて中へ入ると、中もやはり白を基調とした清潔感あふれる場所で、冒険者ギルドのようにガヤガヤうるさい感じもない。

 まあ、冒険者ギルドは受付窓口のすぐ隣に酒場のようなところも併設されていたので仕方がないのかもしれないけど。


 イヴァンも私の後ろから入ってくると一瞬しんと静まり返ったけど、その後ざわざわと騒ぎ出したのでどうしようと焦っていると、奥から恰幅の良い人の良さそうな四十代くらいの男の人が出てきた。


「なんの騒ぎだ」


 男の人が大声で怒鳴るとそれまでの騒ぎが噓のように静かになった。


 誰、この人?

 冒険者のような荒くれ者集団ではないにしろ、一言でこの場を収拾しちゃうなんてよっぽど力のある人なのかな。


「騒ぎの原因はお嬢さん・・・いやそのシルバーウルフか」


 大きなお腹を揺すりながら、ゆっくりとした歩調でこちらに近づいてくる。


「私はカイセリの街の商業ギルドのギルマス、サラトスです。お嬢さんは何の用でここに?」


「あっ、私はサキといいます。この子はイヴァン。私の従魔です。賢くていい子なので何もしませんよ。今日は商人登録をしに来ました」


「商人登録?お嬢さんが?失礼ですが、まだ成人していないように見受けられますが・・・」


 出たよ。

 まただよ。

 私、そんなに若く・・・というより子供に見えるのかなあ。

 四十八才の私が三十代に見えるって言われたら素直に嬉しいけど、十八才の高校生が中学生みたいと言われて嬉しいとは思えない。

 なんだか複雑だわ。


「私、十八才です。成人してます」


 そう言うと、やっぱりえっ!という顔をされた。


「それは失礼しました。ではこちらにどうぞ。リカヤ、手続きを」


 さすが商業ギルドのギルマス。

 すぐに何事もなかったかのように私を案内してくれる。


「できれば次回からはそのシルバーウルフは外でお待ちいただけると助かります。皆見慣れないもので・・・」


「はい、わかりました。すみません。お騒がせしてしまって」


 私が頭を下げるとサラトスさんは笑みを浮かべながら、


「いえいえ、わかっていただければそれでけっこうです。では私はこれで」


 と奥の方へまた戻って行った。


「ではこちらで登録の手続きをお願いします。私はリカヤと申します」


「サキです。よろしくお願いします」


 ここでも一枚の紙とペンを渡され、記入できるところだけでいいのでご記入お願いしますと言われた。


 結局ここでも冒険者ギルドで書いたのとほぼ同じことくらいしか書けない。

 というか書く欄そのものが少ない。


 名前、性別、年齢、出身国もしくは拠点。


 それだけ書いてリカヤさんに手渡すとあっという間に手続きが済んで、薄い黄色のギルドカードを渡してくれた。


「では少し説明させていただきます」


 リカヤさんの説明によると


 商業ギルドも冒険者ギルドと同じく各国にあること。

 商人は毎年一度、登録した月を基準に一年間の売上と経費を計算して利益を出し、利益に応じた額の税金を支払う義務がある。

 正当な理由なく支払が遅れると遅延金が発生する。

 三年間税金の支払がされないと登録抹消となり向こう五年間再登録はできない。

 ただし、利益がなかった場合はこの限りではない。

 人身売買などギルドの規則に違反した取引をした場合、除名処分となり二度と商人登録はできない。

 国に納める税金等はギルドが代わりに手続きをするけど、納税場所は拠点登録している国、していない場合は出身国になる。

 なお、拠点登録はいつでも変更可能である。


 商業ギルドって税務署を兼ねてるんだね。

 確定申告が必要とか元の世界と似ているところもある。


「では登録料として銀貨三枚お支払いいただきます。今すぐでなくてけっこうです。ただし、三ヶ月以内にお支払いがなければ登録解除となり一年間は再登録できません。ギルドカードは身分証も兼ねていますので紛失には充分にお気をつけください。失くされますと再発行手数料がかかりますので。何か質問はありますか?」


「何をどんな風に売っても自由ということですか?」


「基本的にはかまいません。親の代からなどでなければ、初めて商売をされる方は露店や屋台から始められる方が多いですね。あっ、申し訳ありません。言い忘れていましたが、露店や屋台を出せる区画は決まっていますのでおおよその場所が決まりましたらご相談ください。空いてる場所を探させていただきます。最初から店舗を借りる場合もその店舗の場所をお知らせください。空き店舗情報もありますのでこちらもいつでもご相談ください」


「わかりました。商売の準備ができたらまた相談に来ます。登録料も今は手持ちがないのでまた近いうちに支払いに来ます。いろいろとありがとうございました」


 ペコリと頭を下げて入り口へ向かおうとすると、リカヤさんが遠慮がちに


「あのぉ・・・」


 と声をかけてきた。

 帰りかけていた体をリカヤさんへ戻すと


「何でしょう?」


「すみません。個人的にどうしてもお聞きしたくて・・・」


 何か言いづらそうにしているけど、何かしら?


「あなたの穿いていらっしゃるそのスラックスですが、いったい何の生地でできているんでしょうか? 最初に見たときからずっと気になっていて……」


 えっ?


 思わず下を見る。

 膝から下しか見えないけど。

 スキニージーンズ、いわゆるデニムだ。

 デニムって何から出来てるんだっけ?

 確か洗濯表示のタグにコットン百パーセントってかいてあったような・・・。

 つまり、綿よね。


「綿ですよ」


「えっ?綿ですか?」


 驚いているリカヤさんに


「ええ、素材は綿ですが普通の綿生地よりも厚く作られていると思います。染色の方法も違うかも・・・」


 縦糸は染めてあって、横糸は染めてない糸を使って織るんじゃなかったかな?

 うろ覚えだけど。


「そのスラックス、どこで売っているんですか?というよりその生地はどこで織られているんですか?」


 何ですか、リカヤさんのその食いつき。

 びっくりなんですけど。


 そうか、デニムはよくなかったのか、普通の綿パンにしとけばよかった・・・って綿パン持ってないや。


「えーと、・・・秘密です」


 ああ、情けない。

 半世紀近く生きているのにこんな言い訳しか出てこないなんて。


「申し訳ありませんっ」


 突然リカヤさんが頭を下げて謝ってきた。


「そうですよね。これからお商売をされるのに商品のことをペラペラ喋るわけにはいきませんよね。販売されるようになったら、私、絶対に買いに行きますね」


 リカヤさんはにっこり笑ってそう言った。


 私、生地屋さん始めるとは一言も言ってない。


 なんだか言い出しにくい雰囲気だったので笑って誤魔化しておいた。

 結局、イヴァンが大して変わらないと言ったデニムも注目を浴びることになってしまった。


 ホント、目立ちたくないんだってばっ!


 リカヤさんにお礼を言ってギルドを出るとすぐ前の広場からいい匂いが漂ってくる。


 ぐぅー。


 匂いに釣られて私のお腹が鳴った。

 そろそろお昼時なんだろう。

 あちらこちらの屋台は買い求める人でいっぱいだった。


 何を売っているんだろう。


 すごく香ばしい匂いに誘われて屋台を覗くと何かの肉を串にさし、タレのようなものをつけて売っていた。


 美味しそう・・・


 と思った瞬間、私のすぐ隣で悲鳴があがった。


 あっ、マズい。


 私はイヴァンを連れて一目散にその場を後にした。

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