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のんびりまったり異世界生活  作者: 和奏
第一章 こんにちは異世界
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11 冒険者ギルドへ行こう

 冒険者ギルドは門からそう遠くない所にあるそうで、歩いて十分くらいの距離らしい。

 エドさんと連れ立って歩いていると後ろからイヴァンがおとなしくついてくる。


「このシルバーウルフはおとなしいな。人間の言葉も理解しているようだし」


「ええ、とても賢いんです。ちゃんと私の言葉も理解してくれています」


 エドさんと一緒に歩きながら街の様子を観察する。

 やはり中世のヨーロッパを思わせる街並みで、街の規模もそれなりにあるのか人の往来も多く活気づいている。

 道行く女性を見るとほとんどの人がくるぶしまであるワンピースを着ていて割合簡素に見える。

 男性は綿パンにチュニックタイプの上衣が多いようだ。

 あちらこちらに目を向けてみるが、イヴァンのような大きな従魔の姿は見当たらない。

 それどころか、イヴァンを見て固まっている人や、人や物の後ろに隠れる人、泣き出す子供までいる始末。


 目立ちたくないって言ったのに・・・。


「サキは今までどこにいたんだ?シルバーウルフを連れていたら噂の一つでも聞こえてきそうなもんなのにな」


 エドさんの問いかけに私は


「風の森のもっとずっと南にある森で、生まれてからずっと暮らしていましたが両親が亡くなって・・・。話に聞いたことしかない街に行ってみたくてイヴァンと一緒に森から出てきました」


 とすらすらと答えた。


 これは事前にイヴァンと打ち合わせをしてなるべく怪しまれないような設定を考えておいたのだ。


「ずっと森で暮らしてたのか?じゃあその森でシルバーウルフを?」


「ええ、自給自足の生活で森で薬草を採取したり、弱い魔物を狩ったりして暮らしていました。

 ある日、オークに襲われたところをイヴァンに助けてもらったんです。それからずっと一緒です」


 あぁ、いつの間にこんなに嘘がペラペラと出てくる人間になったのでしょう・・・。


 遠い目をしながら心の中でつぶやき、隣を歩くエドさんをチラリと見上げる。

 そう、ここの人たちは全体的に皆大きい。

 男の人も女の人も。

 エドさんだって、百八十センチは軽く超えているように思う。


 それもあって私が子供みたいに見えるんだろうなあ。

 高校生の頃の身長は百五十五センチほどでそれ以降全く伸びずに大人になって、若返った今でもそんなに変わらないと思う。


 なんてことをぼんやり考えていたら、突然ぐすんと鼻をすする音が聞こえた。

 隣を見るとエドさんが目を潤ませながら


「小さいのに苦労したんだなあ。えらいなあ。よく頑張ったなあ」


 と言いながら私の頭を撫でてくれた。


 エドさん、いい人ーっっ!


 うぅ、噓八百並べたてた私の心が痛い。


 ごめんなさい、エドさん。


 本当のことは言えないので心の中で謝っておく。

 頭をポンポンされている間に冒険者ギルドに着いたようだ。


「ここが冒険者ギルドだ」


 言われて見上げた建物は二階建ての立派なものだった。


「こっちだ」


 エドさんに案内されて建物の中に入って行くと、昼に近い時間のせいかそれほど人は多くなかったが、冒険者だけあってみんな体格が良く顔つきもなんだか怖い。

 内心ビクビクしていると突然ざわざわしていたギルド内が静かになった。


 ん?

 あぁ、みんなイヴァンを見てびっくりしてるんだ。

 やっぱりエドさんの言った通り珍しいんだなあ。


「サキ」


 名前を呼ばれて意識をエドさんに戻すと早く来いとでも言うように手招きされる。

 イヴァンと一緒にエドさんのところへ行くと、エドさんがギルドの受付嬢に冒険者登録を頼んでくれていた。


「ロザリー、この子の冒険者登録とシルバーウルフの従魔登録を頼む」


「はい、わかりました。ですが・・・」


 ロザリーと呼ばれた受付嬢はチラリとイヴァンの方を見て顔を強張らせたがすぐに笑顔に戻り、でも今度は私を見て困惑した様子で


「年齢制限は大丈夫でしょうか?」


「ああ、大丈夫だ。成人しているらしいぞ」


「そうでしたか。それは失礼しました」


 ホッとしたロザリーさんは笑顔で


「ようこそ、カイセリの冒険者ギルドへ」


 と言ってくれた。


「冒険者登録ですね」


「はい。お願いします」


 ロザリーさんは素敵な笑顔と共に一枚の紙とペンを手渡してくれた。


 こちらの文字が読めるかどうか不安だったが、さすがチート、ちゃんと読める。

 でも書く方はどうなんだろう。

 日本語で書いても大丈夫なんだろうか。


 まあ、ダメならロザリーさんに助けてもらおう。


 まず、名前・・・サキだけでいいのかな。

 次に出身国・・・さすがに日本って書くわけにもいかないし、エドさんにも南の方の森から来たって言ってるしやっぱりグルノーバル王国と書くべきなのかしら。


 などと思案しているとロザリーさんが助け舟を出してくれた。


「出身国として登録した国に税金を納めていただくことになりますのでご記入いただいているのですが、まれに両親共に冒険者であったり、定住地を持たない商人であったりして出身地が定かでない方もおられますので、国単位で記入していただいています。税の納付が主な目的ですのでその辺りは臨機応変に対応していただいたらよろしいかと」


 そっか、じゃあグルノーバル王国っと。

 生年月日や年齢を書く欄もあるが、うーん、これはどうしよう。

 四十八才と書くべきなのか?


 悩んだ末、空欄に。

 年齢は後で調べられるそうだ。

 ちょっと怖い。

 後は魔法属性だとか拠点だとかあったけど、よくわからないので空欄で。


 名前と出身国しか書いてないけどとりあえずこれで提出。

 日本語だけど大丈夫なようだ。


「一緒に従魔登録もしますね。そのシルバーウルフに名前はありますか?」


「イヴァンです」


 それを聞いたロザリーさんが何かの用紙に記入してくれる。


「では先にギルドカードを作成しますので、この球の上に血を一滴たらしてください」


 ロザリーさんは私に小さなナイフを手渡しながらそう言った。

 水晶なのかガラス玉なのかよくわからない透明な球体の上に血を一滴たらした。

 すると透明な球体の中で、金色と緑色と茶色の三色がぐるぐると渦を巻きだした。


「これは・・・サキは三属性持ちなのか?」


 エドさんの驚いた声に、目の前で固まっていたロザリーさんも我に返ると


「少々お待ちください」


 と言ってどこかへ行ってしまった。


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