48 コッペパン焼いてみた
週明け、勤務日当日の朝、すっきりと目覚めた私は、うーんと軽く伸びをすると階下へ降り身支度を整える。
一緒に降りてきた三人はリビングの思い思いの場所でまったりしている。
私たちに気づいたユラがヤドリギであるハナマイムの鉢植えから出てきた。
「おはよう、ユラ」
私の周りをフワフワするユラを捕まえてむにゅむにゅなでまくった。
ぷにぷにしてて気持ちがいいわあ。
ひとしきりぷにぷにを堪能した後、キッチンに行き朝食の準備。
今日はタコライス。
久しぶりのお仕事の日なので、がっつり食べようと思います。
玉ねぎはみじん切りに、レタスは食べやすい大きさに、プチトマトは四等分にする。
フライパンに油を熱し、玉ねぎを炒める。
玉ねぎがしんなりしたら、挽肉を入れてさらに炒める。
カレー粉、ケチャップ、ウスターソース、塩こしょうを入れて少し煮詰める。
器にご飯を盛ってレタス、炒めた挽肉をのせ、彩りよく切ったプチトマトを並べて、最後に切らしていたチーズの代わりにマヨネーズをかけて完成。
インスタントのコンソメスープと一緒にテーブルに並べると、リビングにいる四人に声をかけた。
素早く移動してくる四人と一緒に食卓を囲んで食べ始める。
いつもと変わらず騒がしいけど、楽しい朝食を終えると三人はリビングのテレビの前に思い思いの格好でスタンバっている。
イヴァンはハンモックの上に、ヴォルカンはソファに座り、シロはソファの前のローテーブルの上に水を張った器を置き、その中に入ってテレビを凝視している。
もちろん、朝ドラを見るためだ。
事の次第がわからないユラはリビング中をフワフワと飛び回っている。
そのうち、ユラもみんなと一緒に朝ドラを楽しむようになるのかもしれない。
始まるまでかなり時間があるんだけど・・・。
そう思ったけど、口にするのはやめた。
せっかくおとなしくしているのに騒ぎのタネを蒔く必要はない。
今のうちにおやつを作ろう。
今日のお昼のお弁当はイヴァンたちの分だけ用意した。
先週、エミリさんに昼食は一緒に食べましょうと誘われたからだ。
ただ、イヴァンには何を作ればいいかわからないと言われたので、イヴァンの分だけ作って持って行くことにした。
昨日、コッペパンを焼いたので、コッペパンサンドを作ってみた。
最近食パンばかり焼いていたので、たまには違うパンを焼いてみたくなったのだ。
ボウルに強力粉、砂糖、塩、ドライイースト、お湯、牛乳を入れてよく混ぜ合わせ、バターを加えてよくこねる。
こね終わったらボウルに戻し、ラップをして一次発酵。
生地が約二倍に膨らんだらガス抜きをして八十グラムほどに等分し、濡れ布巾を被せ少し休ませる。
細長く成型したら二次発酵。
約二倍の大きさになったら表面に牛乳を薄く塗り予熱したオーブンで焼けば完成。
ソーセージを挟んでホットドッグにしたり、たまごサラダとレタスを挟んだもの、ゆで卵とベーコンを挟んだものなど、コッペパンサンドを大量に生産し、さらにホイップクリームとあんこを挟んだデザート用のコッペパンも用意。
それらをアイテムバックに入れると、残ったコッペパンを油で揚げて、砂糖を混ぜたきな粉をまぶして、きな粉の揚げパンを作った。
三時のおやつ用だ。
昨日のおやつに揚げパン食べたからなあ。
今日はどうしよう。
最近ホイップクリームばかりだからカスタードクリームを作ろうかな。
いちごもあるし、冷凍パイシートもある。
カスタードクリームといちごのパイにしよう。
卵黄、砂糖をボウルに入れて混ぜ、薄力粉を加えてさらに混ぜる。
温めた牛乳を少しずつ加え、ザルでこしながら鍋に移す。
中火にかけながらとろみがつくまで混ぜ、滑らかなクリーム状になるとカスタードクリームの出来上がり。
次に冷凍パイシートを食べやすい大きさの長方形に切り、予熱したオーブンで焼く。
焼けたらカスタードクリームとスライスしたいちごをたっぷりのせて上からもう一枚焼けたパイシートを被せたら完成。
出来上がったカスタードクリームといちごのパイを、こっちがイヴァンの分、これがシロの分とみんなのおやつ用に振り分けたらお昼のコッペパンサンドと一緒に用意する。
「よし。お昼とおやつの準備ができた」
ふと前を見ると四人の精霊たちがジッと私を見ていた。
ちょうど朝ドラが終わったらしい。
「それはわしらの昼飯とおやつか?」
ヴォルカンがひげをぴくぴくさせながら嬉しそうに聞く。
「そうよ。こっちのコッペパンサンドがお昼ご飯で、ホイップクリームとあんこの挟んであるのがデザート用ね。それから今作ったのがおやつ。カスタードクリームといちごのパイよ。みんなの分を用意してあるから時間になったら適当に食べてね。今日は私、一日仕事があるの。夕方には戻るわ」
湖へ行くシロと森へ探し物に行くヴォルカンを見送ると、私は急いで出かける支度をしユラの家へ転移した。
ユラは久しぶりに帰ってきた自分の家で待っていると言うので、ユラとはここで別れて、イヴァンと一緒に教会へ向かう。
隣を歩くイヴァンの機嫌がすこぶるいい。
今にも鼻歌が飛び出しそうなほどだ。
「もしかしてお昼ご飯とおやつが楽しみなの?」
『もちろんだ』
盛大に振られている尻尾を見たら、もしかしなくてもそうだと思ったけどね。