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のんびりまったり異世界生活  作者: 和奏
第二章 異世界はやっぱり異世界です
103/160

41 私とヴォルカンは好みが似ている・・・(泣)

 そんなことがあった次の日の朝だけど、私が下へ降りると同じように三人もついてきた。


 ホントに仲が良いのか悪いのか。


 彼らが『まだか』と騒ぎ出す前に朝食を作ろうと私はキッチンに立った。


 今日から仕事だししっかり食べておかなくちゃ。

 それからお昼のお弁当も用意した方がいいわよね。

 もちろんおやつも必要だし。


 じゃあまず朝ご飯用にオムライス。

 前に作ったときはケチャップをかけたオムライスだったので今日はデミグラスソースをかけたオムライスにしよう。

 ケチャップライスじゃなくてバターライスにして。


 玉ねぎと人参はみじん切りに、鶏肉代わりのキングボアの肉は小さめに切る。

 フライパンにバターを熱し、玉ねぎ、人参、キングボアの肉を炒める。

 火が通ったらご飯を入れ、具材と混ぜ合わせたら塩こしょうで味付けをして器に盛る。

 次に卵。

 卵をボウルに割り入れ塩、こしょう、牛乳を入れて混ぜる。

 熱したフライパンにバターを入れて溶かし、卵を入れる。

 卵をゆっくりかき混ぜ、半熟になったら卵をバターライスの上にのせる。

 次はデミグラスソース。

 赤ワイン、トマトケチャップ、中濃ソース、醤油、蜂蜜を鍋に入れて火にかける。

 とろみがつくまで煮詰めて最後にバターを溶かし入れる。

 それをオムライスの上にかければ完成。


 これからお昼のお弁当も作らないといけないので、ここはちょっと手を抜いてお湯を注ぐだけのお手軽コンソメスープで我慢してもらおう。


 今か今かと待ち構えている三人の前に各々並べると、猛然と食べ始める。

 競い合って食べる二人を見ながら、そっとため息を一つ。


 いつまで続くの、これ。


 「ねぇ、私、今日は仕事なんだけどみんなはどうするの?イヴァンは私と一緒に来るでしょ。シロとヴォルカンは?」


 「我は湖でのんびりしておる」


 とシロ。


 「わしは・・・昨日の森へ行く」


 「森?何しに行くの?」


 ヴォルカンの返事に私は問うた。


 「まあ、ちょっと探し物があるんや」


 「そうなの。わかった。じゃあ私たちは夕方には戻ってると思うから、昨日洗濯した服を取りに来て。その頃には乾いてるはずだから」


 わかったとつぶやくヴォルカンを横目に「ユラのところへ届けてくるね」と声をかけオムライスを片手にユラのところへ転移した。


 「ユラ、おはよう。朝ご飯よ。また後でお昼ご飯も持ってくるからね」


 すぐに姿を現したユラを思いっきりぷにぷにした後、風の森へと戻る。


 「おかわり」とうるさい二人にオムライスを追加し、私もやっとオムライスを口にした。


 朝食を食べ終えると、イヴァンはハンモックへ、シロは湖へ、ヴォルカンは「ほなわしは森へ行ってくる」と玄関へ向かう。

 ふとヴォルカンに目をやると、右手に白うさのぬいぐるみ、左手に編みぐるみのうさぎを持っていた。


 あれじゃあ両手は塞がるし、その都度地面なんかに置いたら汚れたり破けたりしないかしら。


 「ヴォルカン、ちょっと待ってて」


 急いで二階の趣味部屋に駆け込む。


 「確かここに入れておいたはずなんだけど・・・あった」


 手にしたものはキルティング生地で作ったナップサック、巾着型のリュックだ。

 白地にピンクや赤のハートやリボンの柄のついたかわいらしい生地でレースやリボンをたくさんつけてすごくガーリーに仕上げたものの、かわいすぎて誰も使ってくれなかったものだ。


 表側にポケットもつけたのに。

 これならヴォルカンも気に入ってくれるんじゃないかな。


 早速、玄関で言われた通りに待っていたヴォルカンにナップサックを差し出した。


 「これ使って。ここに白うさを入れて、表のポケットに編みぐるみのうさぎを入れればちょうどいいでしょ。この紐を引っ張ったら口が締まるんだけど、白うさの顔だけ見えるようにしたらかわいいと思うの。背負ってたら両手も空くし、そこらへんに置いて汚したり失くしたりする心配もないし。第一、この柄すごくかわいくない?」


 ニコニコしながら一気に言い終えると、ヴォルカンもナップサックを受け取り、同じようににこにこ顔で、


 「あぁ、ホンマにかわいい柄や。かわいいわしにぴったりやな」


 後半はちょっと同意しづらいけど・・・。


 ヴォルカンは二つのうさぎを入れたナップサックを背負うと意気揚々と玄関を出て行った。


 かわいすぎて誰も使ってくれなかったナップサックが日の目を見れてよかったわ。

 かわいい物好きのヴォルカンならきっと私と同じであの柄を気に入ってくれると思ったのよ。


 うん?

 私と同じ?

 つまり私とヴォルカンって好みが似てるってこと?

 ・・・。

 何かいやーっっ!

 あの変態うさぎと一緒だなんてっ。


 玄関でガックリと膝をつく私だった。


 それでもいつまでもへこんでいられないので、気を取り直して昼食用のお弁当を作る。

 急いでサンドイッチを作っていると気づいてしまった。


 最近お弁当といえばサンドイッチばかり作っている気がする。

 今日はサンドイッチの材料を用意しちゃったから仕方がないとして、他に何か考えないと飽きそうだわ。


 サンドイッチを作り終えると、次は一番大事なイヴァンのおやつだ。

 これがない事には始まらない。


 あまり時間もないし手早くできるもの。

 そうだ。

 カップケーキにしよう。

 ホットケーキミックスを使えば早いし。

 それにホットケーキミックスはネットスーパーで大量に購入済みだ。


 室温に戻したバターと砂糖を混ぜ、そこに牛乳と卵を加えてさらに混ぜる。

 そこにホットケーキミックスを加え、さらに混ぜる。

 出来上がった生地を型に流し入れ、トントンと軽く落として空気を抜いておく。

 これをオーブンで焼けば完成。


 「あーいい匂い」


 ふんふんと鼻歌まじりにペーパーバッグに入れる。

 お昼のお弁当とおやつの用意ができたので、シロに念話を送る。


 「シロ。お昼とおやつ、テーブルの上に置いておくから適当に食べてね。夕方には戻るつもりだからお留守番よろしくね」


 『わかった』


 いつものように髪をゆるい三つ編みにして瞳の色を変える。

 紺のマントを羽織り、手にはユラの分の昼食とおやつ。

 私とイヴァンの分はアイテムバッグに入れてある。


 ヴォルカンの分も用意してあげればよかったかな。


 ふとそんなことを思ったけど、作ってあげなきゃいけない理由もないしまあいいか。

 それより初出勤なのに遅刻するわけにはいかないわ。


 イヴァンと二人、カイセリの街のユラの家(風の森の家と区別しないとややこしいのでこう呼ぶことにしたの)に転移する。

 すぐにユラが姿を現した。


 「ゆっくり遊んであげられなくてごめんね。これお昼のサンドイッチとおやつのカップケーキ。これから教会で仕事があるの。お昼には戻って来られないと思うけど、夕方には戻るからね」


 ひとしきりユラを撫でまくったあと家を出て教会へ向かう。


 教会ってこっちでよかったっけ。


 左手の方へきょろきょろしながら歩いて行く。


 道に迷って遅刻とか絶対したくないっ。


 必死に数日前の記憶をたどっていく。


 確かこっちでいいのよね。

 そしたら広場に出るはず。

 近くにギルドがあって・・・。

 ギルド?

 しまったっ。

 採取した薬草持って行かなくちゃ。


 広場まで来ると冒険者ギルドを目指す。


 持って行くくらいの時間はあるわよね。

 アイテムバッグに入れてあるから鮮度は問題なくても必要な人のところへ渡るのが遅くなっちゃう。


 ギルドに入ると朝の早い時間のせいか、たくさんの冒険者でごった返していた。

 私とイヴァンが中へ入った途端、それまでガヤガヤとうるさかったギルドがピタッと静かになり、サァーっと人が割れて一本の道ができた。


 まただよ。

 私はモーゼじゃないってば。


 はぁと小さくため息をつくと、歩きやすくなったと気持ちを切り替え、受付窓口へ進んで行く。


 「おはようございます、ロザリーさん。薬草の買取をお願いします」


 アイテムバッグからリオラ草をはじめとする数種類の薬草を取り出し、ロザリーさんに手渡した。


 「おはようございます、サキさん。薬草をお預かりしますね。これで全部ですか?」


 そう言われたとき、シロからもらった水草を思い出した。


 あれも薬草だって言ってたっけ。


 「これも買い取ってもらえますか?」


 アイテムバッグから取り出したベルマフィラを差し出した。

 すると、ロザリーさんは突然立ち上がると、依頼表の張ってある壁を指差し、早口でまくしたてた。


 「サキさんっ。急いで掲示板からベルマフィラ採取の依頼表を取ってきてくださいっ」


 そう言うなりロザリーさんはギルドの二階へ駆け上がって行った。


 ・・・なんか嫌な予感・・・。


 それでもロザリーさんに言われた通りに掲示板のところへ行ってベルマフィラ採取の依頼を探す。


 「どこにあるんだろう」


 チートのおかげで文字は読めるけど、ごちゃごちゃありすぎてどの辺りにあるのかわからない。

 持ってくるように言われたんだからどこかに依頼表があるはずなんだけど。


 基本、依頼はランクごとに分かれているようで探しやすくなっている。


 「ゴブリン退治・・・。至急隣町コーレまで隊商の護衛。引っ越しの手伝い。へぇ、こんなのもあるんだ。うん?ただしオーガに襲われる可能性あり。・・・なるほど。グラミアムまで荷物の配達。・・・いろいろあるのねぇ」


 でも私の探しているものは見つからなかった。


 おかしいわね。


 その時、掲示板の右上にポツンと貼られている依頼表に気がついた。


 どうして一枚だけあんなところに。

 

 見ると、それは私の探しているベルマフィラ採取の依頼表のようだった。


 あったわ。

 でも・・・手が届かないっっ。


 そう、前にも言ったと思うけど、この国の人たちは全体的に大きい。

 なので、小柄な日本人の私はここではさらに小さく子供扱いなのだ。

 風魔法を使って取るしかないかと思ったその時、頭の上から声が降ってきた。


 「お姉さん、どれがいるの?」


 隣を見ると背の高い、青みがかった茶色の髪と澄んだ青空のような瞳の、まだ幼さの残る少年が私を見下ろしていた。


 「えっと・・・」


 「取ってあげるよ。届かないんでしょ?」


 「そうなんだけど・・・」


 見たところ、悪い印象はなく本当に親切で言ってくれているようだ。


 「ごめんなさい。悪いけど頼んでいい?」


 「もちろんだよ。どれを取ればいいの?」


 「じゃあ、あの右上の一枚だけポツンと貼ってあるやつなんだけど」


 「これだね。・・・えっ?ベルマフィラ採取!?」


 途端に周りがざわざわ騒ぎ出す。

 ベルマフィラだと?

 どこで手に入れたんだ?

 そんな声があちこちでささやかれる。


 前にもこんなことがあったような・・・。


 「お姉さん、本当にベルマフィラを採取したの?」


 親切な少年もかなり驚いているようで、取ってくれたベルマフィラ採取の依頼表を思わず握りしめている。


 「採取というか、正確には貰ったというか・・・」


 歯切れ悪く私が口ごもっていると、ロザリーさんが私を呼ぶ声がした。


 「サキさんっ。すみませんがこちらまで来てくださいっ」


 その声にハッとした少年は自分が依頼表を握りしめていたことに気づき、少ししわくちゃになったそれを「ごめん」と言いながら渡してくれた。


 「ありがとう。助かったわ」


 お礼を言ってすぐさまロザリーさんの元へ駆け寄る。

 そして依頼表を渡そうと手に持つそれに目をやった。


 えっ?


 私はそこに書かれていた報酬に目を見張った。


 報酬 一本 金貨百枚。


 百枚?

 見間違いじゃないわよね。

 それが二本ってことは・・・。


 思わず依頼表を凝視する私に、ロザリーさんがおずおずと声をかけてきた。


 「サキさん。ギルマスがお呼びです」


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